QuizKnock雑談中「須貝さん、今年のノーベル物理学賞は何がすごいのよ」【聞き手:河村】
スペシャルQuizKnock編集部2025.11.12
今年の研究のすごいところ
で、トンネル効果というのがあるんですね
超伝導を用いて作った回路、とくに「ジョセフソン接合」と呼ばれる素子を使うと、言うこと聞かないトンネル現象を割とコントロールできるんだぞ!
……というのを実験で成功させたのが、今回の主たる偉いこと。
ジョセフソン結合:2つの超伝導体の間に極薄の絶縁体を挟んだ、サンドイッチ状の接合構造。この後登場する「量子コンピュータ」の演算素子などに使われている。
▲イメージ
トンネル効果が言うこと聞くんですか?
まぁ、人為的に起こしたりできる。言うこと聞いてるかは微妙だけど。
なんか、「鵜飼」の鵜が僕のジョセフソン接合のイメージに近い。真に言うことを聞いているかと言われるとなんか微妙だけど、魚は獲れてるな、くらいの言うこと聞き具合
▲伝統漁法「鵜飼」の様子。鳥の鵜(ウ)を操ってアユなどを獲る
狙ってトンネル効果を利用するとかはできるんですね
ちなみに! かの日本人ノーベル物理学賞受賞者である江崎玲於奈先生が受賞した年の同時受賞がジョセフソン先生ですね。
江崎玲於奈:1973年のノーベル物理学賞を受賞した物理学者。半導体における「トンネル効果」を発見した。
ジョセフソン接合はちょっと昔です?
ジョセフソン接合の理論が1973年に与えられて、今年は「実験でかなりいい感じにコントロールしたよな!」に与えられました。
あーなるほど 理論自体への受賞じゃないんですね
それ、江崎先生の話じゃない? くらいの理解でいた
江崎先生はトンネルの実験的な再現とかで、ジョセフソン先生の理論はクーパー対(電子2個セット)ごとのトンネルが数式で表されるよ〜みたいな受賞で
それはそれで良かったんだけど、それでも「電子1個のミクロな規模」をコントロールするレベルの話だったんです。
あっ
次に「巨視的」の話が来る
▲ここで今年の受賞理由をおさらい
今年は、膨大な数の電子が関係する「巨視的量子状態」を、実験でコントロールしたことを偉いとしたんですね!
膨大って、いくつですか!
難しいけど、数ミリから数センチの回路が、1つの量子的状態になっていると考えても良い気もするなぁ。
そこに「在る」のがわかるサイズ
超伝導って、超伝導状態になっている金属の全部が「1つ」として振る舞うと考えられるんですよね
超伝導、そうなんですか?
電流が水みたいに流れると考えるとして、
普通の電流って水流みたいに流れてるところと流れてないところがあったり、水の粒が水の粒を追い越したりぶつかったりしてるみたいな感じで、電子同士が押し合ったりして流れてるイメージをしても、まぁ悪くないと。
ほうほう
ところが超伝導では、電流が氷みたいに振る舞うんですな。隣同士が完全に関係し合った状態。
ホースの水が凍ったら、ホースの端を押したときに即座にホースの反対側から水(氷)が出てくるじゃないですか。
超電流って、なんかそういう気分なんですよね。
なんか本質そう
超伝導がそもそもそういうもん、というわけですね
そうです。で、今回は、その超伝導を使ってうまく細工した回路、ジョセフソン接合とかを使って回路の大変多くの電子を、結構人間の思ったとおりに動かせるね、ということが嬉しい受賞でした。
すぐそこの未来に……
何が嬉しいかと言うと、量子コンピュータが作れそう。
おー
量子コンピュータ:量子力学の原理を応用した次世代のコンピュータ。本来膨大な計算ステップが必要な問題を少ない計算回数で解くことができるとされ、近年大注目。計算速度は(一部の問題に限れば)「従来のコンピュータの1億倍」と宣伝されることもある。
回路でトンネル効果が起こると、どうなるんですか?
回路自体がどこかへ行ってしまう、とかではなさそうと思うものの
回路でトンネル効果が起こるからというよりも、多くの電子を交えて人がコントロールしやすい量子状態を作ることで、計算に使える「量子ビット」を作る道筋ができたという話ですね。
トンネル効果も手段に過ぎないのか……
量子コンピュータは、なにかゆらゆら揺らいでいる純粋に量子的な計算の素子に対して、「よし計算するぞ」と人間が命令をしたいということで
量子状態を作ること、そこに手を加えることが重要ですね。
なんで、今回のノーベル物理学賞の実験に代表されるような、人がコントロール可能な規模での量子状態の構築というのはもちろん必要ということです。
そもそもコントロールできまっせ、という話なんですね
そうですな! 昔の人も電気の存在自体は雷で知ってたけど、誰かさんが手で扱える電気を作って、今便利、みたいな感じかな?
もしかして量子コンピュータってもう作れそう感かなり出てます?
わたしにとっては「お噂はかねがね」レベルなので
実際もうかなり作られてると言っていいとは思います。
まぁ実用とか、現実的に問題を解決するという話は僕まではまだ届いてないかな? くらい。
けっこう近めの未来まで来てますね
未来(未ダ来ズ)というよりは、将来(将ニ来ントス)くらいまで来てるかも!
楽しそ 長生きしよ
他のノーベル賞の話はまた今度にしましょう。長生きに生理学・医学賞の業績が役立ったりするかも!
今後もメンバー同士のゆるいやり取りを「QuizKnock雑談中」で更新予定です!
次回もお楽しみに!
【ほかのメンバーの雑談もどうぞ】
【あわせて読みたい】