こんにちは、奈子です!
皆さんは、合唱コンクールの「Nコン」という大会をご存じですか? 「なんか聞いたことあるけど……」という方がほとんどだと思います。
そこで今回は、元合唱部の私がNコンの魅力を徹底解説します! 基本情報から今年の課題曲の解説まで、盛りだくさんの内容になっていますので、最後までお楽しみください!
「Nコン」ってなに?
「Nコン」とは、正式名称をNHK全国学校音楽コンクールという、日本最大規模の合唱コンクールです。1932年に始まり、今年(2023年)でなんと90回目を迎えます。Nコンでは、例年7月から9月にかけて、主に都道府県単位で行われる地区コンクールや、地方ごとで行われるブロックコンクールが行われます。これらを勝ち抜いた猛者たちが集まる全国コンクールは東京のNHKホールで開催され、その模様はEテレで生中継されます。
Nコンには小学校、中学校、高等学校の3つの部があり、それぞれ課題曲と自由曲を披露します。その中でも、中学校の部の課題曲は、毎年著名なアーティストが作詞・作曲を担当しています。アンジェラ・アキさんの『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』や、いきものがかりの『YELL』などのヒット曲も、実はNコンのために書き下ろされて生まれたのです。
「合唱コンクール」と聞けば、学校の行事として経験したことがある人も多いかもしれません。ただし、学校の合唱コンとNコンとでは、明らかに違う点が2つあります。1つ目は、審査の細かさ。審査員は楽譜を見ながら、音の長さや強弱、全体のバランスなどを徹底的に細かく審査しています。2つ目は、参加者の熱量。課題曲の楽譜を受け取った5月ごろから、出場者はよりよい演奏をするために真剣に曲と向き合い、夏の地区コンクールに挑んでいるのです。
▲舞台上で歌えるのは1団体あたり30人まで。部内で熾烈な選考が行われることも
経験者が語る! Nコンの魅力3選
Nコンとはどんな大会か、おわかりいただけたでしょうか? ここからは、私が考えるNコンの魅力を3つお伝えします。
魅力その1:課題曲の表現
課題曲は、すべての出場校が同じ曲を演奏することになります。だからこそ、各校が楽譜に書かれていない表現に力を入れて演奏しています。強弱のつけ方やリズムの取り方、表情に至るまで、演奏する全員で作り上げています。曲の解釈は学校によって異なるため、同じ曲でも曲の雰囲気や表現方法が全く違うのが、課題曲演奏の大きな魅力です。
私がNコンに向けて練習していた時は、必ず部員全員で表現を話し合う時間がありました。全員で歌詞を読み合わせ、曲の解釈をし、それに合わせた表現を作り上げる過程は、大変さこそあるもののとても好きな時間でした。完成した曲を舞台で披露した時の達成感や快感は、今でも忘れられません。
▲大会が始まる頃の楽譜は、書き込みで真っ黒に
魅力その2:バラエティー豊かな自由曲
自由曲はその名の通り、各校が自由に選曲することができます。そこにも、各校の個性が現れます。自由曲に選ばれる曲は、王道の合唱曲はもちろん、ラテン語の宗教曲や日本の方言を使ったものまで、とにかくバラエティーに富んでいます。中にはアカペラ演奏や打楽器を用いたものまで、本当に自由度が高いです。
ちなみに、私が一番びっくりしたのは、ヴァイオリンが出てきたときです。それまで小太鼓やトライアングルを使った演奏は見たことがあったのですが、ヴァイオリンを使っているのは初めてで、度肝を抜かれました。
▲ヴァイオリンが入ることで爽やかに
魅力その3:全国大会で行う感動の全員合唱
全国大会のフィナーレは、課題曲の全員合唱で締めくくられます。演奏が始まると、会場は感動的な雰囲気に包みこまれます。審査結果にうれし泣きする人や悔しさをにじませる人など、それぞれの思いが込められた合唱は、まさに圧巻です。
▲会場が一体となる様子は、涙なしでは見られない
今年の課題曲『Chessboard』の見どころ
さてここからは、今年のNコンをより楽しめるよう、Official髭男dismの藤原聡さんが作詞・作曲を手がけた中学校の部の課題曲『Chessboard』の魅力を語ります。合唱曲はこちらから聴くことができます!
▲ちなみに原曲はこちらから。合唱と聴き比べてみると、また違う面白さに気づけます
見どころその1:人生をチェスボードにたとえた歌詞
この曲は、人生をチェスボードにたとえ、人生の難しさ、そして美しさを歌っています。その世界観は、曲中のこの歌詞によく表れています。
そしてチェスボードみたいなこの世界でいつか あなたの事を見失う日が来ても 果てないこの盤上でまた出会えるかな? その答えが待つ日まで 知らないままでただ息をする
何もないまっさらな世界で、自分の歩む道を決めて進んでいく決意をどのように表現するのか、必見です。
▲進む道を決めるのは、自分自身だ
見どころその2:1オクターブの音飛び
この曲のソプラノパートは、1曲を通して何度も1オクターブの音飛びが登場します。曲を聞くと簡単そうに歌っていますが、実はこれがとても難しい。下の音域から上の音域に変わるときに発声が変わらないように、そしてしゃくらないようにするのは至難の業です(実際に歌ってみると、難しさが感じられると思います)。
この曲を聴く際は、ぜひ音飛びにも注目してみてくださいね。
見どころその3:何度も訪れる転調
この曲の最大の特徴は、何度も転調することです。その数、なんと5回。転調することによって、曲のイメージがガラッと変わるため、曲の表現も大きく変わります。そして、ドラマチックでダイナミックな演奏になっていくのです。
それぞれのパートでどのような表現をするのか、転調することで曲にどんなドラマが生まれるのか。各校の違いにも注目しながら聴いてみるのがオススメです。
見どころその4:途切れないロングトーン
この曲では、随所にロングトーンが登場します。ロングトーンとは長く声を出し続けるテクニックのことで、曲の流れや雰囲気を作り出すカギとなっています。 例えば、冒頭のテノールパートは、なんと8小節、時間にして約23秒もの間音を伸ばしています。これは私の考えですが、「ロングトーンがうまい=曲の世界観を作るのがうまい」と思います。
曲の途中には、一息で歌うのはどうしても難しい箇所もあります。その場合は、同じパートを歌う人でブレスの位置をズラし、パート全体で聞いた時にロングトーンが途切れないようにしているのです。ロングトーンの響きや流れを意識して聞いてみると、自然に曲の中に入り込むことができますよ。
▲涼しげに歌っているが、実際は苦しんでいるかも?via Wikimedia CommonsIgnat Gorazd from Tokyo, Japan, CC BY-SA 2.0(画像を加工しています)
最後までお読みいただきありがとうございました!
今年のNコン全国大会は、10月7日(土)に高等学校の部、10月8日(日)に小学校の部、10月9日(月・祝)に中学校の部が開催され、いずれもEテレで生中継される予定です。
この記事を読んで少しでも合唱に興味を持った方は、ぜひご覧ください!
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