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こんにちは、波戸なおです。

みなさんは現代短歌に触れたことはあるでしょうか。

私は中学時代に書籍『短歌ください』に触れたことをきっかけに現代短歌へ関心を持ち、オンライン歌会サイト「うたの日」への投稿などを通じて親しむようになりました。

短歌ください:KADOKAWAの雑誌『ダ・ヴィンチ』内の連載。読者が投稿した短歌から、歌人・穂村弘が傑作を選んで講評するというもの。書籍化もされており、既刊5巻と文庫版が発売中。

近年は、著名な歌人の作品が国語の教科書に載ることも増えてきました。俵万智の歌集『サラダ記念日』の名前はほとんどの人が耳にしたことがあるでしょう。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

俵万智『サラダ記念日』(河出書房新社)


今、とにかく短歌がアツい!

ここからは常体でお届けする。

今、とにかく現代短歌がアツい。アツいのだ。

5・7・5・7・7の31文字で完結する短歌という短い文学は、SNSとの相性が抜群だ。X上で「万バズ」を見せる歌人も増えてきた。

今回はぜひ、現代短歌にあまり親しみの無い方にもその魅力を知ってもらえるよう、QuizKnockらしく「知識で読み解く」というアプローチで短歌の世界をのぞいてみようと思う。

知識で読む「バズ短歌」

岡本真帆は1989年生まれの歌人だ。以下の一首が特に有名である。

ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし

岡本真帆『水上バス浅草行き』(ナナロク社)

Xで目にしたことがある人もいるのではないだろうか。
「傘もこんなにたくさんあるし」の部分を自分なりの「ずぼら」エピソードに改変し、改作を投稿するムーブメントも生まれた。SNS時代において、多くの人が短歌を身近なものとして捉えるきっかけとなった歌人の一人だ。

そして、今回の記事でクローズアップする短歌がこちら。

南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない

岡本真帆『水上バス浅草行き』(ナナロク社)

「ひとりにしない」というメッセージを受け取る「きみ」がどのような存在なのか、この歌では明らかにされない。しかし、これを読んだ多くの人はある「違和感」を覚えたのではないだろうか。「きみとはいったい何者なのか……?

▼考えてみよう

南極を探検する、宇宙に行く、そして渋谷駅前で主の帰りを待つ……。そう、この歌に詠まれている「きみ」はなのだ。

南極の「きみ」

まずは「南極に」の部分から見ていこう。

南極に行った犬として日本で有名なのは、樺太犬の「タロ」と「ジロ」。

1958年、南極に滞在していた日本の観測隊は、悪天候などの不運に見舞われた結果、15頭の犬たちを現地に置き去りにしたまま帰国することになってしまった。犬たちの生存は絶望的だと思われていたが、なんと約1年後、奇跡的にタロとジロの2頭が生存しているのが発見されたのだ。

厳しい環境の中で生き抜いたタロとジロの物語は、のちに映画『南極物語』の題材にもなった。

宇宙の「きみ」

地球の周回軌道に初めて到達した生き物は、実は人間ではなく犬だということをご存じだろうか。

1957年、「ライカ」という名の一匹の犬が、ソ連の開発したロケット・スプートニク2号に乗って宇宙へと旅立った。しかし、ロケットには地球に帰るためのパラシュートなどが整備されておらず、ライカの生還が不可能であることは暗黙の了解だった。

初めて宇宙に行った犬は、その記憶を地球に持ち帰ることなく、遠い空の上で亡くなった。

渋谷駅前の「きみ」

日本で一番有名な犬といえば、何と言っても忠犬ハチ公だろう。渋谷駅前には彼の銅像が建っていて、待ち合わせスポットとしても有名だ。

ハチは、東京帝国大学(現在の東京大学)の教授だった飼い主を毎日渋谷駅まで迎えに行っていたのだが、ある日、教授は大学で倒れて亡くなってしまった。教授の死の後も、ハチは毎日駅にたたずんで帰らない主を待ち続け、その姿は人々の感動を呼んだ。

ハチ公の物語は語り継がれ、今もなお多くの人に愛されている。

「きみ」たちの物語の共通点

ここまで読んでハッとした人もいるだろうか。

そう、この記事で挙げてきた「きみ」たちの共通点は、ただ犬であるということだけではない。彼らは、共に過ごした人間と離れ離れになってしまった、「ひとりにされてしまった」犬の象徴なのだ。

岡本真帆の短歌には、彼女の飼っていた愛犬がしばしばモチーフとして登場する。

とすると、「南極に〜」の歌も、かつて置き去りにされてしまった犬たちの悲しみに思いをはせ、それらをまるごと抱きしめて、「わたしはきみをひとりにしない」という約束を自分の大切な一匹の犬に誓う一首だと解釈できる。切なく、しかし力強い、どこまでもあたたかな愛の歌である。

南極に宇宙に渋谷駅前にわたしはきみをひとりにしない

岡本真帆『水上バス浅草行き』(ナナロク社)

「きみ」たちについて深く知ることで、「南極に〜」の歌の核の部分にぐっと近づくことができる。何となく一読した際の印象とはまた違った感情を抱いた人も多いのではないだろうか。

岡本真帆にはこんな作品も

ここにいるあたたかい犬 もういない犬 いないけどいつづける犬

岡本真帆『水上バス浅草行き』(ナナロク社)

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この記事を書いた人

波戸なお

早稲田大学で社会学を学んでいます。小説や短歌、絵画など、様々な芸術に触れるのが好き。推しはチェンジではなく増やす派です。私の記事を皆さんの新しい「推し」に加えていただけるよう頑張ります。

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