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QuizKnockのメンバーは所属する大学や専攻も違えば、趣味や嗜好も様々です。

連載「おすすめの一品」では、そんなライター達がそれぞれ「おすすめしたい!」と思ったコンテンツや好きなものについて語ります。第3回の担当は私、志賀玲太です。

映画や小説についても語りたいものは沢山あるのですが、折角の機会なので私の好きな短歌に触れようと思います。

というわけで、今回紹介するのは笹井宏之の歌集『えーえんとくちから』です。


私は趣味で短歌を詠んでいる。月に数冊は歌集や短歌雑誌を買い、日頃頭にふと浮かんだ表現をメモ帳に書き連ね、時折歌の形にしてまとめる。

念のために説明しておくと、短歌は5・7・5・7・7の5句31音からなる詩の形式のひとつで、要するに俳句よりもちょっと長いやつ。短歌の魅力は有り体に言ってしまえば(基本)31文字という制限された文字列の中で、どこまでも広がる詩情の可能性を見つけられることにあると思う。

今回は紹介する歌集は、そんな短歌の魅力がたっぷり詰まった一冊。

笹井宏之『えーえんとくちから』

私物。文庫なので持ち歩きやすくて良い。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい

——笹井宏之『えーえんとくちから』

笹井宏之は現代の口語短歌について語るうえで非常に重要な歌人だ。2009年に26歳という若さで亡くなってしまったが、笹井の残したエッセンスは間違いなく多くの歌人たちに受け継がれている。

ここで紹介する『えーえんとくちから』は笹井の没後10年となる2019年にちくま文庫に収録された、ベスト歌集だ。

一口に短歌と言っても多くの潮流があるが、笹井の歌の多くはある視点から日常の光景を切り取ったような、いわゆる写生の歌ではない。短歌という形式の上で縦横無尽に言葉を繋ぎ、意味の世界で未知の感触を作り上げるのが笹井の短歌だ。

歌集のタイトルになっている「えーえんとくちから」から始まる歌も、決して素直に情景が浮かぶとは言い難い。「永遠と口から」紡がれているようにも読み取れる言葉のリフレインが、「永遠解く力」の形になって現れ、欲望される。飄々とした言葉遣いの中、短歌の韻律を最大限に駆使したうえで、一首の中に流れるような意味の動きを生み出しているのは本当に面白い。

もし歌集『えーえんとくちから』を手に取ってもらえたら、頭からしっかり読み込まずともパラパラめくってもらえたら嬉しい。必ず1首か2首は気になる歌が見つかるだろうし、それまでの日常では見つけることのできなかった言葉の在り方に触れることができるはず。

鞄からこぼれては咲いてゆくものに枯れないおまじないを今日も

——笹井宏之『えーえんとくちから』

笹井の歌にはどこか優しさというか、あたたかさが満ちていて、それがどこまでも心地良い。


多くの人は当たり前のように歩いたり走ったりできるが、みんなが陸上選手のように速く、上手に走ることができるかと言われればそんなことはない。同じように常日頃話し、書き、言葉に触れて生活していたとしても、それを意識的に使いこなし、磨くことは本当に難しい。

もしこの歌集、そして短歌をきっかけに日常触れる言葉を改めて見つめ直してもらえたら、幸い。

生きてゆく 返しきれないたくさんの恩をかばんにつめて きちんと

——笹井宏之『えーえんとくちから』

恩、返したいね。

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この記事を書いた人

志賀玲太

志賀玲太です。東京藝術大学美術学部芸術学科を卒業。なんだかよくわからない記事を書きます。大概のことは好きです。

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