小学生の頃「デジモン」を「デジットモンスター」の略だと思っていた、東京大学工学部の於島です。
私は2021年3月まで、工学を専門的に学ぶ高等専門学校(以下、高専)の学生として工業にまつわる専門知識を学んできました。高専の授業を受けていたある日のこと、先生からこんな質問をされました。
「アナログとデジタルの違いって何かわかる?」
時計やテレビなどでよく聞く言葉ですが、そのときの私は「デジタルのほうが新しい」とか、「スマートだ」くらいにしか思わず、具体的な違いは説明できませんでした。
意外と説明するのは難しいこれらの違い、いったい何なのでしょうか?
※情報分野などでは「ディジタル」と呼びますが、この記事中では「デジタル」とします
アナログは「連続的」、デジタルは「離散的」
結論からいうと、ずばりアナログは「連続的」なもの、デジタルは「離散的」なもの、という違いがあるのです!
え、わからない? では時計を例にとってみてみましょう。
時計で考えてみよう!
まず、デジタル時計。
これは何時何分を表していますか? もちろん、10時00分ですよね。
では次にアナログ時計、こちらはどうでしょう。
こちらも、10時00分です。しかし、長針をよく見ると、長針が0分と1分の間に位置しています。つまり、実際は10時ちょうどではなく、だいたい10時00分30秒なのだとわかります。
更によく見ると、真ん中よりは少しずれていて……なんてことは普通の人間はできませんが、もし読み取れる人がいれば、この時計は10時00分30秒8439263……を表している、とわかります。
デジタル時計の場合では、10時00分の次に出てくるのは10時01分。その間の時間は表すことはできません。一方、アナログ時計は10時00分と10時01分の間の時間もすべて正確に表せる、ということなんです。
「じゃあ、アナログの方がより詳しく表せるんだし、いいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。ではなぜ、現代の社会はデジタル化が進んでいるのでしょうか?
デジタルは使いやすい!
デジタル化が進んでいる理由は、簡単に言うと「デジタルの方が使い勝手がいいから」なんです。
その一番わかりやすい例が、地上波テレビ放送です。
アナログ放送はノイズに弱い
2011年7月24日に、地上アナログ放送が終了し(東北3県は2012年3月31日)、完全地上デジタル放送化が行われました。
それまではアナログ放送を使っていたのですが、このアナログ放送は大きな弱点が2つありました。
それは「電波の帯域不足」と「ノイズの影響」です。
電波は、用途に応じて使える周波数が決まっています(この範囲を帯域といいます)。
アナログ放送の場合、テレビ上に映る情報はまず電気信号に変換され、その信号をそのまま電波の強弱で表現して送信します。そのため、広い周波数の帯域が必要でした。
アナログ放送が始まった当時は電波を使ったものが少なかったため、特に問題はありませんでした。しかし、現代ではテレビやラジオに加え、携帯電話の普及に伴い、使える周波数帯域がどんどん少なくなっていきました。これが「電波の帯域不足」です。
また、情報をそのまま波として運んでいるため、電波の送る距離が長くなると少しずつ劣化してしまううえ、ノイズにも弱く鮮明な画像や音声が送れません。
デジタル放送はノイズに強い!
それに対し、デジタル放送では情報を「0」と「1」の数字に変換して送ります。この「0」と「1」は、「矩形波」という波の組み合わせで送られます。これは、値がある基準より上なら「1」、下なら「0」の2つだけを表す波です。
この変換を行う際に細かい部分の情報は失われてしまいます。しかし、それよりも、シンプルな情報のみで送ることによるメリットの方が大きいのです。
まず、デジタル放送は情報量を少なくしたことで使用する周波数の帯域が大幅に少なくなります。また、もしノイズが発生しても、矩形波の基準の値を超えない限りは元の情報を復元できます。
つまり、ノイズに強く、鮮明な情報を送ることができるのです。
おわりに
現代社会でデジタル化が進んでいる理由は、デジタルの方が使い勝手がよく、多くの情報が飛び交う現代社会にフィットしている、というわけだったのです。でも、アナログはデジタルでは表現できない曖昧なものを表現できる、という良さがある。結局、使い分けが大切なんですね。