絶滅動物の「博士ちゃん」から「研究者」へ
研究の原動力は「点と点がつながる瞬間の楽しさ」
――話を伺っていて、小森さんは「楽しそうに研究している」という印象を受けます。具体的に、どんなときに研究の楽しさを感じますか?
小森さん ご協力いただいた先生の受け売りなのですが、歴史研究は「ひとつの情報の点が新しい情報の点とつながって集合していくのが魅力」と教えていただきまして。実際に自分でも、行き詰まったときに別の観点から調べることで、世界がばーっと広がっていく感じを体感できて楽しかったですね。
――この研究でも、文献には「廃棄済」と記録されていたものの実際には保管されていたことを突き止めたというように、さながらミステリーを解いているみたいですよね。
小森さん そうですね、先生から「書籍や論文の情報も全てが真実とは限らないから時には疑ってみることも重要」という助言のおかげで、研究もうまく行うことができました。
――いわゆる「批判的思考」が身についているのですね。もう一流研究者の器を感じます。
勉強して心境が変わった「研究者としての夢」
――今後も絶滅動物の研究を続けていくことかと思いますが、研究者としての目標はありますか?
小森さん 小さい頃は「将来は絶滅動物を復活させて会いたい」と思っていて、テレビでもそう話していたんですよ。だけど、最近ではそれは必ずしも良いことではないということを思うようになりました。
――それは、どのような心境の変化があったのでしょうか?
小森さん 勉強していくうちに、「絶滅動物を復活させると、現在できている生態系が崩れて、新たに他の生物が絶滅する恐れもあることもある」ということを知りました。
小森さん 私が絶滅動物を好きなのは、彼らが絶滅しているからではないんです。絶滅動物を増やさないことが何よりだと思っています。
――なるほど。では今回の研究を通じて、改めてどのようなことを成し遂げたいですか?
小森さん 今回の研究で「記録に残すことの大切さ」を学びました。だから、今は自分の手でニホンオオカミの真実を解き明かしたい、という思いの方が強くなりましたね。この剥製、この研究が真のニホンオオカミ像の解明に貢献できればと思っています。絶滅動物のことを知ることで、絶滅動物を増やさないための努力をしていきたいですね。
――この数年の間で「自分のため」よりも連綿と続く「科学のため」にも研究したいと心変わりしたのですね。
……でも時と場所を自由に行き来できるなら、絶滅動物、会ってみたいよね。
小森さん それはもちろんです(笑) 会って、純粋なニホンオオカミがどんな姿だったか見てみたいですね。
インタビューを終えて
小森さんにお話を伺っていると、底なしの好奇心をもって探究を続ける彼女の姿勢に圧倒されました。
私自身も、オオカミに見惚れ、図書館や動物園に通っています。しかし、「好き」「知りたい」という思いを、実際に「研究」という形で表現し、今もさまざまな視点からオオカミを追い続ける小森さんの熱量には、驚かされることばかりでした。
研究者・小森日菜子さんの動向に、いちオオカミマニアとしても引き続き期待したいところです。