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こんにちは! ライターのです。高校生でクイズを始め、大学院生の現在でも続けています。

そんな僕のクイズ人生で最高の記録は、2023年3月に開催された学生クイズサークル日本一を決める大会、EQIDENエキデン2023。僕が所属する東北大学クイズ研究会が、この大会で悲願の初優勝を果たしたのです!

▲前列中央でトロフィーを持っているのが筆者

EQIDENは、学生クイズサークルの日本一を決める、年に一度の全国大会です。駅伝競走の要領で早押しクイズを行い、いち早くアンカーの選手がゴールしたチームが優勝となります。

東北大学が初優勝を果たしたときの様子については、僕の同期の直路も「思い出のクイズ」で語っています。

1区でチームの走り出しに貢献した彼に対し、僕はチームの優勝を決定づける最終区の10区を担当していました。今回は、僕の目線で見たEQIDEN2023をお話しします。

僕は、クイズで強くなれなかった

EQIDENは、全国から早押しクイズの猛者が集う大会です。しかし僕は、クイズプレイヤーとして飛び抜けた実力や実績はありませんでした。高校・大学とクイズをしてきましたが、クイズ大会ではなかなか勝ち進めず、ましてや優勝など夢のまた夢だったのです。

僕が強いクイズプレイヤーになれなかった大きな要因のひとつに、クイズの問題集の読み込みが苦手だったことがあります。

強いプレイヤーになるには、膨大な数の問題をインプットする必要があります。全国の実力者たちは、大会などで出題されたクイズをまとめた問題集を読み込み、今後も出題されそうな問題の対策を行います。暗記アプリを活用し、何万問ものデッキを組むプレイヤーも少なくありません。

しかし僕は、読み込みが実力をつける近道であることを知りながら、それをどうしても続けられませんでした。普段仲間たちと集まってやるクイズと異なり、地道な修行にも見える作業が楽しく感じられなかったのです。自分より後からクイズを始めた同期や後輩が問題集の読み込みを始めると、僕は彼らにどんどん追い抜かされていきました。

僕は、「僕なりのクイズ」を

その代わり、僕は自分の好きなものや得意なことに関するインプットやアウトプットを欠かしませんでした。

大学で学んでいる考古学、好きな小説、最近インターネットで見たもの……。仲間内でクイズの企画を開くときは、できる限りクイズ以外の場で得た「生きた知識」を元にした問題をたくさん作りました。

とはいえ、僕が好きで作る問題は独特であるがゆえにクイズ大会で出会う機会は少なく、思うように結果は残せませんでした。

そんななか迎えた2022年の暮れ、EQIDEN2023の出場に向けて、メンバーの選考会がありました。僕は、やはり中くらいの成績でメンバー入りを果たします。

その後、僕は最終走者である10区を任されることになりました。試合終盤では参加チーム数が確実に少なくなるため、手堅く問題を取れるメンバーが重要になるという理由での起用でした。

「これは僕の問題だ」

そして迎えた大会本番。他のチームが順調に問題を取るなか、東北大学も1区の直路を皮切りに他チームへ食らいつき、着実に正解を重ねます。

そして、9区の先輩が正解し、いよいよ僕の10区までたすきが繋がりました

この時点で、10区にたどり着いているチームは東北大学のみ。誤答の少ない試合運びでデッドヒートを抜け出し、チームにいい流れができていました。僕も「いつも通りにやれば、きっと勝てる!」という手応えがありました。

▲僕が2問正解すれば、東北大の優勝

ボタンについてほどなくして、その問題は飛んできました。

「問題。奈良県の唐古からこかぎ遺跡/や」

すかさずボタンをけました。

これは僕の問題だ

答えを頭の中で考える前にそんな思考がひらめいたのです。

僕の大学での専攻は考古学。唐古・鍵遺跡のことも、講義や本で見たことがあります。シンキングタイムの数秒間、さまざまなワードが頭の中を駆けめぐりました。唐古・鍵遺跡からは楼閣の描かれた土器片が出土したこと、少年時代からこの遺跡に通っていた早逝の考古学者・森本六爾ろくじのこと……

しかし、EQIDENの傾向を考えれば中学・高校の日本史レベルの知識が問われているはず。唐古・鍵遺跡が弥生時代の遺跡であることも踏まえると、ここで訊かれているのは……

環濠集落

正解音が鳴りました。

思わずガッツポーズをしました。チームメンバーも大喜びです。しかし、僕が担う10区の正解ノルマは2問。これで終わりではありません。後ろにいる仲間たちとも、「冷静にいこう」と確認し合います。

問題。

気持ちを落ち着けて、次の問題に意識を集中させます。

「小さな居酒屋が軒を連ねる『新宿ゴールデン街』でも知られる、」

「新宿ゴールデン街」。すぐに、それが位置する東京の地名が問われているとわかりました。

僕は、東京の在住経験もなければ、その土地勘もほとんどありません。しかし、新宿の近くで居酒屋などがある場所、つまり繁華街で、ひとつ心当たりが浮かびました。

思い当たったのは「裏世界ピクニック」シリーズ(作家・宮澤伊織によるSFホラーシリーズ)。僕がSFジャンルの本を本格的に読むきっかけを作った作品です。

その中で、主人公たちが歌舞伎町へ遊びに行く話があるのです。確か歌舞伎町が新宿にあるということも書かれていたはず。

考えている間、問題文がさらに読み進められます。

「……新宿駅近くにある/日本」

僕は、思い切ってボタンを押しました。

歌舞伎町!

一瞬の間の後で、正解音が鳴り響きました。僕は後ろにいた仲間たちと肩を組み、喜びを爆発させました。

ついに東北大学が、EQIDEN初優勝を果たした瞬間でした。

僕は、「僕のクイズ」を

メンバーがそれぞれの良さを発揮しながらたすきを繋いでくれたことや、10区に僕を配置したチームの采配もあり、僕はゴールテープを切ることができました。メンバーには感謝しかありません。

そして、このとき僕が取った2問は、僕が毎日の勉強趣味の読書で得た知識から正解できた問題だったことも印象深いです。

トッププレイヤーは、日々積み重ねた対策と練習に裏付けられた実力で結果を残しています。対して僕は、そのようなクイズの対策が続けられなかったため、なかなか大会の壇上で活躍できる機会がありませんでした。

しかしあのとき、あの2問だけは、壇上の誰よりも早く僕がボタンを点けられたのです。そして、僕の「生きた知識」に基づく正解が、チームを優勝に導いたのです。

▲僕の正解が、大会のウィニングアンサーになった

クイズの勝負では、傾向と対策で培った知識だけでなく、経験として体が覚えている「生きた知識」も大きな武器になります。僕自身もそれを実感し、改めてクイズの懐の広さに思いを馳せる、思い出深い経験でした。


問題文を聞きながら、ボタンを押した後で答えを考えながら、そして正解した後で、「そういえばこれ、〇〇で見たことがあったなあ」と思えたら、それはとても楽しい経験のはず。その〇〇の中に、このコラムをはじめQuizKnockの記事が入ってくれたら、僕にとって何よりの喜びです。

「思い出のクイズ」のバックナンバーはこちらから。

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この記事を書いた人

東北大学大学院文学研究科・修士1年の楠です。 サークルでクイズをやったり、小説を書いたりしています。専門は考古学(主に平安時代の土師器)で、長期休み中は発掘調査であちこちに行っています。 「日常がクイズになり、クイズが日常になる」記事を書けるよう精進します。ご期待下さい!

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