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味の素㈱×QuizKnock 高校生・大学生向けクイズ大会開催決定!
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連載「伊沢拓司の低倍速プレイリスト 音楽好きの伊沢拓司が、さまざまな楽曲の「ある一部分」に着目してあれこれ言うエッセイ。倍速視聴が浸透しているいま、あえて“ゆっくり”考察と妄想を広げていきます。

歌詞の連載をやっているくらいなので、私にも作詞の経験はある。

つい先日リリースされたHey! Say! JUMPのアルバム曲『please, 'Q'uickly!』はもうお聴きいただいただろうか。クイズをテーマにした楽曲であり、私もQuizKnockの一員として作詞に携わった。商業作詞デビュー作、ということになる。

が、何も作詞はこれが最初ではなく、実は高校時代からちょこちょことやってみたりはしていた。高校の運動会では組の応援歌を作詞し、学内で賞をもらったこともある。大学ではギターサークルにいたので、作詞作曲にもチャレンジした。

そうした経験は、バラエティ番組や動画内で発表したいくつかのトンチキな歌にも活かされて……いるような、いないような。少なくとも「発表する勇気、もしくは無謀さ」の点においては意味のある経験だっただろう。

▲TBS『アイ・アム・冒険少年』ではあばれる君のためにオリジナルソングを作るなど

芸術性を保ちながら相手に伝わる……というライン上に言葉を並べるのは大変に難しく、しかもそれを歌の節に乗せるのだからつくづく作詞家という仕事はクリエイティブである。これが自分で書くと説明的な詩になりがちで、どうにも美しくない。

だから、突拍子もないけどきれいだったり、意味は伝わらなくとも気持ちよかったりするフレーズが好きだ。そうした言葉たちについて、どのように生まれ何を意味するのかを妄想すること、また楽しからずや。

何食ったら思いつくんだという、でもなんとなく伝わってしまう、不思議な言葉たち。私のメモ帳にたくさん書き留められているそんなフレーズの、もし大将を決めるのであれば、きっとそれは「強がりの汽車」になるだろう。連載開始前、構想段階から存在している、つまりは長い間頭を悩ませ続けている、ボス中のボスだ。

30年以上愛される不朽の名曲

その一節は、米米CLUBの大ヒット曲『君がいるだけで』の中にある。平成初期を代表するヒットソングにして、王道のラブソング。伸びやかに歌われる愛の中に、突如そいつは現れる。

ありがちな罠に つい引き込まれ 思いもよらない くやしい涙よ
自分の弱さも 知らないくせに 強がりの汽車を 走らせていた

米米CLUB『君がいるだけで』(作詞:米米CLUB)

なんだこれは。圧倒的初見。「強がりの汽車を走らせる」、あまりにも新鮮で、掴みどころがない言葉だ。意味はある程度取れるが、それは「強がり」と入っているからであって、汽車である必然性がまるでわからないのだ。

難敵中の難敵。周りの文脈も含めて、これほどまでに解釈の難しい歌詞はそうないだろう。

実はこの「『強がりの汽車』なんなんだ問題」は、わりと長きにわたり多くの人を悩ませてきた。Twitter(現X)で検索すると、様々に問いへと立ち向かい、早々に諦め、ネタとして楽しんできた人々の様子を見ることが出来るだろう。

▲想像をかきたてる「強がりの汽車」

結局のところ、「強がりの汽車」問題の難しさは「ヒントがない」ことに尽きる。あまりにも唐突にこのフレーズが登場し、前後にヒントがないことから、どうにも掴み所がないのだ。多くの人が苦しんだのもそれゆえだろう。

そのうえで歌詞の文脈を整理するなら「いろいろ大変なことはあったけど、真実の愛にたどり着いた」みたいな感じになる。元々は米米CLUBのメンバー同士が結婚するにあたって作られた曲であり、ハッピーエンドが前提だ。

たとえば 君がいるだけで 心が強くなれること
何より大切なものを 気付かせてくれたね

米米CLUB『君がいるだけで』(作詞:米米CLUB)

そうした背景を考えると、このフレーズもおそらく具体的なエピソードが下敷きにあるのだろう。こちらがその詳細を知る由もなく、ゆえに一層難易度は上がっている。

しいて言えることがあるなら、このフレーズが「比喩である」ということだろう。さすがに汽車そのものを走らせた、なんて鉄道会社バリの大事業をしているわけではない。具体的なエピソードを汽車にたとえた比喩なのだ。おそらくは、意図的に言葉足らずな。

▲結婚式のめでたさはどこへ?

となると、やるべきことは具体化だ。行間を埋め、説明を補足することである。歌詞の外側から、知識でもって情報を足してあげる必要があるはずだ。

「強がり」とはどんな強がりか、「汽車」はどんな汽車なのか、そもそもなぜ「汽車」というたとえを用いたのか。あくまで具体的に推論していこう。

なぜ「強がり」が汽車につくのか

次ページ:「強がりの汽車」考察が向かう先は……? 「君」からだんだん遠ざかっていく考察

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この記事を書いた人

伊沢拓司

QuizKnockCEO、発起人/東大経済学部卒、大学院中退。「クイズで知った面白い事」「クイズで出会った面白い人」をもっと広げたい! と思いスタートしました。高校生クイズ2連覇という肩書で、有難いことにテレビ等への出演機会を頂いてます。記事は「丁寧でカルトだが親しめる」が目標です。

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