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2021年9月10日(金)、「ライオンスペシャル 第41回全国高等学校クイズ選手権」(以下、高校生クイズ。日本テレビ系)が放送されます。

そこでWebメディア・QuizKnockでは「思い出のクイズ・高校生クイズ編」と題し、高校生クイズの出場経験があるQuizKnockメンバーが高校生クイズの思い出を語ってきました。本企画のトリを飾るのは、第30回・第31回高校生クイズで高校生クイズ史上初の個人2連覇を達成した伊沢拓司です。第41回高校生クイズではスペシャルパーソナリティーを務めます。

そんな伊沢が語る思い出は、優勝を飾った全国大会ではなくて……? 今まで「どこにも語ったことのない」という伊沢の高校生クイズの思い出をお楽しみください。


「ゲリラ豪雨」などという身も蓋もない言葉が流行語になって、まさか次の年まで生き残っているとは、正直思っていなかった。とはいえ、銃弾のような雨粒の掃射を身に浴びると妙に納得もしてしまうものだ。 8月2日。西武ドームは雨雲の急襲を受け、「高校生クイズ」関東予選の挑戦者一同は足早にスタンドへと向かっていた。

狭山線を降りてまだ5分というところで、僕もまた途方に暮れた。 動きやすいようにと折りたたみ傘をチョイスしたのは失敗だった。カバーできる範囲があまりに小さい。靴の中には小さな水たまりができている。

そもそもの見立ても甘かったのだ。前日、決戦を前にしてなお三々五々に集まった開成クイズ研究部の面々は、カンカン照りの太陽を尻目に早々と活動を切り上げていた。まさか翌日が土砂降りだとは。思いつかないほど呆けていたのか、思いつけないほど余裕がなかったのか。 世間が政権交代に揺れた2009年の夏。僕たちもまた、取る物も取り敢えずに決戦へと臨むのであった。

「問題! 今年全世界注目の中オバマ大統領が誕生しましたが、過去43人の歴代大統領の就任演説の中で、『JAPAN』の言葉は一度も使われたことがない。YES or NO?」

YES-NOクイズも1問目から、雨のせいで聞こえづらい。いっそ傘など捨ててしまいたいくらいだ。 どことない苛立ちは、何も雨のせいだけではなかった。目の前の難問が僕をじらす。攻略法を見出しづらい問題だ。

まず、アメリカ大統領の就任演説は、近年でいくと15分から30分。話題の展開として「JAPAN」は入らなくもないだろう。就任演説というものの性質だけからは正解を判断できない。 しかもこの問題、答えが〇でも×でもまったくもって自然だ。入っていたらその文脈を紹介すれば「へー」となるし、入っていなかったら「こんだけ長くやってて1回もないのか!」という驚きがある。問題としては、どちらでも十分面白いのだ。 小手先のテクニックは通用しない。自分の知識だけが頼りだ。入っているとしたら過去に問題になっていそうなものだが、聞いたことはない。となると「使われていない」=YESが正解か? いやいや、自分が聞いたことがないだけかもしれない……。悩ましい。思わずしかめた眉の間を、水滴がこぼれ落ちた。

開成からは複数のチームが参加している。どうしているだろうか。誰にでも等しく難しいであろうこの問題、僕はただ祈ることしかできなかった。 正解は、YESだった。

2問目、続くYES-NO問題は出場チームからの公募で選ばれたもの。ここで問題が採用されたチームは一気に準決勝行きというルールだった。

「問題! ここ、西武ドームを本拠地とする西武ライオンズの監督・渡辺久信の誕生日は今日8月2日である。YES or NO?」

これは大丈夫だろう。わざわざ出すならYESに違いない。ましてや、数多あるチームの作品から選ばれた一問。「実は違いました〜!」というスカしを選ぶはずがない。 自らの正解よりも、理論的に解ける問題が出たことへの安堵が勝る。うん、みんなきっと大丈夫。 携帯を握る手が、少しだけ緩んだ気がした。ドームの外の雨は、ようやく休戦の気配を見せていた。

サムネイル画像提供:日本テレビ

次ページ:雨の西武ドームで繰り広げられていた予選の結果は――?

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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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