こんにちは、豊岡です。
キャッシュレス化が急速に進んでいる世の中ですが、私は乗り遅れ気味です。現金派として硬貨に慣れ親しんでいますが、ふと気になることがあります。
それは、5円玉や50円玉の穴です。
あの穴には何か便利な点があるのでしょうか? それとも単にデザインの美しさのためにあるのでしょうか? これまで当然のように受け入れていた穴への疑問は尽きません。
そこで私は、硬貨の発行に携わる造幣局や、付属の博物館に取材を行いました。すると、硬貨の穴についてのさまざまな事実が判明したのです。
この記事では、以下の2つの疑問に絞って穴の謎に迫っていきます。
- なぜ硬貨には穴が開いているのか?
- なぜ5円玉と50円玉だけなのか?
目次
◎なぜ硬貨には穴が開いているのか? 3つのメリット
◎50円玉に穴が開いたのは、あの硬貨の登場がきっかけだった
◎5円玉の穴の謎の答えは「幻の1円玉」にあった!
なぜ硬貨には穴が開いているのか?
硬貨に穴が開いているのは、3つのメリットがあるからです。
1つめは、偽造の防止です。穴があることで、硬貨を偽造するハードルが高くなります。
造幣局広報: 他の偽造防止技術と比べ、穴(正式には「孔」と表記します)をあけること自体は格段に難しいわけではありません。しかし、大量の硬貨に、ずれのないように中心に穴をあけるとなると、専用の設備を準備する、もしくは人手をかける必要があると考えられます。いずれも偽造するコストを上昇させるため、偽造防止につながると考えています。
2つめは、原材料の節約です。穴が開いている分だけ、より少ない材料で硬貨をつくることができます。
造幣局広報: 50円の穴の大きさは4㎜で、5円の穴の大きさは5㎜であることから、それぞれの製造枚数分が材料の節約になります。
これを元に計算すると、穴により、5円玉の場合は約5.1%、50円玉の場合は約3.6%、材料の金属を節約できます。一見ほんのわずかのようですが、硬貨は年間数億枚単位で発行されているため、チリも積もればかなりの量です。特に、硬貨のデザインが決定された戦後すぐ、物資不足の時代には大きな意義を持っていたはずです。
なぜ5円と50円玉に穴が?答えは3つめのメリットに
ここまでの2つを見てきた限り、硬貨に穴を開けることは良いことだらけに思えます。では、なぜ全ての硬貨に穴が開いていないのでしょうか?
その答えが、硬貨の穴の3つめのメリットです。
外見が似た2種類の硬貨があるとき、片方にだけ穴を開ければ区別が簡単になるのです。そしてこれが、5円玉と50円玉だけに穴が開いた理由です。
5円玉と50円玉に穴が開いた経緯について、歴史をさかのぼって詳しく確認しましょう。話を分かりやすくするため、先に50円玉から見ていきます。
50円玉に穴が開いたのは、100円玉と区別するため
1955年の発行当時、最高額の硬貨だった50円玉に穴は開いていませんでした。
しかし1957年に100円玉が出現すると、色や大きさが50円玉と似ていて紛らわしいと問題になります。
造幣局広報: 100円銀貨幣と50円ニッケル貨幣とが紛らわしいとのことから、各界の代表的な方を招いて「臨時補助貨幣懇談会」を開き、意見を交換した結果、「100円銀貨幣との識別を容易にするため、50円ニッケル貨幣を改鋳してギザを除き、同時にデザインを変えて有孔にすべきだ」という意見が大多数を占めました。
こうして、後から登場した100円玉に押し出される形で、1959年から穴が開いた50円玉が発行されるようになりました。
5円玉と区別する必要があった幻の硬貨
続いて、5円玉に穴が開いた経緯です。結論から言うと、5円玉に穴が開いたのは1円玉と区別するためです。
しかし5円玉と1円玉とはあまりに違いすぎて、穴は必要なさそうに見えます。一体どういうことなのでしょうか?
この疑問の答えは、5円玉に穴が開いた1948年当時の1円玉にありました。