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ディズニーが誇る不朽の名作、『ピノキオ』。

ピノキオの最大の特徴といえば、嘘をつくと鼻が伸びるところです。2022年製作の実写版『ピノキオ』でも、ピノキオがコオロギのジミニー・クリケットに対して嘘をついてしまい、鼻が伸びるシーンがあります。

作中でピノキオは良心に目覚めて嘘をつかなくなりますが、もしも嘘をつくことをやめられなかったとしたらどうなっていたでしょうか

「嘘も方便」ということわざがあるように、生きていくうえで嘘をつかねばならない場面もあるはず。積み重なる嘘によって鼻が伸び続け、いつか折れてしまうのでは?

▲これは衝撃映像

命を吹き込まれたとはいえ、ピノキオは人形。材料はおそらく木でしょう。ということは、「材料力学」を用いて「ピノキオは嘘を何回ついたら鼻が折れるのか」を求められるはずです。真相が気になった小南、計算してみました。

ピノキオの鼻のスペックを調べよう

まずは、ピノキオの鼻のスペックについて分析していきます。

実写版『ピノキオ』より、ピノキオの鼻を直径1.82cmの円柱と概算しました。鼻の材料については、日本の代表的な木材であるスギとしました。

▲単純化したピノキオの鼻

また、1回の嘘で伸びる鼻の長さは、実写版『ピノキオ』の映像より、嘘を重ねるほどその長さが長くなっていることがわかりました。そこで、1回目の嘘で伸びる鼻の長さを20cmと概算し、n回目の嘘で伸びる鼻の長さをn×20cmとしました。n回目の嘘をついたときの鼻の長さは10n(n+1)cmとなります。

▲嘘を重ねるほど代償がより大きくなるカルマを背負っている

ピノキオの鼻が持つ性質がわかったので、さっそく「ピノキオは嘘を何回ついたら鼻が折れるのか」について考えていきましょう。

ピノキオの鼻はどこまで伸びると折れる?

「ピノキオは嘘を何回ついたら鼻が折れるのか」という問題は、「ピノキオは嘘を何回ついたら鼻が折れる長さまで伸びるのか」と言い換えることができます。

ここで登場するのが、構造部材の強度計算などに用いられる「材料力学」です。

材料力学では、ピノキオの鼻は「片持ち梁」として考えることができます。ここで梁とは、建物などを支える水平方向にかかる部材のことです。その中でも片持ち梁は、片方は固定されており、もう片方は固定されていない梁のことをいいます。

▲構造物を支える部材

鼻が折れる条件は?

それでは、ピノキオの鼻が折れる条件について考えていきましょう。材料の強度を表す指標のひとつに、曲げ強度というものがあります。一般に、木材は曲げ強度以上に大きな応力(物体内部で単位面積あたりに生じる力)が加わると破断してしまいます。

つまり、ピノキオの鼻が折れる条件は鼻の最大応力≧スギの曲げ強度ということになります。

ちなみに、今回のように片持ち梁に力がかかるとき、梁の根元に最大応力が発生します。つまり、ピノキオの鼻は「根元から」折れます

では、この条件を満たすときの鼻の長さを計算していきましょう。

ピノキオの鼻は10.1mまで伸びると折れることがわかりました。およそ大型の路線バスの全長くらいなので、かなり伸ばす必要がありますね……。

これをピノキオの鼻のスペックと照らし合わせると、嘘をついて鼻の長さが10.1mを超えるのは、10回目の嘘のときです。

意外と早いですね。かなりの正直者でない限り、ピノキオは鼻が折れることを避けられないようです。ハードな人生だ……。

実際に嘘をつかせてみよう

私も理系学生の端くれ、計算した後は試したくなるものです(ピノキオさん本当にごめんなさい)。ここでは鼻さえ伸ばすことができればいいので、ピノキオには適当に嘘をつかせちゃいましょう。

▲ピノキオが言うわけない嘘

▲だいたい来ないのである

▲信じさせないでほしい

すると……

なんということでしょう。

めっちゃ曲がっとる。
※曲線はイメージ

鼻が折れる前に、6回目の嘘で鼻が地面についてしまいました。

梁は伸びるほどたわむ

梁のような細長い構造部材は、伸びるほどたわみが発生します。

▲釣り竿をイメージするとわかりやすい

ピノキオの鼻の位置から地面までの距離を45cmと概算すると、鼻の長さが3.5mまで伸びたときにたわみで地面につきます。この長さに6回目の嘘で到達したというわけですね。

最後に、「どうしてもピノキオの鼻が折れる瞬間を見たい!」という好奇心旺盛なそこのあなたへ。

鼻の長さが10.1mまで伸びたとき、3.18mほど下にたわみます。このため、この3.18m以上の高さにピノキオを立たせれば可能となりますよ。

(2022年11月10日17:00 お詫びと訂正)記事掲載当初、鼻のたわみの長さを31.8mと掲載しておりましたが、計算ミスがあり、正しくは「3.18m」でした。お詫びして訂正いたします。

ピノキオに良心が芽生えてよかった

あと数回嘘をついていたら、名作『ピノキオ』は鼻が地面についた人形のお話になってしまうところでした。ジミニーが導いてくれて本当によかった……。

現代を生きるうえで嘘をつく場面もあるかとは思いますが、ピノキオを見習って、鼻がへし折れないように正直に生きていきたいものですね。

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この記事を書いた人

小南

小南です。名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻所属。「楽しく読んでいたら、いつの間にか知識も身に付いていた!」と思っていただける記事を提供するべく日々奮闘中。皆さんの一時の気晴らしとなることができれば幸いです。

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