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こんにちは! 神話が大好きな桑名です!

突然ですが、みなさんはこちらの怪物をご存じでしょうか?

▲頭髪が蛇になっている

メドゥーサ(またはメデューサ)。

ギリシア神話に登場する「ゴルゴン三姉妹」の一人であり、無数の蛇から成る頭髪見る者を石に化す力などをもつ女の怪物です。

昨今はゲームなどにも頻繁に登場し、ある程度の知名度を有するかと思います。「ドラえもん」シリーズにも見たものを石に変えるゴルゴンの首というひみつ道具が出てきますね。

このようにメドゥーサはザ・怪物といった感じの存在なのですが、私は皆さんに伝えたい!

実は、彼女とても不憫ふびんな存在なんです!

ただの怪物のように扱われている彼女を救いたい

というわけで今回は、メドゥーサが退治された理由、そしてそのような神話が生まれた裏話などのお話をしていこうと思います。

これを見れば、皆さんも彼女を救いたいと思うはずです! ぜひ最後まで読んでいってください!

もともとメドゥーサは美しい女性だった

怪物として描かれるメドゥーサですが、もともとは普通の美しい女性であり、神殿などにも出向いていました。

そんなあるとき、メドゥーサは女神アテナの怒りを買ってしまい、上記のような怪物の姿へと変えられてしまいます。

▲『マテイのアテナ』ルーヴル美術館所蔵。知恵や戦いを司る。

しかし、実はこのときアテナを怒らせたのは完全に海の神ポセイドンが原因であり、メドゥーサはどちらかといえば被害者なのです……(ここの詳しい経緯はオウィディウスの『変身物語』という本などに書かれています)。

とはいえ、頑固者の女神アテナにそんな言い訳は通じず、怪物となったメドゥーサは姉2人と共に西の果てでひっそりと暮らすことになります。この時点ですでにかわいそうですね。

このように自分勝手な神様に周りが理不尽に振り回されてしまうのは、ギリシア神話ではよくみられる展開となっています。

英雄ペルセウスのメドゥーサ退治

メドゥーサを退治したのは英雄ペルセウスです。彼は最高神ゼウスダナエという女性の子どもとして生まれます。

その後いろいろあってペルセウスと母ダナエはとある島に流れ着き、そこで暮らすことになるのですが、その島の王様がダナエに恋をしてしまいました。

ダナエと結ばれたい王様はその息子ペルセウスを疎ましく思っていたわけですが、そんなあるとき、ペルセウスがうっかりこんな発言をします。

勇気ある俺なら、怪物ゴルゴン姉妹の首だって取って来られるぜ!

随分と自信家ですが、この発言を聞いた王様はここぞとばかりに

だったら本当に取って来い! 王様命令だ!

と、厄介払いのために本当にゴルゴンの首を取ってくるように命じました。

こうして怪物退治に出発したペルセウスは、神々の力を借りながら武器を得て、ついにゴルゴン三姉妹の居場所を突き止めます。

そうしてゴルゴン三姉妹の住処に侵入した彼は、睡眠中の彼女たちに近づき、三姉妹のうちでただひとり不死身ではなかったメドゥーサの首を切り落としました。

▲『ペルセウス像』ロッジア・ディ・ランツィ蔵。手に持っているのがメドゥーサの首

こうして晴れてペルセウスの目的は達成され、メドゥーサの首から生まれ落ちた有翼の馬・ペガサスと共に帰路に着きましたとさ。(首からペガサスが生まれた理由はこちらから)

めでたしめでたし。

さて、これがメドゥーサが退治されるまでのストーリーですが……ひどすぎる!!!

確かに彼女は見た者を石にするという危険な力を持ってはいますが、そのような怪物になったのは彼女に非があったわけではありません

それなのにペルセウスの力を示すための道具として扱われ、「なんか1人だけ不死身じゃなかった」という理由で突然寝込みを襲われた挙句、死後もその首を盾に付けられ武器とされる始末……。

▲盾に付けられた首。なんとも悲しそう……

なんという仕打ちでしょう。なぜ彼女はこんな目に遭わなければならなかったのでしょうか?

退治されたのは後付け?

その理由について、ある説が存在します。それは、元々「メドゥーサの首」が存在し、神話はその辻褄合わせである、というものです。

「ゴルゴネイオンは儀式上の首だけの仮面としての存在であり、それを説明するために神話が後に作られた」(Harrison 1975) と述べたのは、古代ギリシア文化の研究で知られるジェーン・エレン・ハリソンです。

この「ゴルゴネイオン」は「メドゥーサの首」のことであり、魔除けの効果をもつものとして、さまざまなものに描かれていました。役割的には日本の鬼瓦のようなものです。

▲木の扉に描かれたゴルゴネイオン

首の姿として描かれていた恐ろしい女。そんな姿が描かれると、人々の間では

なんでこの首が魔除けの効果を持つんだ?

この女は何者なんだ?

などの疑問が生まれると思われます。そんな疑問を解消するために生まれたのが以上のような神話である、というわけです。つまり、「首しかない怪物」というゴールが先にあって、そこから逆算されて退治される経緯が生まれた、と……。

彼女が生まれた頃には、既に首だけになる未来が確定していたわけなんですね。なんと不憫ふびんな……。

まとめ

辻褄合わせで退治された可哀想な怪物、メドゥーサについての話をしてきました。救いたくなりましたでしょうか? これからゲームなどで見かけたときはつい優しくしてしまいそうですね。

メドゥーサ関連の伝承としては、彼女が怪物になった経緯の異説や、首だけの姿になった後の活躍など他にも数多く残されていますが、これらの話はまた別の機会に……。

それでは、最後に1問クイズです!

参考文献

  • Jane Ellen Harrison. (1975). Prolegomena to the Study of Greek Religion. A New York Times Company.

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この記事を書いた人

桑名 良治

筑波大学2年の桑名です。神話や日本語、群雄割拠の時代などが好きです。日本語検定1級。

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