これが「幻の硬貨」だ!
こちらが、5円玉発行当時(1948年)の1円玉です。
黄銅(銅と亜鉛の合金)で出来ていたこの1円玉を、現在のアルミニウム製の硬貨と区別して「1円黄銅貨」といいます。
1円黄銅貨は5円玉と同じ材料で、色・大きさ・デザインも近く、両者はとてもまぎらわしくなっていました。そのため、翌1949年に5円玉に穴が開いたのです。
当時の5円玉と比較してみると、確かにあらゆる面で激似です。これは穴を開けるしかないでしょう。
なお、せっかく5円玉と区別がつくようになった1円黄銅貨ですが、1950年に製造が終了し、1953年に流通も廃止されています。黄銅の価格上昇で、1円黄銅貨の持つ「金属としての価格」が1円を上回り、溶かして金属原料として利用される危険が出てきたからです。
造幣局広報: 材料価格が額面を上回り、鋳潰される懸念のあった1円黄銅貨幣は整理されました。1円アルミ貨幣が発行されるまでのつなぎ役を、昭和21年3月に発行された1円日本銀行券(1円の紙幣)がつとめました。
こうして、1円玉と区別するために5円玉に穴が開けられたものの、きっかけとなった1円玉がフルモデルチェンジしてしまうという結果に。今となっては5円玉の穴だけが、かつて1円黄銅貨が存在した証となっているのです。
まとめ
- 硬貨の穴には、偽造の防止・材料の節約・他の似た硬貨と区別がつくという3つのメリットがある
- 5円玉と50円玉が選ばれたのは、3つめのメリットとの関連が深い
- 50円玉の穴は、100円玉と区別するため
- 5円玉の穴は、幻の「1円黄銅貨」と区別するため
5円玉や50円玉の穴の向こうには、思いがけず、それぞれの硬貨がたどってきた歴史も見えました。みなさんも、5円玉の穴を見かけたら1円黄銅貨のことを思い出してあげてください。
参考文献
画像:造幣さいたま博物館にて筆者撮影
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