もらった「もの」ってなんだろうな
もらったものは そう愛を感じ
あげたものは もちろん 全力の愛です大塚愛『さくらんぼ』(作詞:愛)
「もらったものはそう」は、「もらったものは」と「そう」に分かれるな。一見すると「そう」は相槌のように思える。
その上で「愛を感じ」だ。「感じ」は自動詞だから、主語になるものが「愛を感じた」ということを示している。前の文の繋がりを考えると「もらったもの」が「愛を感じた」ということになって……となると、心を持ったものを相手からもらった、という解釈になりそうだ。
でも、そんな大切な存在を「もの」よばわりするのか?
ペットとかをもらったとしたら、そんな言い方しないよな。でも、「もの」自体が愛を感じる、っていう擬人法は、すくなくとも具体的に何をもらったか書いていない以上、使わなそうな表現だ。
となると、だ。やはり主語は「私」になるんじゃないだろうか。
「私」なら、主語の省略をすることもできるよな。前の文とのつながりさえ切ることができれば、「私が愛を感じた」ということにできそうだ。
すべてつながったな。
そう、「もらったものはそう」の「そう」は、「爽」もしくは『SAW』だ。アイスが好きなら前者、ホラー映画が好きなら後者だろう。Blu-rayかな多分。どちらも夏にはぴったりだな。
▲画像はイメージ
「もらったものはソウ」「(私は)愛を感じ」。もとの文を2つに分け、独立したものだとすれば、両方の意味が通るだろう。ひらがなにしたのは、事実を守りつつ詩全体のやわらかさを損なわない工夫だな。爽をもらっただけで全力の愛を返すなんて、まったく感心じゃないか。このあたりも加点ポイントね。夏を通してまた一回り大きくなったんだな。
それに比べてお前らは、一見して自分に理解できないものはすべて悪いと決めつけるじゃないか。考え抜くことこそ愛情だぞ? まあ、これがわかるようになるには、もうちょっと時間がかかるだろうけどなぁ。
いつかわかってくれればいいぞ
あとなぁ、この詩は深いんだよ。語らないところにいろんな深みがあるんだ。
例えば「思いがけなく歴史は さらに深いけれど」のとこ。「思いがけなく」は「思いがけず」と同義で辞書に載ってる表現だから、違和感を持ったとしてもちゃんと正しいからね。
その上で「さらに深い」って、何より更に深いんだ? 比較する表現だったら、比較対象があるはずだよな。みんな考えたか? こういうところを読み飛ばしちゃいけない。差がつくポイントですよ。
……ハイ、ヒントはその前のパート! 「共同作業 罰ゲーム」とあるな。
やっぱいいもんだよね 共同作業 罰ゲーム
思いがけなく歴史は さらに深いけれど大塚愛『さくらんぼ』(作詞:愛)
そうだ。「罰ゲームより深い歴史」、これなら意味が通るだろう。となると、共同作業は「一緒に穴を掘る」、罰ゲームは「穴を1人で埋める」あたりになるな。深さが伴う共同作業と罰ゲームは、これしかないだろう。まさに深い楽しみ方だ。
自転車での行軍も一番に歌われているくらいだから、スパルタな夏を過ごしたもんだなぁ。関心関心。みんなも夏休みくらいは、普段やらない課外活動をしないといかんぞ。
色々見てきたけど結局、表現が合ってるとか間違ってるとか、そういうのじゃないんだよ。気持ちが伝わってくるか、深いところに隠された感情を読み取れるか、そういうところなんだよ。みなさんは思いを込めましたか? それを表現できましたか?
キーンコーンカーンコーン……
おっと……じゃあはい、今日の授業はここまで!
それでは、来週の授業までに、今日学んだことを活かして自分の作品をブラッシュアップしてくること。
みんなが全力の球を投げてくれるなら、先生は受け取ります。ちゃんと。深いところに込められたものでもちゃんと見てますからね、よく練られた詩をお願いよ。
じゃあハイ、来週までに忘れず提出してね。ハイ起立!礼!
ーー次の週ーー
ガラガラッ
はい、静かに! さて、皆さんの課題ザッと見させていただきました。さすが、いい作品にしてきたな! 先生も嬉しいぞ。
いいやつはまた印刷してきたからね、はい後ろ回して。ここに載ってるのは特によくできてますね、特にこの『SMILY』『プラネタリウム』『黒毛和牛上塩タン焼680円』あたりは……
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