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伊沢拓司、今後の目標を語る

アマチュアクイズを紐解く土台作りがしたい

カジュアルな楽しみかたを発見してほしいということで、さっき少しお話に出たんですが、クイズの怖さを払拭するために今後やっていきたいことはありますか?

1つはQuizKnockの活動ですよね。QuizKnockとしての目的はやっぱり教育なんですけど、手段としてクイズを取っています。でも、その中で今まで全然外から覗けなかった「クイズやってるやつってのはこういう生活してますよ」という生態を見せるだけでもイメージが伝わっていくし、QuizKnockが毎日動画出して毎日優勝者が変わってるだけでもメッセージは伝わると思っているので、副次的にクイズ文化そのものへの好影響はあるはず。やっぱりこの活動は続けていきたいなと。

あとは、クイズに関して総合的にきっちり書いてある文献ってないなと。特に早押しクイズ。まあクイズ史に関してはあるにはあるんですけど、横断的に述べた文献はホントに数少ない。ましてやクイズの技術、早押しクイズの現在みたいなのってそれこそ『ユリイカ』が出るまでなかったし、『ユリイカ』はみんな文字数制限に苦しんでたので(笑)。

みなさんそれだけ書きたいことが多かったんですね。

やっぱりクイズ界の諸相を描写しきれてなかったんです。「経済学ならマンキューかな」みたいな、クイズ文化を学ぶためにひとまず入口になるような参考書みたいなのがない、というのがもったいないぞと。

で、実は2019年夏頃からかな、僕はずーっとそれを扱う本の原稿を書いてて。ようやく今年出せそうで。

ほう、そんなものが!

総原稿30万字くらいになってますが。

30万字!?

えぐい労働量ですよ。

これを書いて、一回アマチュアクイズというか、早押しクイズというか、現在地を描写しておきたいなと。僕の信頼するクイズプレーヤー5、6人に見てもらったりとか、ちょっと科学に踏み込むところは知見のある人に見てもらったりして、クイズの分析というものをやってきました。

多角的に見た大作になりそうですね。

議論の土台がまず欲しいんです。我々アマチュアクイズプレーヤーたちが、アマチュアクイズとは何か、アマチュアクイズというのはどのようにできてるのか、というのを考え直すきっかけを僕は作りたいなと思って。

なるほど、議論の土台作りをまさに今やっていて、今度形になると。

ようやく、ホントにいろんな人の助けがあって、今年中には出版にこぎつけられるんじゃないかと。日々の余暇、仕事終わりとかで細々と執筆してきて、もう出るかなと。業界の人間しか読まないかもしれないけど(笑)。

(笑)。まぁ、それを読んだ業界の人がさらに発信していけば次々に伝わっていくでしょうしね。

そうですね、読んだ人間が批評・批判してくれればいいと思います。学術と同じように、そうした過程で修正されていけばよいと。

どのような苦労がありました?

クイズ、特に早押しクイズってありとあらゆる事象がお互いに影響を及ぼし合うんで、とにかく描写しづらい。誰が押して正解した誤答したという結果だけはあるんですが、その過程でどういう判断があってどうしてその人が勝ったのかって明確に記述できないんですよね。これまでアプローチしづらかった早押しの謎なんかを何とか近似できるような本を書いたつもりです。

いや楽しみだ。複雑すぎて前例がなかった文献が出て、それを土台にアマチュアクイズを考え直すムーブメントが起これば、ということですね。

やっぱり大会で勝ちたい!

それでは最後に、アマチュアクイズプレーヤー・伊沢拓司の近い将来の目標をお聞かせください。

披露したいですね、実力を。この1年ほぼオープン大会に出られてなくて、今みんなのレベル上がってるから僕のランクは相対的に下がってるとは思うんですけど。ただ誰もやってない学びはしてきてるんで。

テレビ点けたら伊沢さんいますもんね。

ロケ行って得た知識はいっぱいあるわけです。どこまで通用するか確認したうえでちゃんと優勝したいですね。結果を残したい、アマチュアクイズで。殊勝なこと言いますけど。

優勝! かなり具体的かつ高い目標ですね。

正直達成できるかホントわかんないけど、やっぱりアマチュアクイズって相対的だから勝つことは全然あり得るし、僕も鍛錬はしてるつもりです。

どうしても「弱体化してるんじゃないか」と言われるんですが、A(あ)の例会も優勝しましたし、「僕は本当に強いんだ」というのはアマチュアクイズの結果として出したいですね。

いや、「強いんだ」というよりは「今自分がどれくらいの強さなんだ?」というのを確認するところから。近年の業界の進歩は凄まじいので、レベルは本当に上がっていて。殊勝というより不遜な宣言かもしれない。だから、まず真っ向から戦って、足りないところをしっかり埋めて、常に勝ちを目指したい

そのためにはまずは土日を休みにするところから。

(笑)。大会に参加できませんからね。

成果を示せない我慢の時期みたいなものが「高校生オープン(※)」前のようにまた来ていて、蓄えた実力を近く発揮したいと。

※毎年夏に開催される、中高生実力ナンバーワンを決める大規模大会。伊沢は中学3年生のときに優勝した。

発揮して結果として残したいですね。自分の実力を再確認、もしくは負けたらブラッシュアップするためにも、結果にこだわりたいです。

強い伊沢拓司の復活……ではないかな、ずっと強いから。

強さが相対的なものだからこそ、結果を作りたいですね。僕の視点からしたらずっと強いわけじゃないから、余計に。クイズは自信と印象も大事なので。

なるほど。見るのを楽しみにしています。

ぜひともよろしくお願いします。よろしくお願いしますってなんやねん。僕が頑張りますよ。

どうこうする側じゃないですからね(笑)。僕も僕で頑張ります。

いやぁ、そう。みんなが自分の信じるクイズをやれるのが一番幸せだと思うので。

ということで、怖さから一周してクイズの楽しさが伝わる記事になることを祈りまして。今日はありがとうございました!

楽しいクイズライフを

プレーヤーのバックボーンや試合中の駆け引きなど、混沌とした背景のもとに成り立つ単純な殴り合いを濃密に味わえるのがクイズのひとつの魅力。

一方でその性質上、怖さも見え隠れはしますが、たった数問、いや、数百問でもあるいはもっと多くのクイズに答えられなかったところで、マクロな視点で見たらちっぽけなことなのだと思います。もし人前でクイズをするにあたって後ろ向きな気持ちになったら、ぜひ伊沢さんの言葉を思い出してみてください。

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この記事を書いた人

ソフロレリア

高橋太郎の名でも活動中。博士(農学)。植物の研究をしています。ポケットモンスターと乃木坂46とウイスキーが好きです。

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