「空」は、本当に空のことなのか
では、この「空」をより概念的なものとして捉えるのはどうだろう。そもそも「空が落ちてくる」というフレーズ自体、キャロル・キング『I Feel the Earth Move』やベン・E・キング『Stand By Me』といった名だたる洋楽の歌詞で、「ありえないことが起こる」たとえとして使われてきた。『愛をとりもどせ!!』においても、何かのたとえとして受け取るのが妥当だろう。
空というのは、見上げた頭上にある世界のことである。おおむね屋外において広がる空間を指して使うが、辞書で引くと「地面の上方の空間」と出る。
となると、屋内における上方、すなわち天井もまた「空」と言えるだろう。
『北斗の拳』、そして天井。
そうだ、もう答えは出た。
パチスロ機『スマスロ北斗の拳』である。
……まだ、まだちょっとだけ待ってほしい。わかりやすく解説するから。
空を落とすのに必要なのは愛、そして……
パチスロには「天井」という概念がある。ざっくり言うと、長いゲーム(スロット1回転を1ゲームとする)数のあいだ当たりが出ない場合、一定ゲーム数が経過したら必ず当たりが出る、という設定のことだ。大人気機種『スマスロ北斗の拳』もまた、この天井を搭載している。
さらに、同機種においては、確率でその天井の基準が下がるのである。通常なら1300ゲーム程度必要なところを、300ゲーム、777ゲーム、800ゲーム到達時の抽選によりその段階で天井を前倒しで迎えることがあるのだ。
そう!!!!
つまりこのとき、空が落ちてきているのである。
この場合の「愛」とは、当然パチスロへの愛、北斗への愛のことであろう。800ゲーム回すには、最低でも1時間程度の粘りが必要だ。全然当たらない無の1時間を、天井抽選に期待しながら待ち焦がれるだけの愛。作品を愛する力、パチスロを愛する力が、アニメ主題歌の中で公式に求められていたのである。
なんという予見性、なんという完成度!!
昨年(2023年)でパチスロ初代『北斗の拳』は20周年、『北斗の拳』は40周年である。ともに迎えたアニバーサリーイヤー。作品の人気を長く支え、そして伝えてきたのはパチスロであり、『愛をとりもどせ!!』であった。これらがすべて合わさって『北斗の拳』という作品なのだ。
愛ゆえに落ちよ空、願わくば出玉となって。
そう、お金もまた、愛をつなぐには欠かせないものなのだ。
※パチンコ・パチスロは18歳になってから(高校生は不可)。パチンコ・パチスロは適度に楽しむ遊びです。のめり込みに注意しましょう。
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