こんにちは、セチです。私は現在、某大学の医学部医学科に在籍しています。
今回は大学生活を紹介する連載ということで、医学生にとって避けて通れない「実習」についてご紹介したいと思います。
医学生の実習、と言われるとまず臨床実習(病院で実際に患者と対面して学ぶ実習)を思い浮かべる方が多いと思いますが、ここではそれ以前に行う基礎医学の実習に焦点を当ててお話しします。
基礎医学とは
「基礎医学」というのは、解剖学や生理学など、人体の仕組みについて考える医学の分野で、実際に診療・治療を行う「臨床医学」を下支えするものであるといえます。ゆえに、医学生は基礎医学の知識を固めてから臨床医学の修得に入ることになっています。
私が通っている某大学では、1年生で一般教養科目、2年生で基礎医学科目、3年生以降で臨床医学科目を主に履修するという課程が設けられています。実習がある科目については、座学と実習両方で合格しなければ単位を取得することができません。
バラエティ豊かな基礎医学の実習
一口に基礎医学の実習といっても、科目によって内容は様々です。
多くの医学生にとって一番の山場(※主観)となる人体解剖学実習では、各班に1つずつご遺体が割り当てられ、手順に従って実際に解剖を行うことで全身の筋肉や臓器の構造を学びます。それまで馴染みのなかった骨や筋肉の名前を日本語・英語の両方でドカドカ覚えなければならない上、神経の線維などは慎重に解剖作業を行わなければ見つけることすらできず、2年生当時の私はまさしく神経をすり減らしていました。
他には、カエルの筋肉に電流を流したりする生理学実習や、顕微鏡で観察した組織をたくさんスケッチする組織学実習、寄生虫を当てるテストが行われる寄生虫学実習などがあります。いずれにしてもスケッチやレポートを提出しなければならず、けっこう大変でした。
大変だけど役に立つし面白い
ここまで、やれ大変だのなんだのと書き散らしてきましたが、基礎医学実習をやって良かったと思う点にも触れたいと思います。
第一に、臨床医学の理解に役立ちます。
たとえばレントゲン画像を正しく見るのに解剖学の知識が必要だったり、病気が起こる原理を理解するのに生理学の知識が必要だったりします。当たり前のことではあるのですが、こういった基礎と臨床の結びつきは意外と想像しにくいので、「臨床分野に入ってから本気を出す!」くらいのことを思っている学生もたまにいます。その類いの学生が背負うその後のディスアドバンテージは想定以上に大きいです(ほぼ実体験です……)。
第二に、新しい発見が多くてシンプルに面白いです。
教科書から知識を得るのと、実物や現象を目の当たりにするのとではやはりインパクトに違いがあります。特に生理学や解剖学では、高校で学んだ物理、化学、生物の知識が統合される感覚が得られ、なかなか爽快でした。
医学に限らず、基礎を真面目にやっておいて損することはありません。ありきたりな結論で恐縮ですが、普通のことをちゃんと書くのも大事、ということで……。
クイズにしろ学生生活にしろ、何かを知るというのは本来それだけでも楽しいことだと思います。皆さんの知的生活がより良いものになりますよう。
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