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株式会社JERA

はじめまして! 「1日1食は海のものを食べる」を心がけているライターののりです。

今年(2025年)はサンマが例年と比べて豊漁で、スーパーでも脂乗りが良く、大きなサンマが売られています。近年はサンマが不漁の年が続いていたので、これは嬉しいニュースです。

近年のサンマの不漁は、潮の流れが変化し、海水温が上昇したことなどが主な原因なのですが……。ならば、「養殖のサンマ」が安定して供給されるようになれば、毎年おいしいサンマが安定した価格で食べられるのでは!? そうなったらすごく嬉しいですよね! 

……そう思った方には朗報です。実は、今年9月に食品会社・マルハニチロが、世界で初めて事業規模での試験養殖に成功したと発表しました。

とはいえ、さまざまな課題がある

世界で初めての試験養殖成功。これからどんどん養殖が進んでいく! と喜びたいところですが、そこにはさまざまな課題があります。そもそも、サンマの養殖が簡単にできるのであれば、これまでにも養殖サンマが世間に出回っているはず……。ということからもわかるように、サンマには養殖に向かない生態学的な理由があるのです。

たくさん泳ぐ

サンマは一生を通して長い距離を泳ぐ回遊魚で、細長い体ながらかなり高い遊泳力を持っています。そのため、海と比べて狭い水槽で泳ぐと、壁や床にぶつかって傷ついてしまうことがあるのです。

▲黒潮周辺のあたたかい海で産卵、冷たい親潮の海でたくさん食べて成長し、1年後には産卵場に帰って来る

神経質

サンマはとても神経質で、光などの刺激で驚くと勢いよく泳ぎだし、壁や床にぶつかったり水槽から飛び出したりします。その上、うろこがはがれやすく皮膚も傷つきやすい特徴があり、傷を負うと死んでしまうこともあります。

胃がない

サンマには胃がありません。そのため消化・吸収が非常に速く、排泄物が体の中に溜まらないので、内臓までおいしく食べられるのです。その代わり、常時餌をたくさん食べられる環境が必要。餌代にコストがかかってしまい、餌やりのタイミング・量の管理も大変なので、養殖には向いていません。

いろんな課題をクリアしたその先に

マルハニチロは、2024年6月に出荷目安である100gを超えるサイズへ成長させることに成功し、同年8月には人工授精させることにも成功しています。そして今回、事業レベルに準じる飼育密度での試験養殖を成功させたことが発表されました。

この試験養殖には、水族館のふくしま海洋科学館(以下、通称のアクアマリンふくしま)が協力しています。世界で初めてサンマの水槽内繁殖に成功し、2000年の開館から20年以上サンマの展示を続けているアクアマリンふくしまは、卵の提供や高い技術の支援などで協力しました。

マルハニチロがこれまでにクロマグロやブリ、カンパチ、マダイで培ってきた養殖技術や研究開発の知見も活かされているといいます。

▲飼育試験中のサンマ(画像:マルハニチロHPより)

今後も事業化に注目が集まる養殖サンマですが、これを実現させることには、さまざまな意義があります。

天然魚を守ることに繋がる

これからもおいしい天然魚を食べ続けるためには、海にいる魚を獲りすぎないことが大切です。養殖魚の流通が増えれば天然魚をたくさん獲る必要もなくなり、天然魚を守ることができます。

供給量や値段の安定

近年のサンマが高騰しているように、魚の値段は流通量に大きく左右されます。養殖は海の環境や気候の変化による影響を受けにくく、年による価格の変動が抑えられることも期待できます。また、一年を通して新鮮な魚を供給することも可能です。

▲8月に水揚げされた養殖サンマ(画像:マルハニチロHPより)

脂乗りや味、サイズを狙って作れる

餌を工夫することで天然魚よりも太らせたり、消費者の好みに合わせた味を作ったりすることができます。独自の育て方でブランドとしての価値を高めることも可能です。

サイズのばらつきが少ないことも利点のひとつです。天然の漁獲ではさまざまな大きさの魚が獲れますが、養殖の場合は食べやすく、調理しやすいサイズまで育ててから出荷されます。サイズのばらつきが少なければ、レシピに書かれた加熱時間や分量でレシピどおりの味が再現しやすくなります。

寄生虫のリスクを低減

生魚を食べるときに気になるのが寄生虫。魚に寄生虫がいるのは、海の中でさまざまな餌を食べているからです。養殖では餌や水を管理することで、そのリスクを低減させることができます。

このように、養殖サンマの実現は資源保護、安定供給、品質向上、安全性の面で大きな意義を持っているのです。

現在はまだコストの面で課題が残りますが、養殖サンマ事業化へ期待が高まります。

サンマをおいしく食べよう

……おなかが空いてきましたか? さっそくサンマをおいしく食べてみましょう! 

①サンマを選ぶ

新鮮なサンマは目が澄んで輝き、体が青紫に光っています。脂が乗ったおいしいサンマは、腹がしっかりとして太く、身の反り返ったものを選ぶと良いでしょう。昔から尾の付け根や口の先が黄色いものは新鮮なサンマ……ともよく言われていますね(最近はこの説は一概に言えないともされています)。頭から背中が盛り上がって厚みがあることが重要です。

▲胴が大きいサンマは、相対的に頭が小さく見える

②塩を振り、焼く

サンマのように脂肪の多い魚は、直火で焼くことで、うま味成分が溶け出るのを防ぎつつ、水分を減少させ、脂で舌触りを良くします。またじんわり焦がすことで香味も加わります。

③すだちと大根おろしを添えて召し上がれ! 

サンマのタンパク質は鉄分やカルシウム、その他多くの栄養素をバランスよく含み、脂は血液や脳の健康に良いDHA、EPAを豊富に含みます。「サンマが出ると按摩あんまが引っ込む」ということわざは、サンマが出回る秋は涼しくなり過ごしやすい上に、サンマを食べて健康になる人が増えることを表現したものだったのですね。

すだちに多く含まれるビタミンCはDHA、EPAの酸化を防ぎ、大根おろしは脂質の消化を助けます。また、焦げに含まれるヘテロサイクリックアミンという物質は、ヒトに対する発がん性が懸念されているのですが、大根おろしに含まれるイソチオシアネートによりがん細胞の増殖を抑制したりDNA損傷を修復したりする効果が期待されます。

いかがでしたか? この記事を読んで、食卓でサンマを囲みながら話したいと思う学びがあったなら嬉しいです!

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この記事を書いた人

のり

北海道大学水産学部に在学中です。海に関するさまざまなことに興味があります。海と人の素敵な関係性が愛おしくて大切にしたいと思っています。画面越しに磯の香りを感じられるような記事をお届けしたいです!

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