こんにちは、セチです。
本などを水に濡らして、シワシワにしてしまった経験、ありませんか?
紙を濡らしてしまうと、乾燥させてもなかなか元のようにピシッとせず、シワがついてしまいます。
このようなことはなぜ起こるのでしょうか?
紙を作るセルロースのヒドロキシ基
紙は植物繊維から作られますが、その繊維を主に構成しているのはセルロースという物質です。
セルロースは多くのグルコース(ブドウ糖)が直線状に繋がってできる高分子化合物で、ヒドロキシ基(水酸基、-OH)という水と結びつきやすい構造をたくさん持っています。
このヒドロキシ基というものが、紙を形作る上で重要な役割を果たしています。
紙ができるまで
水を含んでドロドロになった原料の繊維(パルプ)をシート状にして乾燥させる、というのが紙の大まかな製造過程です。順を追って見ていきます。
「ドロドロになる」→水を介して繊維がゆるく繋がる
まず、「水を含んでドロドロになる」というところについて。
先ほど述べたとおり、セルロースは水と結びつきやすいヒドロキシ基というものを持っています。水の分子とヒドロキシ基は水素結合と呼ばれる結合を作って繋がります。水分子どうしも水素結合を作るので、セルロースの繊維は水(分子)を介して他の繊維とゆるく繋がることになります。
こうして、繊維はドロドロの状態になります。
繊維はだいたい同じ方向に並ぶ
次に「繊維をシート状にする」というところについて。
機械で作られる紙の場合、繊維は専用の機械の網に流し込まれ、高速で移動しながらその後の処理(乾燥など)を受けます。
この過程でプレスされたり進行方向に引っ張られたりすることで、繊維はシート状になり、その大部分は進行方向と平行に並ぶことになります。
これによって作られる繊維の流れ方向のことを「紙の目」などといいます。紙の目に沿って縦に破くと紙はきれいに裂けますが、横に破くと比較的裂けにくく、裂け目も荒くなります。
「乾燥する」→水が取れて、繊維が直接繋がる
そして乾燥について。
ここまでの過程で、シート状に平行に並んだ紙の繊維の間には、水素結合で繋がった水分子が多く含まれています。
乾燥させると、ここから水分子が取れていきます。だんだんと水分子が少なくなってくると、セルロースどうしが近づきます。
セルロースのヒドロキシ基どうしも(水分子どうしと同じく)水素結合で繋がることができます。よって、水がなくなった状態では、平行に並んだセルロースのヒドロキシ基が直接水素結合を作って繋がります。
このセルロースどうしの結びつきにより紙の強度が生まれ、紙の形が出来上がります。
「紙が濡れる」→セルロースどうしの結合が取れる
紙が濡れると、この製造過程とは逆に「セルロースどうしの水素結合の間に水分子が入り込む」という現象が起こり、元々の紙に存在したセルロースどうしの結合がほどけてしまいます。
その後乾燥させても、全ての結合が元通りにはなりません。よって、紙の形が微妙に変わり、シワになってしまう、というわけです。
ちなみに、国立国会図書館は濡れた資料の乾燥方法をこちらで紹介しています。うっかり本を濡らしてしまった方は参考にしてみてください。
参考
- 日本・紙アカデミー編『紙 ―昨日・今日・明日 日本・紙アカデミー25年の軌跡』思文閣出版(2013年)
- 紙の機能研究会編『おもしろサイエンス 紙の科学』日刊工業新聞社(2011年)