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はじめまして。寺内一記です。QuizKnockでは主に動画の企画作成やクイズの作問を担当しています。

私は高校時代に競技クイズの世界を知り、TQC(東京大学クイズ研究会)に入るために東京大学に進学しました。

私の大学生活は常に競技クイズとともにありました。その最後を飾った、一生忘れることのない「思い出のクイズ」について語ります。


今年(2021年)3月20日、abc the19thが開催された。

abcは「新世代による基本問題実力No.1決定戦」というコンセプトのもと、大学4年生以下を対象に開催される競技クイズの大会である。

4年前に同郷の先輩が優勝する姿を間近で見て大きな衝撃を受け、自分もこの舞台で活躍することを夢見ていた。

昨年は、優勝こそできなかったものの決勝まで進むことができた。最後の参加となる今年こそは、なんとしてもその先の世界が見たいという思いで会場に入った。

大会は1Rの筆記クイズに始まり、ラウンドを経るごとに徐々に人数が絞られていく。順調に勝ち進んだ私は、同期の2人のセコンドを引きつれて、決勝の舞台に再びたどり着いた。

決勝のルールは「7つのセットからなる早押しクイズを3人で行い、先に3セットを制した者が優勝」というもの。

第2セットを落とすも、第1・第3セットを獲得した私はいち早く王手をかけた。迎えた第4セット、ここで優勝を決めるつもりで臨んだ。

第4セットのルールは7○4×(7回正解で勝利、4回誤答で失格)。相手がセット獲得にリーチをかけ、私も誤答を挟みつつ何とか追いつく。スコアは自分が6○2×、相手が6○3×。こちらは誤答にまだ余裕がある。

次の問題は確証がなくても押しに行こう――。

自分の持てる集中力の全てを振り絞り、次の問題に耳を傾ける。

「問題。力学で、/」

手元のランプが点滅し、自分が押したことに気づく。立ち上がってマイクに手を伸ばす。

答えにたどり着くにはヒントが少なすぎる。この状況でなければ後悔する押しだったと思う。

ただ、そのときは何の不安もなかった。私は迷わず答えを発した。

「剛体!」

会場に鳴り響く正解音。次の瞬間私は喜びのあまり飛び跳ねながら仲間と抱き合っていた。

勝った……。勝った!!

優勝の瞬間がネット配信されていたこともあり、大会後には多くの方から「おめでとう」の声をいただいた。その際、クイズプレイヤーでない方からは、「なんで『力学で、』だけでわかったの?」と尋ねられてしまう。

もちろん答えがわかったわけではない。これまでの経験から答えになる確率の高そうなものを選んで言ってみたら当たった、というのが真実だ。

対戦相手も同じところで押せば正解になっていたかもしれない。ただ、あの場面で賭けに出ることができたのは、誤答の余裕があった私の方だった。


昨年のabc the18th。決勝で、お互いリーチをかけた大一番だった。

「問題。単に『楽』/」

答えはすぐに浮かんだが、私のランプは点いていなかった。この人が間違えるわけない……。

「千秋楽」

ほどなくして正解音が聞こえ、私は負けた。

今度は自分がウィニングアンサーを発することができた。今までの人生でこんなに嬉しかった経験はない。大会に関わってくださった全ての方に感謝を。

競技クイズにはたくさんの魅力があります。出題する・解答するというクイズの循環自体ももちろん楽しいのですが、私はそれに付随した「大会でのヒリヒリとした緊張感」や「会場に響く正解音」がたまらなく好きです。

競技クイズの魅力は、それに関わる人の数だけあると思います。プレイヤー・観戦者を問わず、競技クイズを愛する人がよりいっそう増えると嬉しいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。皆さんが競技クイズの内側を少しでも感じてくださったなら、これに勝る喜びはありません。


前回大会・abc the18th優勝者の記事はこちら

過去の「思い出のクイズ」はこちら

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この記事を書いた人

QuizKnock編集部

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