歩美ちゃんの度胸どうなってるの?
爆風で最大の加速を得るためには、爆発する瞬間にビルから飛び出す必要がある。タイミングが早すぎると加速を十分に得られず飛距離が足りなくなるし、一方で少しでも飛び出すのが遅れると爆発に巻き込まれて脱出どころではない。非常に難しいミッションだ。
しかもこのときの少年探偵団は「とある事情」で時計類を預けてしまっており、正確な時間を計ることができない状況だった。
そんな中で頼ることになるのが歩美ちゃんだった。劇中で少年探偵団が「体内時計で30秒を計るゲーム」に挑戦する機会が2度あり、1回目で歩美ちゃんは30秒ジャストでストップウォッチを止めていた。2回目は失敗していたものの、他に頼るものもない彼らは歩美ちゃんに命運を託すことになる。そのときの歩美ちゃんのセリフがこちら。
「自信はないけど、でもコナンくんが一緒なら……コナンくんがそばにいてくれたら、私できると思う」
自信がないながらも歩美ちゃんは見事正確なカウントを遂行し、一行は脱出に成功する。そして歩美ちゃんから「コナンくんが一緒なら」の真意が明かされ、
「コナンくんがそばにいるとドキドキして、心臓の鼓動で時間がわかるんだよ」
とのこと。実は成功した1回目も歩美ちゃんとコナンは隣同士。歩美ちゃんの恋心で鼓動が速まった結果、体内時計がちょうどいいテンポになったのだった。コ歩派もニッコリの微笑ましいシーンである。

しかしちょっと待ってほしい。裏を返すと、4分後に炸裂する爆弾だらけのフロアにいても、コナンが隣にいなければ歩美ちゃんはドキドキしていなかったということになる。度胸どうなってるの?

あえて真剣に考えてみよう。コナンが隣にいない、リラックスした状況では体内時計が遅く(※)、コナンがいて鼓動が速いときに30秒をピッタリ計れるということは、おおむね鼓動の速さと体内時計が比例関係にあると考えるのが自然だろう。
※リラックスした状況では体内時計が遅く:2回目のゲームはパーティ中に行われ、30秒経過時点で25秒しかカウントできていなかった。つまりコナンが隣にいない安静時には体内時計が遅いのだと考えられる。

したがって、「日常のひとコマの中でコナンが隣にいるとき」と「数分後に生死が定まる絶体絶命の状況でコナンが隣にいるとき」で、歩美ちゃんの心拍数はほとんど同じだったと考えられる。歩美ちゃんの身には一体何が起きているのか。
【仮説1】心拍数の上限に達している説
第一に考えられるのは、コナンといると鼓動がマックスまで速くなるため、それが生命の危機だろうがそれ以上鼓動が速くなる余地がない、とする説である。

24時間365日休むことなく身体中に血液を送り続ける心臓。そんなパワフルな臓器といえど1分間に収縮できる回数には限度があるようだ。健康な人の心拍数の上限に関する指標として最大心拍数というものがあり、一般に220-年齢がその目安とされている。

コナンといるときに歩美ちゃんの鼓動が最大心拍数に達していると考えれば今回の状況も一応納得できはする。
しかし、この最大心拍数は運動強度を求めるためによく用いられる視標であり、心拍数がこれに達しているということは、運動強度100%の激しい運動をしているのと同程度の鼓動の速さになっているということである。コナンと歩美ちゃんはクラスメイトであり、1日に何度も顔を合わせる間柄であろう。そのたびにこんなドキドキの仕方をしているのだとすれば歩美ちゃんの身体が心配だ。
【仮説2】肝が据わりすぎている説
もし仮説1のようにはなっていないのだとすれば、生命の危機が歩美ちゃんの鼓動に何ら影響を与えないと考えるほかない。すると、歩美ちゃんの肝の据わり方が尋常ではないのだろうか。

これに関しては歩美ちゃんのメンタルの問題なので想像するしかないが、私の中に歩美ちゃんに強心臓であるというイメージは全く無い。極限状態でのみ発現する歩美ちゃんの特質なのかもしれないが、歩美ちゃんが生きてきた6年の間にその境地に至る何かがあったのだろうか。描かれていないだけで実は激動の人生を歩んできた少女なのかもしれない。
【仮説3】危機を認識していない説
あるいは、そもそもこの状況を生命の危機と認識していないのだと考えることもできるだろう。仮説2に似ているが、こちらは鼓動が速まる要因をそもそも歩美ちゃんが認識していないという点で区別できる。

爆弾だらけのこのフロアに少年探偵団がたどり着くまで、彼らを取り巻く状況は目まぐるしく変わってきた。階段は塞がれ、ツインタワーを繋ぐ橋は落ち、屋上は燃え……。
小学1年生が立ち向かうにはあまりにも過酷な試練の連続において、先程まで楽しく過ごしていたパーティー会場を安らぎの場と認識してしまうのも無理はないのかもしれない。それが4分後に爆発するとしても……。
コナンが自信満々に「これならどうだ」と言い放ったことが効いているのもあるだろう。灰原の説明はよくわからないが、信頼するコナンがこう言うなら大丈夫なのだろうと。
知らないことが多いがゆえに恐れを忘れて困難に立ち向かえる、それが子どもという存在なのかもしれない。歳を重ねると恐れるものばかり増えていくから……。
改めて『天国へのカウントダウン』を観ると歩美ちゃんの体内時計のことが気になるということがわかった。皆さんも、古い記憶にある「あの映画」を見返してみては?

イラスト作成:加納
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