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これが「幻の硬貨」だ!

こちらが、5円玉発行当時(1948年)の1円玉です。

▲現在の姿とは全く異なっている

黄銅(銅と亜鉛の合金)で出来ていたこの1円玉を、現在のアルミニウム製の硬貨と区別して「1円黄銅貨」といいます。

1円黄銅貨は5円玉と同じ材料で、色・大きさ・デザインも近く、両者はとてもまぎらわしくなっていました。そのため、翌1949年に5円玉に穴が開いたのです。

当時の5円玉と比較してみると、確かにあらゆる面で激似です。これは穴を開けるしかないでしょう

なお、せっかく5円玉と区別がつくようになった1円黄銅貨ですが、1950年に製造が終了し、1953年に流通も廃止されています。黄銅の価格上昇で、1円黄銅貨の持つ「金属としての価格」が1円を上回り、溶かして金属原料として利用される危険が出てきたからです。

造幣局広報: 材料価格が額面を上回り、鋳潰いつぶされる懸念のあった1円黄銅貨幣は整理されました。1円アルミ貨幣が発行されるまでのつなぎ役を、昭和21年3月に発行された1円日本銀行券(1円の紙幣)がつとめました。 

▲硬貨の移行時期のつなぎ役となった1円券 via 国立印刷局

こうして、1円玉と区別するために5円玉に穴が開けられたものの、きっかけとなった1円玉がフルモデルチェンジしてしまうという結果に。今となっては5円玉の穴だけが、かつて1円黄銅貨が存在した証となっているのです。

▲今や「幻」の1円黄銅貨のために、開けられた穴だった

まとめ

  • 硬貨の穴には、偽造の防止・材料の節約・他の似た硬貨と区別がつくという3つのメリットがある
  • 5円玉と50円玉が選ばれたのは、3つめのメリットとの関連が深い
  • 50円玉の穴は、100円玉と区別するため
  • 5円玉の穴は、幻の「1円黄銅貨」と区別するため

5円玉や50円玉の穴の向こうには、思いがけず、それぞれの硬貨がたどってきた歴史も見えました。みなさんも、5円玉の穴を見かけたら1円黄銅貨のことを思い出してあげてください。

参考文献

画像造幣さいたま博物館にて筆者撮影

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この記事を書いた人

豊岡

東大クイズ研究会OBのライターです。日本なら福岡ソフトバンクホークス、アメリカならオークランド・アスレティックスのファンです。日常生活では誰にしゃべっていいのか分からずお蔵入りになるタイプの感動を、少しでも記事に落とし込んでいけたらと思います。よろしくお願いします。

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