2020年、コロナ禍に直面して以降「ウイルス」と書いたり見聞きしたりする機会が飛躍的に増えました。そこでQuizKnockでは過去に1字で「ウイルス」を意味する漢字を考案しました。
▲メンバーが考えた「ウイルス」を意味する漢字(「『ウイルス』を表す漢字を創作します!」より)
しかし、時代は刻一刻と変化するもの。我々の言葉もまた移り変わり、漢字が存在しないことにより不便を強いられる場面は枚挙に暇がありません。
そこで今回は、QuizKnockが誇る漢字や語学に明るいメンバーの叡智を結集し、新しい漢字を発明していきたいと思います。目標はズバリ……
それでは早速参りましょう!
メンバー紹介
本日は、これから各々が持ち寄った「オリジナル漢字」をプレゼンしていただきます。評価をするのは、Webでさまざまな漢字に関する記事を執筆している……
漢検1級ライター・鹿野さんです!
ライター・鹿野
漢検・数検・英検などの1級を保持する東大数学科の大学院生。「今日の一問・漢字編」などを担当し、QuizKnock内でも漢字の知識で比肩する者はいない。
どうも、よろしくお願いします。
審査員としての意気込みや、メンバーへの期待感はありますか?
私が評価する側にいていいのかという不安はありますが……
いやいやいや、他にいないでしょ。
なので、不安というか「きたい」を抱いていますね……
そっちの「きたい」か〜!(笑)
ちょっと早い早い、ぶっこむのが!(笑)
▲漢検ホルダーだけに広がる笑い
ついていけるか不安になってきた。
ちなみに鹿野さん含め、本日のプレゼンターで漢検1級を保持している方はどれくらいいますか?
1年前(2022年・冬)にやっと1級取れました!
僕は小5のときに初めて1級、そこから4〜5回受かってるかな?
私も初合格は相当前で、合格回数も長野と同じくらいです。
うわああ〜
すいませんでした、なんか。
平均すると2回はあるので大丈夫です。
この最強の布陣で早速「新しい漢字」を考案していきます。
▲鹿野「はやらしていきましょう」(これはしっかり実在する漢字)
第1発表者・山本祥彰
言わずと知れたQuizKnockの漢字王。「自分にしか作れない漢字」と豪語し、先陣を切る。
私が作ってきた漢字はこちらです。
「佇む」みたいだけど……「何」が入ってる。
なんか「宿痾」を縮めた、みたいな。
▲似た漢字から外堀を埋めていく
たしかにね〜
漢検1級あるあるですね。「宿痾」は「微恙」の対義語で出題されることでお馴染みの……
ちょちょちょ、
▲漢検1級トークが止まらない
さて、そもそも漢字のどこがいいかっていうと、文字を減らせることだと思うんですよ。
「情報を圧縮できる」と。
普段どういう時に文字数長いと困るかっていうとやっぱり……
クイズの文字数に制限があるときですよね?
間違いない。もう最初に浮かんだ。
そう、なの?
クイズ大会に問題を提出するとき、たまに「60文字以内で問題を作ってください」みたいな制限がかかるわけですよ!
「短文基本」とかね。
短文基本:早押しクイズの問題傾向のひとつ。おおむね60字以内の長さの問題文で、難易度に一定の上限を設けた問題が出題される。
60文字以内に収めないといけない、でも62文字になっちゃった。こういうときに同じ情報量のまま文字数を減らすのってムズいわけですよ。
やっぱ本質的なところは削りたくないと。
「ここまで問題文キレイにできたのにな」とかね。あるある。
……ってときにですよ。末尾の「〇〇は誰?」とか「〇〇は何?」とかって短くて最高じゃないですか。
「〇〇を何という?」ってめちゃくちゃ長いじゃないですか?
ということでこちら!!
「なんという」と読む漢字を作ってきました。
「何」と「イ」「ウ」で「なんという」ですね。
あ〜! カタカナなのか!
使い方としては、単純に問題文の「何という」の部分がコレに置き換わるべきですね。
これがあればMondoをプレイするときに、後ろからめくって「い」「う」みたいな悲劇を減らせるわけだ。
Mondo:QuizKnockが提供する「指定オープンクイズ」。目隠しされた問題文を1文字ずつ開きながら、より少ない文字数で正解を目指す。アプリもあります。
▲すごくピンポイントな悲劇
ちなみに審査員って質問してもいいんですか?
はい、どうぞ。
「いう」を「ごんべん」にしなかった理由ってありますか?
それはやっぱりね「イ」「ウ」って入れたかったから。直感的にわかりやすくなると思って。
なるほど……(メモを取る)。
めちゃめちゃ真面目に審査されてる……。
それに、カタカナが多いことには嬉しいことがあって……。
ペラッ
問題です。
!?!?
▲「問題」と言われるとつい身を乗り出してしまう一同
「?」に入る言葉は?
イマヨ……「イマヨウイロ」?
正解です。「今様色(いまよういろ)」、みんなご存じの。
全然存じあげない……色の名前?
平安時代に流行った、濃いピンク色のことですね。
▲謎解きの答えさえも漢字王
それはさておき、カタカナがいっぱい含まれていることによって、こういう風に謎解きにも使えるわけです。
なるほど。「イ」がふたつあるのとかも珍しいですね。
ちなみに「にんべんが2つあって気持ち悪い」という意見もあるかもしれませんが、それは……
「俯く」がカバーしてくれます。
反論が準備してある。
「俯」を受け入れている時点でみなさんは「なんという」を受け入れざるをえないというね。
「阿閦如来」の「閦」の異体字は、門構えににんべん3つですし。
あー! 見たことあるかも。
「衆」の異体字も「人」の品字様だから全然アリ。
さっそく鹿野さんの審査を聞いていきましょう。
その場で聞くんだ。M-1と一緒だ。
まず漢字の作り方としては興味深いと思っていて、画数ではなく文字数を減らすことでメリットが生まれるっていうのは歴史的にあってですね。
例えば……
こういう字が作られたのって知ってますか?
へー、知らない。
左の字はというのに使われてるんですけど、これ何かわかります?
歌舞伎っぽい。
そうなんです、歌舞伎の外題(演目の題名)です。
外題の文字数は奇数が縁起がいいということで、2文字を無理やり合体させた漢字を用いることがよくあるんです。もうひとつの字も、という外題の歌舞伎ですね。
また、カタカナが漢字に含まれるという例だと、という字がUnicodeに登録されていたりします。
「今日から使える」という点で考えると、世間一般に広まるのは難しいかもしれないですが……「位相文字」としてクイズの界隈の中である程度広がれば、可能性はあると思いました。
位相文字:特定の分野や業界で使われる文字。「潟」の略字「泻」は、現在主に新潟県内で使われる、など。
ありがとうございます……。なんか
今日こんな感じなんだね。
ガチの評価が返って来るじゃん。
ね、ありがたすぎる。
これだけ知識ある人だと、どんな漢字を提出しても拾ってくれる安心感がある。
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