2024年末。冷え込みが厳しくなる中、東京・立川ステージガーデンではQuizKnockメンバーによる熱い戦い──「QuizKnock放送中2024 クイズBINGOパーティー!」が繰り広げられました。
2020年から続く人気イベントシリーズとあって、出演メンバーも気合十分で登場。現地や配信でご覧になった方には熱気を感じていただけたでしょうか。
【写真多数! イベントレポートはこちらから】
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そんな「放送中」をつくっているのは、ステージ上のメンバーだけではありません。
今回は、伊沢たちも信頼する裏方スタッフの仕事に密着。普段は見えない「ステージの裏側」では何が起きているのか? 取材の模様をお届けします。
クイズ制作の流儀「準備は80%まで」
12月某日の昼下がり、まずやってきたのは都内の貸しスタジオ。なんでも、オフィスではできない準備があるのだといいます。
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「放送中」のクイズ制作を担当する
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広井
「今日は問題リハーサルをやってました。
当日出演するメンバー“以外”の人たちを呼んで、実際に使う予定の問題を試し解きしてもらう、ってわけです。問題のネタバレは絶対に避けたいので、あえてオフィスと離れた場所に来てやってます」
……なるほど、「放送中」は伊沢たちQuizKnockメンバーがクイズで対決するイベント。問題の答えが間違っていたり、問題文に不備があったりすると進行が立ち行かないので、本番前に入念なチェックが必要になるというわけです。
リハーサルでの確認事項は、単なる誤字・脱字のチェックだけではありません。言葉づかいに違和感がないか、時事問題の答えは最新の情報になっているか……広井のほか、その場にいるスタッフ全員が目を光らせます。
広井
「難易度がちょうどいいかの確認も大事ですねー。難問ばかりで正解が出ないのは困るし、逆に簡単すぎても盛り上がらない。
ジャンルのバランスも気にします。漢字のクイズが多すぎると、山本(祥彰)さんのチームに有利すぎるな、とか」
今回のイベントは「ビンゴ」とクイズを組み合わせた特殊なルール設計。ルールはうまく機能するか、どの順で出題すれば接戦を演出できるか……と、あちこちに神経を使いながらテストプレイが進行していきました。
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リハーサルを終えた広井は、ちょっと浮かない表情。
広井
「けっこうボロが出て……今時点で問題群に点数をつけるなら、40点ってとこですね。
ここからブラッシュアップしていって、本番直前には80点くらいになってるはずですが」
クイズ作家も「産みの苦しみ」が伴う仕事、ということでしょうか。準備は一筋縄ではいかないようです。
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準備が100点でなく「80点」というのも気になるところ。その心は……?
広井
「準備でできるのは80%までなんです。
80%を100%にしてくれるのは、当日出演するメンバーの力だと思ってるので」
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それほど出演メンバーに信頼を寄せる背景には、メンバーと直接戦うことで得られたものがあるのだそうです。
広井には、伊沢たち手練れのクイズプレイヤーの向こうを張る「TOMOE」※出演者という顔もあります。出演に向けたクイズの勉強が問題制作に活きるのはもちろん、対戦相手であるメンバーの得意分野・苦手分野を肌で体感できる点が、イベント準備に大いに役立っているのだとか。なんだか舞台役者と、その人柄を知り尽くした脚本家のような関係にも思えてきます。
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「……なんで本番はメンバー任せッスよ」と笑う広井ですが、そこはクイズ作家のプライド、イベント当日に懸けるものもあるはず。最後に本番に向けた楽しみを聞いてみると、何ともひょうひょうとした答えが返ってきました。
広井
「お弁当ですね。去年のWHAT※では、中高生が好きそう!と思ってちょっといい牛肉弁当を発注したのに、自分が食べようと思ったときにはもう売り切れていた……ということがありました、アハハ。
今度の放送中はほかの人が注文してくれたので、もう少しゆったり過ごせるはずです(笑)」
※TOMOE:3人のメンバーがガチクイズを繰り広げる、フォロワークラブ「QuizKnock schole」の企画。2024-25年の「TOMOE LEAGUE」では、広井は山本祥彰・志賀玲太とともに「TEAM RED」として戦った。
※WHAT:QuizKnockが主催する、全国の高校生以下を対象とする個人戦のクイズ大会「ハイスクールクイズバトル WHAT」。2024年大会の模様はこちらから。
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職人揃いのイベント準備部隊
続いてご紹介するのはイベントチーム。読んで字のごとく、QuizKnockが行うイベントの制作を行っているチームです。直近1年だけでもオンラインクイズイベント「クイズジャム」や東京ドームでの「トーキョーディスカバリーシティ!フェス」など、幅広いコンテンツを手がけています。
今日は「放送中」に向けた最終盤の打ち合わせで、チームメンバーそれぞれの仕事の進捗確認を行っているとのこと。にぎやかな声が聞こえてくる会議室を覗いてみましょう。
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メンバーその1、川上諒人。以前の動画でもイベントの仕事について触れていましたが、目下のタスクは……?
