QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン
PR
法務省

「これならどうだ?」じゃないよ

最初に気になったのは、先程書き起こしたシーンの最後の部分である。さも「これこそがタワーから脱出するための鍵だ!」みたいな言い切り方をしているが……。

▲問題のセリフ

灰原の説明で、車がパーティ会場を飛び出してプールに着水するためには少なくとも時速108kmが必要であることが計算できた。また、車がある位置から窓までの距離の関係上、出せる速さがせいぜい時速60km程度であること、これもまあいいだろう。

問題は、トランクを開けて爆風をめいっぱい受ければ時速108kmまで加速できる、ということの根拠が何もないこと!

確かに、爆風でどの程度加速できるかを試算するには、各爆弾の威力と数、それらの配置、爆風が窓の方向に与える圧力、車のトランクが受けることのできる爆風の割合、などなど考慮すべき要素が多すぎる。灰原でも正確な値を求めるのは不可能だろう。

▲爆風を受けて加速する車

にもかかわらず堂々と自信たっぷりにノータイムで「これならどうだ?」と言い切るコナンが、傍から見る分にはちょっと面白く思えてしまったのである。同時に、こんな感じで勢いで危機に立ち向かっているといつか致命的なミスをするのでは……と不安にもなる。この25年間は大丈夫だったみたいだが……。

とはいえ、この場から脱出する方法は他になく、諦めれば座して死を待つのみであったから、ダメ元でも飛び出すしか道はなかっただろう。そう考えると、「ダメかもしれないけど……」みたいな弱気なスタンスで提案されるよりは「これならどうだ?」のほうがずっと心強くはある。リーダーの素質というやつかもしれない。

衝撃防止姿勢をとれ!

ここまで読んで、プールまで無事に飛び切るための条件はかなりシビアであることはおわかりいただけたかと思う。

最善を尽くして空中に飛び出したあと、車の上でできることはない……わけではなく、少しでも生存確率を高める方法はあったはずだ。空気抵抗を減らすとか。

灰原の計算において、空気抵抗については何も考慮されていなかったが、これは仕方がないし問題もないと考える。このとき必要な情報は「プールに達するまでの速度の下限」であり、少なくとも時速108kmはないと絶対にプールには届かない、ということがわかれば十分だったからだ。

もし灰原がこの計算をしていなかったら、「アクセル全開で飛び出せば多分大丈夫だ!」と勢いで飛び出し、飛び込むはずだったプールを視界の上に見送りながら遥か下へと落ちていったかもしれない。わからないことが多い状況において情報は少しでも多いほうがいいのだ。

もし灰原が計算していなかったら……
(「多分大丈夫だ!」という吹き出しでA塔を飛び出し、プールの遥か前で「あれ?」といいながら落ちていく図)
▲こうならないためにも下限の見積もりは重要

計算の問題はいいとして、このときの少年探偵団はというと……(直前でいろいろあったとはいえ)灰原は途中で空中に飛び出し、結果として車からぶら下がった状態で飛行することになってしまった! 灰原の身が危ないのはもちろん、空気抵抗が激増して飛行距離が足りなくなってもおかしくないだろう。シートベルトを締められない人がいる状況で空を飛ぶときは近くの人(今回は光彦)が全力で押さえよう。ギリギリ助かったからいいけどさあ。

▲オープンカーで空中にぶら下がる灰原(想像)

人ひとりをぶら下げた状態に比べれば微々たるものだろうが、コナンたちの姿勢についても工夫の余地はありそうだ。脱出に用いた車はオープンカーであり、乗っている人の姿勢が空気抵抗を少なからず左右する。少しでも減速をやわらげるために頭の位置は下げたほうがよかったのではないか。

また、当時の彼らはプールに飛び込むことばかり考えていたが、着水時のことも想定しておかないと生存確率は下がる。空気抵抗を無視して計算した場合、車は時速129kmでプールに突っ込むことになる(※)から、衝撃には十分に備えなければなるまい。自動車だから3点固定式のシートベルトは備わっているが、小学1年生の彼らの身体を正しく固定できるとは限らない。

※時速129kmでプールに突っ込むことになる:水平方向の速さは飛び出し時と同じで時速108km、鉛直方向の速さは重力加速度9.8m/s2で2秒自由落下した場合時速70.6kmとなり、これを合成することで時速129kmと求められる。ちなみに入射角は33.2度。怖すぎ。

このようなシチュエーションを一番考えているのは間違いなく航空業界だろう。航空機に乗ると必ず教わる衝撃防止姿勢、これは空気抵抗の軽減と安全確保を両立できるいい姿勢ではないだろうか?

2.衝撃防止姿勢をとれ!
空気抵抗軽減+着水時の安全確保
のために
航空機の衝撃防止姿勢をとろう
※エアバッグには注意

国際民間航空機関(ICAO)は、緊急時には前傾を取り、顎を引き、頭を前の座席につける姿勢を推奨している。これが、緊急時の大きな衝撃から身体を守るための最適な姿勢のようだ。

ただし、エアバッグが開く可能性のある運転席と助手席に座る人はこの姿勢を取らないほうがいいかもしれない。エアバッグはシートベルトを正しく着用し、正しい姿勢で座っているときに十分な効果を発揮するように設計されているからだ。……小学1年生が座る想定はされていないから大変危険なことに変わりはないが。

ここまで気になることを2点紹介してきた。次が最も気になること、歩美ちゃんの度胸どうなってるの?

▶歩美ちゃんの身を案じ、恐れ知らずの子どもという存在に思いを馳せる

2
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

コジマ

京都大学大学院(~2020年3月)→サラリーマン(~2025年3月)→フリーランス / 情報処理安全確保支援士・データベーススペシャリスト / Twitter→@KojimaQK

コジマの記事一覧へ