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こんにちは、ソフロレリアです。

巷では『あつまれ どうぶつの森』というゲームが大人気なようですね。みなさんも無人島移住はお済みでしょうか? まだという方は島のネーミングから始めてみるのも良いかと思います。

さて私、『あつ森』では同じ種類の花どうしを近くに植えて交配することにより、新たな色の花を作出できるという情報を小耳に挟みました。非常にシンプルな仕組みですが、これは現実世界でも上手くいくのでしょうか。

将来、無人島移住パッケージプランに申し込んだ際に困らないよう、あらかじめ花の交配について学んでおきましょう。

優良な両親の遺伝子を受け継いだ子孫をつくる

まずは交配においてどのようなことが起きているのか見ていきましょう。

花の雄しべで作られる花粉の中には精細胞があり、雌しべで作られる胚のうの中には卵細胞があります。花粉が雌しべの先端にある柱頭に付着する(受粉)と、精細胞は胚のうまで運ばれて卵細胞と融合します(受精)。その結果、精細胞由来の遺伝子と卵細胞由来の遺伝子が混ざって、両親のどちらとも異なる遺伝子のセットを持った植物が誕生するのです。

生物の体は遺伝子を基に形作られていますから、遺伝子が異なれば外見も異なってきます。有用な性質の植物を親にして目的の特徴を持った植物を作ろう、というのが人工的な交配の出発点ということになります。

『あつ森』では隣接した花が勝手に交配してくれますが、現実では人の手で行わなくてはなりません。自らの花粉で受粉・受精可能(自殖)な植物の場合は、その花粉が発達する前に雄しべを取り除かないと望み通りの交配はできませんし、受粉・受精に別個体の花粉を必要とする(他殖)植物であっても虫や風の媒介により思わぬ組み合わせの交配が起こる可能性があります。

両親が同じでも兄弟の遺伝子は異なる

同じ遺伝子を持っているタネを同じように育てれば、同じような花が咲くはずです。では、同じ親から生まれた植物はどれも同じ遺伝子を持っていると言えるのでしょうか

答えは「親次第」ということになります。

多くの生物は同じ長さの染色体を2本ずつ持っており、対になる染色体の同じ部位には対になる遺伝子が乗っています。ある遺伝子AとBについて、正常に機能する状態をA、B、何らかの原因で機能しない状態をa、bとしましょう。

それぞれAABB、AaBbという遺伝子の乗った染色体を持つ母親、父親を考えます。卵細胞や精細胞が作られるときには減数分裂が起こり、卵細胞はABの1パターン、精細胞ではAB、Ab、aB、abという4パターンの遺伝子セットが現れます。

よって新しくできた子どもも1×4=4パターンの遺伝子セットを持つことになり、外見にも差が出てきます

ここで、父親がaabbという遺伝子の乗った染色体を持っていた場合を考えましょう。精細胞はabの1パターンしか作られないため、子どもはすべてAaBbという遺伝子セットになり、どれも同じ外見となります。

つまり、親が持つそれぞれの遺伝子がすべて一様(AAbbのような状態)であれば、子どもはみな同じ花を咲かせるというわけです。自殖を繰り返すことにより遺伝的に均一な親を作り出すことが可能で、私たちが目にする野菜や花が一定の見た目をしているのは、この性質を利用したものが多いことに起因します。

一方、親の遺伝子が一様ではなかった(AaBbのような状態)場合、子どもの花は常に同じ色になるわけではありません。もちろん、赤系からは赤系、黄色系からは黄色系が生まれやすいので、狙いを定めた交配は可能です。『あつ森』で「赤×赤」の組合せでバラを交配させたときに、ピンク、オレンジ、黒、青と多様な色の花が咲くのは、両親が持っていた様々な遺伝子をいろいろなバランスで受け継いだ結果と捉えることができます。

このパターンを言い換えれば、交配させてできた花の色は咲いてみてのお楽しみということ。とくにカトレヤをはじめとするランの仲間は趣味で交配に興じる人も多く、世界に一つだけの花をたくさん見ることができます。

花びらの先端に紫の差し色が入ったカトレヤ。スプラッシュと呼ばれる人気の柄です。

交配でダメなら遺伝子組換え

目的の特徴を持った植物を得るというのは、何サイクルも世代を回す中で良い性質のものを選抜していくため、長ければ10年単位の歳月がかかることもある気の遠くなるような作業です。しかもどんなに熱心に交配を重ねたとしてもたどり着けないゴールも多々存在します。その最たる例が青いバラでしょうか。

バラに赤系の色が多いのは、アントシアニンと呼ばれる一群の色素のためです。このアントシアニンは構造のわずかな違いにより数種類に分けられ、それぞれオレンジから赤、青色を示すのですが、合成前の元となる物質は共通しています。

元となる物質がどの色素に合成されていくかは、植物体内でどの酵素がどのくらい働くかによって決まります。そしてその酵素の設計図となるのが遺伝子です。バラの仲間はどれも青い色素を合成する酵素の設計図を持っていないため、どんな組み合わせで交配しても真に青いものはできない、というわけです(「青っぽい」ものはできる)。

ただしこれは交配では不可能というお話。バラとは交配できない植物の中には、青い花を持つものがたくさんあります。彼らが持つ青色合成酵素を遺伝子組換えによりバラに導入することで、自然界では存在しえない色の花を楽しむことができるようになりました。同様の例はカーネーションやダリア、コチョウランなどでも報告されています。

おわりに

無人島のバラは遺伝子組換え植物かも。島外の植物との交配は避けましょう。

サムネイル画像 / Via あつまれ どうぶつの森 Direct 2020.2.20 無人島生活をくわしくご紹介|Nintendo 公式チャンネル

参考文献

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この記事を書いた人

ソフロレリア

高橋太郎の名でも活動中。博士(農学)。植物の研究をしています。ポケットモンスターと乃木坂46とウイスキーが好きです。

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