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こんにちは! 好きなサケ料理はちゃんちゃん焼き、ライターののりです。

おにぎりの具、ホイル焼き、ムニエル、鮭フレーク……。サケは、私たちの食卓にもよく登場する身近な魚ですよね。

そんなサケですが、ただの「おいしい魚」というだけではありません。私が実際に見てきて感じたサケ科魚類のすごさを紹介させてください!

▲川底で力尽きたサケ(北海道八雲町遊楽部川にて筆者撮影)

先日、私が通う北海道大学水産学部の実習で、遡上するサケの調査を行いました。

サケ科魚類は北半球の北方域全域で川から海までを生活圏とし、世界中で多くの人に愛されています。その一方で、研究対象としても興味深い魚です。なぜ海に降りるのか? 地図を持たずにどのように海を旅し、生まれた川へ戻って来るのか? 繁殖様式や生活史の多様性はなぜ進化したのか

近年では、「サケの帰ってくる川」は河川環境保全のシンボルにもなっています。

海の長い旅から命を懸けて故郷の川へ帰り、次の世代へのバトンを渡し森の栄養となる姿を目の当たりにすると、長い旅をしてきたその一生を考えさせられ、思わず応援したくなります。

おにぎりの具にもなるのに、やってることは超ダイナミック。一生をかけて海と川をつなぐ、とんでもない役割を持っています。

世界自然遺産・知床とサケ

このつながりをもっと実感できる場所が、知床です。

先日、プログラムで知床に行ってきました。

▲世界遺産地域のダム。魚のための工夫がされています

……といっても、今回は“旅レポ”ではなくサケの話が主役です。

知床は“景色がきれい”だから遺産なのではありません。評価されたのは、海・川・森がつながる自然

平成17年7月17日に知床は世界自然遺産に登録されました。

登録に当たっては、流氷が育む豊かな海洋生態系と原始性の高い陸息生態系の相互関係に特徴があること、シマフクロウ、シレトコスミレ等の世界的な希少種やサケ科魚類、海棲哺乳類等の重要な生息地を有すること等が評価されました。

世界的に見て普遍的な価値を有する知床の自然環境を将来の世代まで引き継いでいくため、環境省を始め、関係機関により様々な取り組みが始められています。

引用元:『知床世界遺産センター

そして、このつながりの真ん中にいるのがサケ科魚類です!

▲ヒグマとの適正な距離は50m以上。私はヒグマに出会ったことはありませんが、ニンゲンもクマも距離感が大切

流氷から始まり、海・川・森がつながる

北半球で最も南まで押し寄せる流氷が、生命の出発点です。

海水が凍る海では、氷から押し出された栄養分に富んだ冷たい水が作られます。春になると太陽の光を受けて植物プランクトンが大増殖し、それを食べる動物プランクトンも豊かに育ちます。

オホーツク海は、まさに流氷と栄養分の生産工場! この豊かな海には、たくさんの動物たちが集まります。

この海でたくさんの餌を食べて成長したサケたちは、いよいよ産卵のために生まれた川へ戻ります。

川を上るサケは餌を食べず、産卵のためだけに泳ぎます。産卵場にたどり着くまで、何度も立ち止まりながらも力を振り絞って泳ぐ姿、なんか尊くないですか? 私はこの記事を書きながらちょっと泣きそうになっています。

産卵場を目前にして力尽きたり、ヒグマに捕らえられたりして道半ば命を落とすことも……。ヒグマが脂の乗った身やイクラなどのおいしい部分を食べ、残りも他の動物たちの胃の中に収まります。

産卵を終えたボロボロの体はシマフクロウ、キタキツネなどの食料になり、最後は森の栄養となります。

海の長い旅から帰ってきたその体のすべてが森の命へつながっているんですね!

▲キツネが食べた後だと思われるサケの死骸(北海道八雲町遊楽部川にて筆者撮影)

そして、また長い旅へ

孵化した稚魚は、次の春に海への長い旅に出ます。オホーツク海、西部北太平洋、ベーリング海、アラスカ湾をめぐる大移動です。

大きく成長したサケは、また故郷の川に帰って産卵し、命をつなぎます。

こうして、流氷・海・川・森のつながりが絶えず循環しているのです!

現地で見た知床の川

サケの一生を通して大自然の循環を理解したところで、改めて知床の写真をじっくり見てみましょう。

知床では、魚の遡上を助ける市民の手作り魚道を見たり、人工的な市街地の川でも遡上するサケの姿を見たりして、自然と人が共に生きる知床の姿を感じました。

▲よく見ると奥には大きな橋が架かっています(筆者撮影)
▲川の下半分が魚道です。これがないと遡上できない……(筆者撮影)

一方で、魚道を上れない魚がいることや外来生物のウチダザリガニによってシマフクロウの餌となる魚類が減少するなど、これからの課題も残されています。

サケは海と森をつなぐだけでなく、人と自然をつなぐ存在でもあることを実感しました。川の生態系を守り、未来へつなぐ知床をこれからも見守っていきたいと思います。

お皿の上にも

食卓にサケが並ぶときには、そのサケがこれまで旅してきた海を想像してみましょう!

そして、その海を守ることが森の豊かさを守ることにもつながります。

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この記事を書いた人

のり

北海道大学水産学部に在学中です。海に関するさまざまなことに興味があります。海と人の素敵な関係性が愛おしくて大切にしたいと思っています。画面越しに磯の香りを感じられるような記事をお届けしたいです!

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