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あなたはクラシックコンサートに行ったことがありますか? ステージではさまざまな楽器が鳴り響き、私たちに素敵な音色を聞かせてくれます。

その中心としてオーケストラを取りまとめる「指揮者」という仕事があります。演奏の指揮をしている姿をよく目にしますが、実はそのほかにもたくさんのお仕事をしていることを知っていますか? 指揮者の山上さんにお話を聞いてみると、私たちの知らない指揮者の顔を知ることができました。

山上紘生こうきさん
東京藝術大学大学院音楽研究科指揮専攻修士課程修了。在学中にアカンサス音楽賞、同声会賞、若杉弘メモリアル基金賞を受賞。東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団で指揮研究員を務めた。

※今回の記事の末尾にはアンケートが掲載されています。今後の記事づくりのため、ぜひご協力ください。

構成・執筆:編集部 石田武蔵

目次

指揮者の仕事は「99%が準備」
高2で「指揮者になりたい!」電流が走った出来事
指揮者になるためにはどうすればいい?
指揮者に必要なのは「歴史」や「地理」?
指揮者として、一番大切にしていること

アンケート

指揮者の仕事は「99%が準備」

――早速ですが、指揮者というお仕事についてお伺いしたいと思います。「指揮者」と聞くと、演奏会などでオーケストラの指揮をしている印象が強いのですが、そのイメージは合っていますか?

山上さん:そうですね、「指揮棒を振っている」という意味では合っているんですが……「演奏会で指揮をする」という仕事は、全体の1%くらいですね。

――1%だけですか!? 

▲山上紘生さん

山上さん:残りの99%は、皆さんの目に触れる本番に向かうための準備です。

――そんなに準備の割合が多いんですか! 指揮をする以外にはどんなお仕事をしているんですか?

山上さん:そうですね、演奏会などで指揮をするのはよく知られているかと思いますが、その演奏会の曲目を選ぶというのも指揮者の大事な仕事のひとつです。ひとつの演奏会を作るにあたって、お客さんに曲の魅力が最大限伝わるよう、あるコンセプトやテーマのもとで曲を選びます。コース料理のような感じでしょうか。

――うまい具合に「次の曲、次の曲」と入っていけるような構成を考えているんですね。

山上さん:そうです。そのあとは、その曲を理解することや練習に時間や手間をかけています。曲が決まったらそこから毎日準備ですね。楽譜をとことん読み込んで、「こういう演奏をしたい」という理想の音楽についてのイメージを膨らませます。そして、その理想を実現するために「どう振ればいいか」を考えるんです。

――毎日準備ですか! 全然知らなかったです。

▲山上さんの愛用する指揮棒。大切な仕事道具です

山上さん:あとは、子供たちに向けた音楽鑑賞教室を開くこともあります。そこでは「音楽の授業で扱った曲を」といったようなリクエストをもらうこともあり、その依頼に応えられるような選曲をしたり、MCを考えて喋ったりします。

――MCまでされるとは! 指揮者ってかなり幅広いお仕事なんですね。

前日に「明日振れる?」ピンチとチャンスが同時にやってきた

――山上さんがこれまで指揮をしてきた中で一番楽しかったことや、逆に苦労したことを教えてください。

山上さん:一番楽しかったことでも、一番苦労したことでもあるんですが、去年(2023年)の6月頃、アシスタントをやっていたオーケストラの演奏会で、急に「本番の指揮を振ってください」と頼まれたことですかね。

――えぇ!! かなり急ですね。

▲前日夜中の急な連絡に山上さんもびっくり

山上さん:本番で指揮をするはずだった首席客演指揮者の方が突然肺炎になって参加できなくなってしまったんです。予定では3日くらい練習をしてから本番だったんですが、練習1日目の前夜、急に電話がかかってきて「振ってください」と。大事件でしたね。

僕はそれが初めてプロのオーケストラに指揮をする機会で、しかも、頼まれたのはそのオーケストラにとって一番大事な「定期演奏会」だったんです。そう思うと余計に緊張してしまって、2日くらい寝ないで過ごしました

――相当なプレッシャーですね。

山上さん:そうですね。その時の押しつぶされそうな感じが指揮者のキャリアの中で一番辛かったんですが、逆に本番はすごく楽しくて、これまでで一番幸せな瞬間だなと感じました。とても大変なことだけど、こういう経験をするという意味ではチャンスでもありましたね

――なかなか常人だと体験できないような、とてつもない出来事ですね。

高2で「指揮者になりたい!」電流が走った出来事

――山上さんが指揮者になろうと思ったきっかけを教えてください。

山上さん:指揮者という職業を知ったのは物心ついてすぐだと思います。父も指揮者をやっていて、僕にとっては「当たり前の職業」という感じでした。ただ、僕自身は指揮者に興味がなかったんです。バイオリンやピアノは習っていたんですが、それよりも電車が好きだったので、設計士とかデザイナーになりたかったですね。

▲発表会のたび、ごほうびに電車の模型を買ってもらっていたそう

――そう聞くと、どんなきっかけで夢が変わったのかが気になります。

山上さん:指揮者になりたいと思ったのは高校2年生の時です。岡山のジュニアオーケストラを父親が指揮することになって、そこで「バイオリンが足りないから、そこでちょっと弾いてほしい」と頼まれたんです。僕はバイオリンを小学校4年生くらいでやめていたので、楽器に触るのも久しぶりでした。

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