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2018年リリース、乃木坂46の『シンクロニシティ』という楽曲に、次のような歌詞があります。

乃木坂46『シンクロニシティ』(作詞:秋元康)

お互いが思い合えば、世界中の人と心が共鳴して一つになる、という素敵な歌詞。いい曲ですよね。今もとても好きな曲です。

ところで、2019年度の朝ドラ『スカーレット』を機に、松下洸平さんが好きなのですが、先日松下さんの『涙の中に君がいる』という楽曲を聴いていたらこんな歌詞がありました。

2008年にリリースされた、大切な人との別れを歌った切ないラブソングです。

……さて、お気づきでしょうか。

この10年間で、歌詞の中の世界人口が10億人も増えています!!!

もしかして、世界人口の変化に合わせて、J-POPの歌詞も徐々に変化しているのでは……!?

というわけで、世界人口について歌っていると思われる楽曲を徹底調査しました!

※調査対象:歌詞検索サービス「歌ネット」に掲載されている、平成元年〜令和4年9月リリースの楽曲のうち、歌詞に「億」が含まれているもの。

結論:ちょっとずつ増えている

歌詞に「億」が含まれる楽曲のうち、筆者が「人口について歌っているだろう」と判断した楽曲は207曲。リリース年をもとに、歌詞に描かれた人口と実際の世界人口を比較したものがこちらです。

▲現実の人口と歌詞の人口の比較
ふむふむ。世界人口はどんどん増えているし、歌詞に描かれる人口も全体的に右肩上がりになっていますね!

J-POPの歌詞に描かれる人口が世界人口とともにちょっとずつ増えていることがわかった一方で、気になるポイントが3つありました。

▲気になる3つのポイント

(1)現実の数字を超えることはあまりない

全体的に実際より小さい数字になっており、歌詞が現実に追いつくのに少し時間を要している様子もうかがえます。これは、当年の世界人口の調査結果が発表される時期や、作詞からリリースまでにラグがあるなどの影響が考えられます。

いまこの瞬間の世界人口を予測して歌詞に取り入れるのは難しいですよね。

ちなみに、記事執筆時点でGoogleで「世界の人口」と検索してみると、2年前のデータを教えてくれました。もしかしたら作詞家が検索した世界人口が、ちょっと前のデータだということもあるかもしれません。

▲Google検索結果より

(2)キリのいい数字ずっと使いがち

歌詞の中には、60億人や、70億人など、1億の位を切り捨てた表記も多く見受けられました。世界人口は2011年に70億人を突破しましたが、その後も7年ほどは「60億」が多くの曲で用いられていました。

これには、音楽ならではの事情もありそうです。

たとえば、「78億」という言葉は歌に乗せたときに4音要するのに対し、「70億」は3音で表現できます。メロディとの兼ね合いから端数を切り捨てているのではないでしょうか。

▲1音に入れられる文字の数には限りがある

(3)多めに書いている曲もある

2022年10月現在、世界人口は80億人に達していませんが、すでに80億人と表現している楽曲が2021年から2022年にかけて数曲存在しました。

さらには、ダイナミックに100億人としている楽曲もいくつかあります。

▲モーニング娘。'21『信じるしか!』(作詞:つんく)

「100億」は、音数が2音で足りるため歌に乗せやすいことや、同じ曲のなかに登場する「100年の人生」など似たような別の数値とかけて表現できるため、ダイナミックに使用されることが想像できます。

ちなみに、実際に人口が100億人を突破するのは2058年と予測されています。モーニング娘。'58はこの曲を歌っているでしょうか。

世界人口で何を歌いたいのか

ところで、世界人口を歌詞に取り入れて伝えたいことは何なんでしょうか。207曲の歌詞を読み込んで、分類してみました。

▲世界人口で何を描きたいのか分類

次ページ:なぜ世界人口を歌詞に入れている? それぞれの分類を詳しく見ていこう

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この記事を書いた人

山森 彩加

東京理科大学卒業生の山森です。在学時は天文研究部でプラネタリウム解説をしていました。三鷹の国立天文台で展示解説をしたり、科学館で解説をしたりもしました。日常のなかに“楽しい”や“おもしろい”を見つけられるような何かを発信していければと思います。学士(理学)。

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