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連載「伊沢拓司の低倍速プレイリスト
音楽好きの伊沢拓司が、さまざまな楽曲の「ある一部分」に着目してあれこれ言うエッセイ。倍速視聴が浸透しているいま、あえて“ゆっくり”考察と妄想を広げていきます。

クイズの魅力のひとつは「名前を知る」ことにある。

そして、名前を知ることの魅力は「解像度を上げる」ことにあるだろう。

検索したり、呼び表して人に伝えるという点では当然名前を知っていた方が便利だし、そもそも名前を知らないものについては「単一のパーツ」として認識しづらい。

砂時計のくびれた部分を「オリフィス」と呼ぶことを知らなければ、砂時計が部位に分かれるということすら思い当たらないはずだ。

オリオン座の三つ星を、それぞれ「アルニタク」「アルニラム」「ミンタカ」と答えられたなら、解像度は3倍になる。ひとくくりでなんとなく認識していたものが鮮明になるとき、世界はより面白さを増すのだ。

▲中央やや右に見える横一列の三つ星が、左から「アルニタク」「アルニラム」「ミンタカ」

オリオンの星々に限らず、広大なる夜空を楽しむならば、道標が必要である。輝く星を知ることで、もうひとつ地球儀を手に入れたような気分になれる。人生の半分は彼らと一緒に過ごすのだから、知っていればだいぶオトクである。

冬の空に一番明るく輝くシリウス、近くにはこいぬ座の白いプロキオン、そして赤々と灯るベテルギウス。こちらが眺めていても、名前を知っていても、それらがなにか変わることはないのだけれど、それでいいのだ。それがいいのだ。

▲冬の大三角

優里の歌う『ベテルギウス』は、まさにその「永遠」の象徴として星を取り上げている。大切な人と一緒に夜空を見上げながら、永く続く愛を歌う曲だ。その象徴として登場するのが、遥か遠くで果てなく輝き続けるであろうベテルギウスである。存在感を放つ赤い星は、ふたりが同じところを眺める目印としてぴったりであろう。

しかしである。この曲は、そんな夜空の幻想を無に帰すような、衝撃的な歌い出しで始まるのだ。

優里『ベテルギウス』の気になる歌い出し

空にある何かを見つめてたら
それは星だって君がおしえてくれた

優里『ベテルギウス』(作詞:優里)

ん?

星、知らんの?

クイズプレーヤーとして、数多の「自分が知らない知識」と向き合っているからして、何かを知らないことをくさしたりはしたくない。

とはいえ、これは驚きだ。この状況で「星」という概念を教わる、というのはどういうことなのか。果たして起こり得るのだろうか。

……いや、ここには必然性が必要である。星を知らない状態でこの曲が成立していたなら、もうわりと感情移入どころじゃないのだ。さすがに何かしらちゃんと理由があって、このフレーズが成立していてほしい。

この曲の感動をより鮮明なものにするなら、直感的には「変」なこの歌詞に、道理を見出すべきだろう。どうにかしてこの歌詞に目星をつけて(星だけに)、スマートな解釈を見つけていこう。

本当にいま、初めて「星」を知った説

まずはシンプルに「星について知るのが初めてだった、でもそれが自然である」パターンを考えていきたい。たとえば主人公が小さい子供なら、知らないのは当然である。一歩一歩自分のペースで学んでいってほしい。

▲こういう画像の背景がそのまま意味をなすときがくるとは

もしくは、歌い出しの段階では子供の頃の情景を回顧している……という可能性も十分にあるだろう。

ただ、いずれの場合も次のフレーズが障壁になる。

空にある何かを見つめてたら
それは星だって君がおしえてくれた
まるでそれは僕らみたいに 寄り添ってる
それを泣いたり笑ったり繋いでいく

優里『ベテルギウス』(作詞:優里)

前の一文は「教えてくれた」と過去形であり、「それは寄り添ってる」は現在形だ。となると、現在はまさにふたりでその星を見ている、という状況なのだろう。「それ」はおそらく目の前に広がる星を表すのだから、先程教わったのと同一のもの、すなわち同一の場面にいると考えるのが自然だ。「寄り添って」とか「あれは」とかなら場面転換を想定できるが、今回はそうではない。

愛を歌い合える相手から、その場で、星であることを教わる。その事実は、分を読む限りは間違いない。となると「小さい子供だった頃に教わった」説は、なかなかに成立し得ないだろう。ガッデム、擁護失敗だ。

ただ、当然まだ解釈可能性は残されている。歌詞をよく見てほしい。

教わったのは、「それは星だ」ということ。「星とは……」ではないのだ。これは大きな違いである。

つまり、星かどうか微妙にわからんものについて、「あれはAでもBでもなく星だよということを習った可能性が残るのだ。

たぶん、「何か」と星を間違えたのでは?

次ページ:星に間違えられやすいものを洗い出してみよう。だけどやっぱり……?

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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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