粉砕していない豆から淹れると……
焙煎した豆を粉砕せずに約5分間お湯に浸して抽出します。焙煎の検証と比べて色がつくのも速く、期待できそうです。
▲生豆ほどの悪い予感はしないが……。
【結果】
焙煎の検証でできた液体ほどでないにしろ、コーヒーとは言い難い液体ができました。うっすらとコーヒーの香りはするものの、味はやはりほぼお湯。焙煎工程の検証と比べるとわずかながら希望を抱けましたが、その淡い希望もむなしく散ってしまいました。
▲色は多少濃くなったけれど、やはり香り付きのお湯。
なぜ粉砕は必要なのか
粉砕の工程も、飛ばしてしまうとコーヒーは作れませんでした。ではなぜ粉砕工程は必要なのでしょうか?
粉砕して豆を粉状にすることで、表面積、すなわちお湯との接触面積を大幅に増加させることができます。これによってコーヒーの成分を効率よく抽出することができるようになるのです。
また、粉砕していない豆を長時間浸したとしても成分を完全に抽出することはできないため、通常の濃度のコーヒーを作ることはできません。
やはり粉砕も必要な工程であるということがわかりました。
ちなみに同じ種類のコーヒー豆でも、挽くときに粒度を変えるとお湯との接触面積が変わって、また違う色や味を楽しむことができます。こうした粒度の違いがわかる大人になりたいものです。
「抽出」をしないとどうなる?
いよいよ最終工程の抽出です。抽出とは、お湯を注ぐことでコーヒーの成分を豆から取り出す作業です。この工程の検証では、コーヒーを美味しく淹れるために必要とされる蒸らしをとばします。
その結果は……。
▲見た目はアメリカンコーヒーのよう。
今までの中では一番コーヒーらしい液体ができました!
早速飲んでみると……う~ん?
コーヒーの味が感じられますが、味は薄めです。いつものコーヒーと比べると、「おいしい!」とは言えません。
蒸らすと美味しくなる理由
検証結果からすると、蒸らさなくても(あまり美味しくはないが)コーヒーらしきものを作ることができます。ではなぜわざわざ時間をかけて蒸らすのでしょうか?
コーヒーの粉にお湯を注いで蒸らすと、粉が膨らむ様子が見て取れます。これは豆を焙煎した過程で生じた炭酸ガスのうち、豆の中に残存していたものが出てくるためです。数十秒ほど蒸らしてガスを抜き切ることで、その後に注ぐお湯が馴染みやすくなります。つまり蒸らしをしっかりと行うことで、コーヒーの成分が抽出されやすくなるのです。
▲お湯を注ぐとガスで膨らむ。
検証でできた液体の味が薄かったのは、お湯が馴染まず抽出が不十分だったためです。蒸らしの工程1つでもこんなに味が変わるとは驚きです。やっぱり待つ時間は重要だったんだ……。
無駄な工程なんてひとつもなかった
それぞれの検証からもわかる通り、焙煎、粉砕、抽出はコーヒーを淹れるにあたって全て欠かせない大切な工程でした。どの工程もコーヒーを風味豊かにするための意味を持っており、飛ばしてしまうとあのおいしさを味わえません。
▲手間はすべておいしさにつながっていた!
今回の検証を通してこうしたことを確信できたので、香り付きのお湯でも薄味のコーヒーらしきものでもない本当においしいコーヒーのために、これからは疑いなく手間をかけて淹れられます!
それにしても、植物の青くささが強い生豆の状態からコーヒーが完成するに至るまでの各工程を編み出した人ってすごいですよね。もしかすると、コーヒーを今以上においしくする工程が存在するかもしれません。みなさんもコーヒーがよりおいしくなる方法を探ってみませんか。
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