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日本精工株式会社(NSK)

悩みの種はやっぱり「お金」

博士課程に進学することを決めたものの、大きな壁もありました。たとえば、きちんと生計を立てられる収入を得られるかどうか。やっぱり健康に生活できることが何よりも大事です。私は修士過程の頃から生活費・学費などをほとんど自分で工面しており、収入がないとそもそも生きていけませんでした。

▲お金の問題は切り離せない

具体的にいえば、(1)授業料の支払いや奨学金の返済といったお金を払う「マイナスを失くす」ことと、(2)生活費をかせぐ「プラスを生み出す」ことの2点をクリアする必要があります。

私の場合は、ざっくりいうと、(1)年収マイナス50万(授業料)+借金200万(返済すべき奨学金)の状態に加えて、(2)生活費をなんとかする必要がありました。これは結構しんどい

▲(1)のマイナスの解消だけだと、なかなか進学を決断できませんでした

お金は何をするにも大事な話。自分の力だけではどうしようもない側面もあり非常に悩みました。

これについては、「できる限りの手は打って、生活できなくなったら辞める」というある種の諦めの心をもって踏ん切りをつけました。もともと博士課程を「トレーニングの場」として選んだ自分からすれば、このルートも十分な選択肢だったわけです。

ちなみに、博士学生への授業料免除や生活費・研究費支援は官民問わず年々増えていますので、お金のことで博士進学を悩んでいる方はいろんなところに相談してみてください。力になってくれる人は多いはずです(生存者バイアスかもしれませんが、結果的には、様々なご支援をいただき、生活することができています)。

不安なことは他にも

他にも、色々悩むことがたくさんありました。博士課程修了後のキャリアが不透明なこと、それによって自分の将来のプランもだいぶ不確実になることなど……まあいろいろ不安でした。

▲内々定先の会社を選んでいたら……

でもどんな仕事に就くにせよ不安は付きものだし、総合的に考えたら、3年間この研究室で力をつけることが最適な環境だと信じて博士進学を決めました。

結果:進学してめちゃくちゃ良かった!

今振り返ると、在学中の身ではありますが、私は、進学してめちゃくちゃ良かったと思っています。「正解」だったのかはわかりませんが、あの時の選択のおかげで今できていることがたくさんあります。

活動の幅が広がり、様々な挑戦ができている

博士課程では、国際会議に出ることができたり、研究を思う存分できたり、とっても充実した生活を送ることができています。例えば、先日はトルコに行き、現地の大学院生たちと災害についてディスカッションをする経験をいただけたこともありました。就職の道を進んだら絶対に見られなかった景色を見ることができています。

自分の「できない部分」に向き合えている

進学して気づいたのは、博士課程とは自分の「できない部分」に向き合うことなんじゃないかということです。博士課程では自分が主体でいろんなことをなんとかしなければなりません。そんな中で思い通りにうまくいくことなんてごくごくわずかです。

▲これは調査の準備風景

誰かが自分の代わりに研究を主導してくれることはまずないですし、学術研究なので「なんとなく」や「雰囲気で」が通用しません。それでいて、何かしらの「世界初」をやるので、答えを知っている人がいるわけでも、うまくいく保証があるわけでもありません。

やっぱしんどい……!でも

多分どの仕事もそうだと思いますが、博士課程でもしんどいことは多々あります。できないことに向き合うのってめっちゃ大変ですし、限られた時間で成果を出さないといけないですし……。

特に博士学生は、在学中の「研究」と修了後の「将来のキャリア」という2つのハードルを超えなくてはなりません。これらは、学生自身にとてつもなく大きい影響を与えるにもかかわらず、不確実性が高く、成果が出るまでに時間がかかる激ヤバ案件です。こんな案件を3年間の期限付きで2個も抱えていれば、そりゃ誰だってしんどくなります。

▲ドイツでの国際会議で初めて研究を英語で発表。緊張とプレッシャーで、前日に飲んだドイツビールは全く味がしませんでした

でも、しんどくても、うまくいかなくても、自分で決めた「問い」に対して、自分なりに泥臭く向き合い続けてやり抜くことというのは価値があるものなんだと思います。こういう挑戦をできていることこそが、博士に進学して良かったと心から思う最大の理由です。

▲「は」で始まる根気が必要なものに選ばれるのも納得です(東大生ら11人で朝からそれ正解!【#18】より)

選んだ道を「正解」にしていく

悩みに悩んで進学した博士課程。課題設定や仮説検証などの汎用的な力の獲得や、良い環境での自身の成長、アカデミアならではの研究の継続を理由に進学を決断しました。

博士課程という道は全員にとっての最適解ではないとは思いますが、私の場合は、周囲の人や環境のおかげもあり、博士課程に進学して良かったと思っています。研究者を目指す以外にも、博士課程に行く意味はあると思いますし、選択肢のひとつとして考えるのは悪くないかなと思います。

▲調査先にて

偉そうなことを書いてしまいましたが、まだまだ私は鍛錬中の身。日々の研究と向き合いながら、一歩ずつ一歩ずつ前に進んでいきます。今度は、博士号を取得して、このような記事を書くことができたら幸せだなと思います。

▲この先何十年か後に振り返った時に博士進学の決断が「正解」だったなと思えるように

【博士課程の雰囲気はこちらの記事からも】

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この記事を書いた人

ユウ

東北大学大学院で防災を研究しています。楽しく読んでいたら自然と知識が身につく記事を目指して、私自身も楽しみながら記事を書いていきます。

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