毎年、秋になると村上春樹氏の話題がニュースを賑わせますよね。 「今年こそノーベル文学賞!」という文字があちらこちらで踊り、ご本人とは関係のないところで日本の風物詩になりかけている現状。そしてその現状に対して様々な意見が飛び交うのが恒例です。 ところで、村上作品を読んだことのある方って、どれくらいいるんでしょうか? いや、結構いそうですよね。 でも。 その中で、この作品を読んだことのある方は、そして頭からお尻までカッチリ読んだ方は、果たしているのでしょうか……? 今回僕が紹介したいのは、村上春樹著・友沢ミミヨ画『またたび浴びたタマ』です。
小説以外にも多作で知られる村上氏。紀行文、ノンフィクション、絵本、対談、かるた本なんかも出しています。 (個人的には『約束された場所で―underground2』が好きで、ぜひ森達也監督『A』『A2』と一緒に鑑賞していただきたいのですが、今回は置いておいて。) その全てを読んだわけではないのですが、『またたび浴びたタマ』はそれらの作品群の中でも異彩を放つ一作である、と言い切れます。 この本、「回文」を扱った本なんです。 この本では、あいうえお順に44個の回文が紹介されています。もちろん全て村上氏の自作。しかも、それに小エッセイが付いています。 お気づきの方も多いでしょうが、タイトルも「またたびあびたたま」、逆から読んでも同じ文=「回文」になっています。 この本のそもそものコンセプトは、「2000年のお正月には仕事をするまい」と決めていた氏が、手持ちぶさたに耐えられずに作り続けた回文を載せる、というもの。 「2000年のお正月にそれ以外に何をしたのか、今となってはぜんぜん思い出せない。」 とあとがきに書かれているように、精魂を傾けた珠玉の作品群となっております。 ではでは、その内容は……? 内容&クイズに進む(1/2)。