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川上
「わたしはですね、お客さん向けの
映画館に行くと、本編が始まる前に『映画泥棒』の映像とかが流れるじゃないですか、みんなが楽しく鑑賞できるように。あれをQuizKnockのイベントでもやりたいなと思って、クイズの観覧マナーがわかるビデオを準備してみることにしたんです」
司会が観覧中に注意すべきポイントを読み上げ、メンバーが早押しクイズで答えるという、ちょっとシュールなこの動画。今後のイベントでも使われるかもしれないとのことで、要注目です。
こうした「前説動画」を作るのは、QuizKnockのイベントでは初めてとのこと。なぜ作ろうと思ったのか、チームマネージャーの佐藤正に聞いてみると……
佐藤正(チームマネージャー)
「一流のイベントに学ぼう!ということで、夏にチームみんなで劇団四季の『アラジン』を観に行ったんですよ。そのときにキャストの皆さんが前説をしているのがいいなと思って……
QuizKnockでも作るならクイズ風だな、と」
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マネージャーの佐藤は「放送中」の企画内容を考え、会場を確保し、台本を作り……と、制作の核の部分を一手に引き受けているそう。かなり骨が折れそうですが、以前よりはチームのメンバーも増えて、イベントの充実を図れるようになってきたといいます。
藤﨑
「これも『放送中』では初めての試みなんですが、私は公式パンフレットの制作を進めています。デザイン担当のスタッフに依頼をかけたり、出演メンバーに内容をチェックしてもらったり、物販担当にデータを引き継いだり……という仕事ですね。
「イベント」が終わってからも残り続ける、お客さんの思い出になるようなものが作れたらいいな、と思ってやっています」
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「イベント」は、良くも悪くも一発勝負。準備を重ねても、当日のトラブル1つで台無しに……ということもあり得る世界です。では、準備に携わる人たちは「イベント」のどんなところにやりがいを感じているのでしょうか。
藤﨑
「自分たちの準備した台本や演出が、ステージに上がるメンバーの力でもっと面白くなる瞬間が嬉しいですよね。準備は大変でも、当日になってみればやっぱり楽しいことのほうが多い気がします。
……って、この前川上くんが言ってたんです(笑)。初めて自分で台本を書いたイベントの後に話してくれて、なんだかとっても嬉しかったですね。私も本心からそう思います。
川上
(ちょっと恥ずかしそうにうなずく)
* * *
クイズ制作、そしてイベント運営。共通して読み取れたのは、出演者から裏方への信頼のみならず、裏方から出演者への信頼があって成り立っている、ということでした。
舞台の小道具やセット、演出……どれも「誰か」が作っていることに思いをはせてみると、イベントに参加する楽しみも増えるかもしれませんね。今後もQuizKnock発のイベントにご期待ください!
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構成:カタヤマ / 編集:あさぬま