研究において大事なこと
仲間が必要
山野さん まずは、情報提供しあえる仲間です。研究対象は、思ったよりもずっと広いことがあるんです。例えば、「VTuberの〇〇さんについて研究しよう!」と思い立っても、そのVTuberの配信アーカイブを全部チェックするのは、時間的に相当難しいじゃないですか。そこで、膨大な研究対象について、お互いに情報提供しあえる仲間が必要です。言ってしまえば、オタク仲間ですね。
──VTuberに限らず大事ですよね。同じ対象に興味を持って、最新のニュースや論文の情報を共有できる仲間は絶対に必要だと思います。
山野さん もうひとつは、自分の意見にフィードバックを与えてくれる仲間ですね。自分が書いた原稿を読んでもらって、論理的な飛躍や抜け漏れ、矛盾をチェックしてもらうわけです。要は、批判的に検討してもらうことで、論文をどんどんブラッシュアップしていくんです。
つまり、インプットに関わる仲間と、アウトプットしたときに検討してもらえる仲間が両方必要です。
──そういった仲間と出会ったり交流したりするためには、どうすれば良いでしょうか?
山野さん 最初は「ちょっとVTuber真面目に考えてみたいな」という仲間を集めて、定期的に意見交換し合うような場を作ってみるとか。それはもう研究活動の卵です。そうして少しずつ仲間を集めていくことが、研究の最初のステップとして極めて重要だと思います。

目標を立てる
山野さん それから、何かしら目標を立ててほしいですね。「この成果を形にしたいぞ」みたいな目標はひとつ立ててほしいと思っていて。大学生に一番わかりやすく言えば、卒業論文かもしれません。
「卒業論文はこんなテーマで書きたい」と目標に掲げて研究できたら、すごい模範的な大学生だと思うんですよ。それはテーマが哲学やVTuberの場合でも同じで。入学当初から「自分はVTuberで卒業論文を書くんだ」って目標を立てて、4年間ちゃんと地道に研究をして、「こんな文献が出た」「こんなVTuberの本が出た」と自分でやったら、それはもう立派な研究者の卵です。だから、何かひとつでもいいので目標を立ててみてほしい。
例えばそのまま大学院生になったら、学会報告なんかで「ちょっとVTuberも事例に入れてみるぞ」と掲げた挑戦もできる。個人的には、そんな若手研究者が生まれてもいいんじゃないかなって思います。
それが卒業論文であれ、そういう全国学会級、準全国学会級の発表であれ、目標を立てることをおすすめします。
「推し」がいるから研究するでもいいと思うし、逆に単に現象として興味深いから見る、でもいいと思います。「なんでこんなに人々が熱中するのか理解できない」ってスタンスでも別にいいと思うんです。「VTuberの哲学研究」は、一段階抽象化したメタ的な思考で、VTuberについての理解を深めることができて面白いです。みなさんも、良き研究テーマに出会えますように!
山野弘樹さんにお話を伺いました。研究の始まり方、研究との向き合い方について、実体験に基づいてお話しいただきました。
研究に高い志を持っている人、どうしようかな~と悩んでいる人、今は部活が大事だぜ! という人、さまざまかと思います。しかし時が来れば、多くの学生は研究に打ち込むことになります。学生でなくとも、どうしても気になって仕方がない、という問題に出会う機会は訪れるでしょう。
そんなとき、この記事を思い出してみてください。研究の始まり方、研究との向き合い方、何かヒントが見つかると思います。
個人的には、「魂の一冊」、いわばバイブルに出会う経験は大事だよなと思います。「これは!」と思う研究を見習って、自分なりに形にできるようがんばってみましょう。
それではごきげんよう。
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