コジマです。
「光の速さをどう測るか?」、そもそも「光は有限の速さを持つのか?」、光の正体を探ることは科学史における大きな難問のひとつだった。
「光は1秒で地球を7周半する」と言われるように、その速さはとてつもない。従って、ヒトの100m走を計測するような単純な方法ではとても測れないのである。
今回は、人類がどのようにして光の速さを測定してきたかを紹介する。
2km程度では光は捉えられない
ガリレオ・ガリレイの著書『新科学対話』には、光速測定の「失敗例」が紹介されている。
A地点に立った人がランプで合図を送り、遠く離れたB地点の人は光を見た瞬間に自身のランプで合図を送り返すとき、A地点の人が、自身のランプで合図を送ってからB地点のランプの合図が届くまでの時間を計測する、というもの。A-B間の距離は2kmほどだったそうだが、光が速すぎて意味のある計測ができなかったそうだ。
350年前:天体観測で光速を測定?
光が有限の速さを持つことが初めて示されたのは1676年のこと。デンマークのオーレ・レーマーが、イオ(木星の衛星)の食周期に着目し、光は地球の公転軌道の直径を横切るのに22分を要すると結論づけた。これを秒速に直せばおよそ21万km/sとなる。実際の光速は約30万km/sだから、350年近く昔としては精度良く求められているといえる。
レーマーの測定を一部簡略化して説明する。
イオは木星の周りを公転しており、地球から見ると木星の影に入るタイミングがある。これをイオの食(しょく)という。イオの食は42.5時間おきに観察できる。
ただ、この42.5時間という食の観測周期が分単位で変動することが、食を毎回観察する中で分かってきた。イオが木星の周りを公転する速度は同じはずなので、食そのものは同じ間隔で起きている。これはおかしい……。
この変動こそが「光がスピードをもつ」ことの証拠であると気付いたのがレーマーだった。
木星の視点で見ると、図のように地球は太陽の周りを一周するように見える。地球が木星に一番近い位置に来る(=太陽-地球-木星が一直線に並ぶ)ことを衝、逆に一番遠い位置に来る(=地球-太陽-木星が一直線に並ぶ)ことを合という。
食の光が地球に届く時間は、衝のときが一番短い。一番長いのは合のときだが、このとき地球と木星の間には太陽があり、食を観測するのは難しい。
レーマーは、衝から3ヶ月後のある食を観測し、それが10分間遅れて観測できたことを証拠としたようだ。この10分間が、木星と地球の距離が離れた分を光が進むための時間と考えれば、距離÷時間で光速が求められるという訳だ。
150年前:歯車で測定?
光速測定の実験で最も有名といってもいいのが、1849年にフランスのアルマン・フィゾーが行った実験だろう。フィゾーは歯車を用いた巧妙な実験で、光速を31.3万km/sと求めた。
歯車と鏡を直線上に置いて、歯車の歯の隙間からレーザーを放つと光源の位置に反射光が返ってくるようにする。
ここで歯車をゆっくりと回し始める。光は非常に速いので、最初のうちは光が入射したのと同じ歯の隙間に光が返ってくる。
しかし回転速度を上げていくと、光が返ってくるまでの間に歯がずれて、反射光が遮られるようになる瞬間がある。
このときの歯車の回転数と歯の数が分かれば、歯車と鏡の間を光が往復する時間が割り出せるのだ。その時間で往復の距離を割れば光速が求まる。
光の速さを測るなんて不可能に思えるが、工夫をこらすと案外できるものなのだなあ。