あれが「日本一低い」日和山。
ん??
どれが山??
ほら、あそこの白い看板に「日和山」って書いてあるでしょ。
▲柵に囲まれた部分が日和山
確かに、地面はわずかに盛り上がってますけど……
思ってた以上に、「山」感が全くない。
というか、あの山の頂上より、今いる堤防の方が高くない……?
たしかに。
今から登る山を見下ろすなんて、他じゃ経験できないですね。
じゃあ、「登頂」しに行こうか。
▲登山口
気合い入れて登るぞ〜〜〜〜
よし!!
登頂成功!!
登頂所要時間、5秒。
登山RTA優勝。
青葉山もこのくらいの低さならいいのに。
青葉山:東北大学青葉山キャンパスが位置する山。毎日きつい坂道を登り降りして通学する学生もいる。
▲山頂でひとやすみ
これ、登山の休憩時間に食べようと思って持ってきたんですけど……
お菓子の袋、山に持っていくと膨らみがちだよね。
さすがに標高3mじゃ膨らまないかと思ったら、なんか膨らんでるんだが。
ポテチにも「自分は山頂にいるんだ」という自意識が芽生えているのかも。
▲山頂からも、ふもとにいる人が余裕で見える
▲裏側(?)から見た日和山。奥に見える堤防の向こうに、今回利用したバス停がある
あ、向こうにカモメがいる。
▲カモメらしき鳥
海鳥が間近で見られる山、なかなかレア。
実はこの辺りの水辺は蒲生干潟といって、野鳥が羽を休める場所になっているんだ。
▲よく見ると、干潟にはいろんな鳥がいる
▲ここはれっきとした「鳥獣保護区」だ
山と海をどちらも楽しめて、なんだかオトク感がありますね。
▲遠くには大きな船も。繰り返すが、これは「山頂」からの風景だ
そうそう、山といえば、アレをやらなきゃね。
ヤッホ〜〜!!
…………。
響かないな。
ヤッホ〜〜〜〜〜!!
返ってこないねぇ。
やまびこ、今日はお休みかな。
そういうことじゃないと思うな。
震災を耐え抜いた、故郷のシンボル
ところで、この日和山、かつては「日本一低い山」じゃなかったんだよね。
どういうこと……?
2014年まで、国土地理院の地図に掲載されていた「日本一低い山」は、大阪市の天保山だった。
▲天保山。日和山と同じく、山頂から海が見える
天保山の標高は、約4.5m。
ということは、日和山は4.5mより高かった?
そうなんだ。かつて日和山の標高は、約6mだった。
標高が一気に3mも低くなったんですか?
そうそう。日和山の標高が変わったきっかけは、2011年の東日本大震災なんだ。
【日和山が「日本一」低い山になったワケ】
日和山が位置する仙台市の蒲生地区は、東日本大震災の際、津波や地盤沈下で大きな被害を受けました。海沿いにそびえる日和山も、津波で山体が大きく削られてしまいました。
その後、国土地理院の調査で日和山の標高が3mであることが判明しました。天保山の4.5mを下回ったことで、「日本一低い山」となったのです。
震災後、蒲生地区の風景は大きく変貌し、人が住むことも困難になりました。最寄りの小学校だった中野小学校も、2016年に閉校となってしまいます。そんな中、津波で削られながらも「残った」日和山は、地域の人々にとって思い出の地であり、故郷のシンボルなのです。
▲バスの車窓から見えた津波避難タワー。いざという時のための備えも進んでいる
▲日和山より高いこの堤防も、震災後に作られたものなのだ
▲ユーモア溢れる看板が、いたるところに設置されている
日も暮れてきたし、そろそろ帰ろうか。
登山口とは別に、下山口もしっかり設けられてる。
下山口なのに、上り階段……!?!?
登山も下山も上り階段。なんかペンローズの階段みたいだ。
▲「不可能図形」の一種、ペンローズの階段
初めての日和山登山はどうだった?
最後の最後まで笑顔になれる、素晴らしい山でしたね。
登山って疲れるアクティビティのはずだけど、今日はなんか元気になれた気がする。
仙台駅からならバスで行けるし、また登りに来たいな。
〜おわり〜