こんにちは、伊東です。
みなさんは石油や天然ガスなどの化石燃料が「あと〇〇年で枯渇する!」という話を聞いたことはありませんか?
▲日本では1人あたり1日約4.2Lの石油を消費している
このような言説は昔からありますが、実際になくなってしまう気配は一向にありません。1970年代には「あと30年くらいで石油が枯渇する」と言われていました。それから数十年経った現在でも、石油はもちろん枯渇しておらず、それどころか「あと50年くらいでなくなる」と言われることもあります。
「あと〇〇年で枯渇する」という数値は、一体どのようにして算出されているのでしょうか?
「あと〇〇年で枯渇する」=「可採年数」
よく「化石燃料があと〇〇年で枯渇する」というときの根拠とされているのは、「可採年数」という数値です。
可採年数は、可採埋蔵量を年間生産量で割ることで求められます。可採埋蔵量とは、現在見つかっている資源のうち、現在の技術で経済的に採掘することが可能な資源量のこと。資源の存在がわかっていても、技術的に採掘が難しかったり、採掘に費用がかかり過ぎて経済的ではなかったりするものは、可採埋蔵量にカウントされません。
この計算式から、可採年数は、可採埋蔵量が増えず生産量も変わらないと仮定した場合に、資源が経済的に利用できなくなるまでの年数であることがわかります。
可採年数が伸びるのはなぜ?
化石燃料のうち石油の可採年数に着目すると、おおむね増加傾向にあります。1920年代から40年代にかけては20年前後で推移していましたが、1950年代からは中東の巨大油田の発見が相次ぎ40年程度に伸びました。
その後、世界的に石油の需要が増えたことで1980年代には可採年数は約30年に落ち込みました。以降も石油の生産量は増え続けましたが、それを上回るペースで可採埋蔵量が増えたことで、可採年数は1990年代には40年程度、2020年時点では53.5年となっています。
▲石油の可採年数は増加傾向にある
カギは「可採埋蔵量の増加」その理由は?
石油の生産量が増加傾向にある中で、可採年数が伸びているのは可採埋蔵量が増えているからです。では、可採埋蔵量が増えているのにはどのような要因があるのでしょうか?
1つ目の理由は、油田の発見です。1950年代から60年代にかけて中東やアフリカを中心に巨大油田が発見され、ここ数年でも中東のバーレーンやアフリカのナミビアなどで大規模な油田の発見が相次いでいます。
2つ目の理由は、技術開発により今まで採掘が難しかった石油を経済的に採掘できるようになったことです。代表的なのはアメリカのシェール革命です。従来、シェール層という地層から原油や天然ガスを効率的に採掘することは困難でした。しかし、「水圧破砕法」という技術が開発されたことで、シェール層からの採掘量が劇的に増えたのです。2017年にはアメリカはロシアやサウジアラビアを抜き、世界一の産油国となりました。
今後の可採年数はどうなる?
現在は50年程度で推移している可採年数は、今後どのように変化していくのでしょうか?
油田の発見や技術開発の進展を予測するのは難しく、将来の可採埋蔵量がどうなるかは不確実です。また、将来の石油需要についても専門家の間でも意見が割れています。アジアやアフリカを中心に今後も需要が増加していくという見方もあれば、再生可能エネルギーへの転換が進み2030年代には需要が減少に転じるという見方もあります。
▲将来は「石油に頼らない社会」になるかも
つまり今後の可採年数は、気候変動対策として脱炭素・脱石油がどれほど進むかにより大きく変わる可能性があります。
エネルギーは大切に使おう!
可採年数は、あくまで現在の技術や消費ペースのままで何年採掘できるかを表しているに過ぎません。
石油が地球上から完全に枯渇することは想定し難いですが、有限であることには間違いありません。また、石油を燃焼することで発生する温室効果ガスは気候変動を引き起こしています。そのため、世界全体で石油の消費量を減らすことが必要であり、また、個人レベルでも電気などのエネルギーを無駄遣いしないことが重要です。
再生可能エネルギーへの転換が進めば、石油が不足する前に、石油を主要なエネルギー源として利用しない世界が到来することも考えられます。最後に、サウジアラビアの石油相を長年務めたアハメド・ザキ・ヤマニ氏の言葉をご紹介しましょう。
The Stone Age came to an end not for a lack of stones, and the Oil Age will end, but not for a lack of oil.
(石器時代が終わったのは石が足りなくなったからではない。そして、石油の時代も石油の不足によってではなく終わるだろう。)
【あわせて読みたい】
【このライターの他の記事もどうぞ】