こんにちは、ソフロレリアです。今年(2020年)3月に大学院を修了し、農学の博士号を取得しました。
大学や大学院では卒業すると、学位というものが授与されます。4年制大学では「学士号」、大学院では「修士号」「博士号」などが取得できます。
今回のテーマは、「博士号」を取得できる大学院の博士課程。
大学院の博士課程は「自立した研究者として活動するための能力を身に付ける場」と捉えることができます。専門分野の知識はもちろん、どんな課題をどのように解決するかを設定する力だったり、自分の考えを相手に合わせて効果的にアピールする力だったりを磨く、といった具合です。
さて、みなさんはそんな大学院での生活にどのようなイメージを抱くでしょうか。もしかしたら、くたびれた白衣を着てピペットを握りしめる日々、なんてステレオタイプな想像をする方もいるかもしれません。
このイメージ、間違ってはいないのですが、重要な部分が含まれていません。毎日の生活に「ハレ」と「ケ」を見出すとするならば、実験室で黙々と作業をして知識や技術を習得する日常が「ケ」ということになりましょう。そしてその裏側には、アプローチを確認したり、自分をアピールするための術を身に付けたりすべく、学会発表などの「ハレ」の舞台が存在しているのです。
今回の記事では、とくに若い世代には想像しづらそうな大学院生活の「ハレ」を紹介します。大学院について、少しでも具体的・多角的なイメージを膨らませる助けになったら幸いです。
学会=成果発表……だけではない
ここでは学術研究の講演会のことを広く学会と呼ぶことにします。
一般的な大学院生にとって、学会のメインイベントは研究成果の発表。スライドショーやポスターを準備し、短い時間で聴衆に伝える緊張のひとときです。こうした発表により研究分野における自身の存在感を高めていくというわけです。よって、すばらしい実験結果を得られていればそれに越したことはないのですが、そううまくいかないのが研究というもの。
そんなとき、様々なバックグラウンドを持つ先生方と話し意見をもらうことで、それまで気付かなかった問題点や解決方法が浮かび上がってくることがあります。
全国でトップクラスに特定の分野に詳しい人が大勢集まっているわけですから、彼らと交流しないという手はありません。私も学会を機に次に行うべき実験を見つけ、アドバイスをくれた先生の下に数週間滞在して研究を進めるという経験をしました。
会期中には懇親会が設けられていることも多く、単なる成果発表としては終わらない、研究者同士のコミュニケーションの場としての役割を学会が担っているのです。
国際学会で世界を相手にする
私の研究分野においては、学術研究を行う以上、成果は世界に向けて発信する必要があります。研究者の公用語は英語であり、アメリカや中国、ヨーロッパをはじめ世界中の研究者が集う国際学会では、英語がわからないと文字通り話になりません。
私は初めて参加した国際学会で質問に返答できず、400人ほどの聴衆の前で固まってしまったという苦い思い出があります。研究をする上で真っ先に必要になるのは英語のスキルです。少しでも志す気がある方は今すぐ英語を勉強しましょう。
普段それほど交流がないため、海外の研究状況はあまり把握できないものです。その分国際学会で外国人研究者の話を聞くのは興味深いのですが、時として全く同じものを研究対象としていたことが発覚する、などという事故も起こります。研究の世界では先に論文の形で発表した者勝ちなので、相手がどの程度まで研究を進めているのかという探り合いが発生して非常に心臓に悪かったです。
ただ、こうも明確に世界と競い合う機会を得られるというのは、学術研究の魅力的なところでもあるのではないでしょうか。
続いては、学会の思わぬ副産物を紹介!(1/2)