QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン
PR
株式会社JERA

ボツその2 合唱曲『COSMOS』

夏の草原に 銀河は高く歌う
胸に手をあてて 風を感じる
君の温もりは 宇宙が燃えていた
遠い時代のなごり 君は宇宙

合唱曲『COSMOS』(作詞:ミマス)

多くの人が知っている曲を選びたい……と思ってネタを探していたときにたどり着いたのが「ジャンル:合唱曲」だ。

多くの人が歌える平易な内容ゆえ、あれこれ言える曲自体があんまりなかったのだが、その中にあって輝いて見えたのが『COSMOS』である。

▲壮大な宇宙を感じさせる1曲

というのもこの曲、かなり知的なのだ。

天文イベントなどで歌を披露するユニット・Aquamarine(アクアマリン)のミマス氏が手掛けた……というだけでも知識的背景がうかがえるだろう。そして事実、宇宙にまつわる様々な知識がベースとなっていることが歌詞から読み取れる。

中でもその傾向が顕著なのが、この一節だ。

宇宙や地学への興味がある人なら、一目でビビッとくるだろう。私も流れ星のごとく「見つけた!!!」と思った。

そう、この部分は「宇宙の温度≒3K」を歌ったもの……っぽいのだ。

 

説明しよう。現在の宇宙は、おおよそ3K(ケルビン)という温度で満ちている。そしてこの温度は、宇宙が超高温の「火の玉」状態から急速に膨張して冷えた結果であり、宇宙誕生・ビッグバンの名残なのだ。

1965年に3Kの宇宙マイクロ波背景放射が観測されると、現在主流であるビッグバン理論は俄然支持されるようになった。それだけ、この3Kという温度は大切なのだ。

▲WMAPにより観測された宇宙マイクロ波背景放射。この温度のばらつきが宇宙の構造形成の種となった密度のゆらぎに対応しているとされる

『COSMOS』のこの部分について、明確な答え合わせが行われているわけではない。しかし、内容的にはまず間違いなく正解であろう。

3Kは摂氏温度に直すと約-270℃……ぬくもりなど感じられぬ超低温だが、まだビッグバンの熱が残っている、というロマン自体が温かみを持っていると言えよう。

 

やったやった! 知識と絡めて記事が書けそうなポイントを見つけたぞ……とは思ったものの。

このネタ、これ以上広がらなさそうなのだ。あまりにもその通り過ぎる。歌詞の完成度が高すぎるため、ツッコミも入らず、ボケの余地もないのだ。

面白い歌詞でも、それだけではネタにならない。みんなの知っている合唱曲が、とても考えて作られていた、という再周知のみを残して、私のアイディアはお星さまになった

ボツその3 ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』

言い切れることはない
いい切れたことは自分に言い聞かせてること
また笑い転げられるのさ あばらの骨が折れるまで

ずっと真夜中でいいのに。『あいつら全員同窓会』(作詞:ACAね)

連載初期から、ずっと真夜中でいいのに。、通称ずとまよの曲にはなにかしらチャンスがありそうだと思っていた。(表記がややこしい)

難解かつ遊び心に満ちた歌詞は、一聴では意味が取れずとも歌詞カードを見ると多くの発見がある。この連載にうってつけだったのだ。

そしていざ各曲を見てみると、出るわ出るわ気になるフレーズが……正直渋滞しすぎて、どれを扱っても「もっとこれがあるだろ!」と言われそうですらあった。揚げ足どころか、春麗ぐらい両足ジャンプしているのである。

そういったわけで、どれを記事にするか長らく迷っていたのだが、この一節、いや一折にはツッコミ心を抑えきれなかった。

こんなことあるんだろうか。笑うだけで骨が折れる、というのは相当難しそうに思える。こんなに面白おかしく生きているのに、私は人生でそこまで笑い転げたことがない。

▲そんなことが起こりうるのだろうか

一方で、「全くそんなこと起こらない」とも言い切れなさそうだ。だいぶカルシウムが足りてなかったら起こってしまうのでは……?

ちゃんとした症例を調べてみたいが、整形外科などにこれを問い合わせるのもちょっと恥ずかしいな、などと考えながら軽くネット検索をかけてみたところ……

なんと、事例を発見した。

発見場所は、芸能ニュース。有名人が肋骨爆笑骨折の憂き目にあっていたとは……!

事件が起こったのは2010年頃、被害者は歌手の島谷ひとみさん(『亜麻色の髪の乙女』で有名)。「笑いすぎて肋骨にヒビ!?」……と題された記事には、仲間とのホームパーティー中に笑い転げたところ、肋骨が痛みだしたことが記されている。

だがこれは、ぬか喜びだった。いやすみません、骨折してほしいとかじゃないんですが、記事のために。

島谷さんに下された診断結果は、筋肉の剥離。「笑いすぎて骨折したと思ったら筋肉系のトラブルだった」ということだったのである。どういうオチの記事なんだよ!

結局笑いすぎて肋骨が折れた症例は、私の探索範囲では見つけ出せなかった。……いやいや、骨が折れてなかったのは何よりなのだ。何よりなのだが……これぞ骨折り損のくたびれ儲け。科学的な立証もできず、空振り感だけを残したまま骨を埋める結果となった。

ぜひ、笑いすぎてアバラが折れた方がいらっしゃったらご一報願いたい。できれば、ホームパーティー以外の場所きっかけで。レントゲン写真も念のためご同封ください。

 

……と、いった感じで、本ネタ以上のペースでボツネタは生まれ続けている。楽しさと正しさの両立は難しく、ボツもたくさん出るが、だからこそQuizKnockというメディアで書くことには大きな意義と面白さがあるのだ。

また明日から頭を悩ませる日々が始まる。ひらめく喜び、みなさんの感想をいただける喜びが原動力だ。ゆえに、もし来週がまたボツネタ集であっても、原動力たるみなさんには知らん顔で感想を寄せていただきたい。よろしく頼む。


伊沢拓司の低倍速プレイリスト」は伊沢に余程のことがない限り毎週木曜日に公開します。Twitterのハッシュタグ「#伊沢拓司の低倍速プレイリスト」で感想をお寄せください。次回もお楽しみに。

【前回はこちら】

【あわせて読みたい】

2
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

伊沢拓司の記事一覧へ