「幻のニホンオオカミの剥製」論文掲載の経緯
研究施設で謎の剥製を発見「レーダーが反応した」
――そうした自由研究の積み重ねが、今回発表された論文に至るというわけですね。今回、新たなニホンオオカミの剥製を発見したということですが、その発端はどこにあったのでしょう?
小森さん 小学4年生のとき、科博の筑波研究施設のオープンラボに訪れた際に、自然史標本棟の哺乳類標本室を見学する機会があったんです。そのとき、棚の奥に、私が想像するニホンオオカミの形態にピッタリの標本を発見したんです。
――棚の奥ですか。
小森さん そうですね。その標本はほかの標本の陰にも隠れていて、見えたのは本当に一瞬だったんですけど、「ニホンオオカミじゃない?」と思いました。
――そんな一瞬で。発見した瞬間はどのような様子でしたか?
小森さん 「あれ? ライデン(オランダのライデン国立自然史博物館)のヤマイヌに似てる!」って、ビビッとレーダーが反応した感覚でした。
――例の剥製の写真も見ましたが、たしかに額段(眉間から鼻にかけてのくぼみ)の浅さや体色にオオカミらしさはありますね。ただ、これを一瞬見ただけで違和感を持つ嗅覚はすごいですね!
小森さん その場で研究者の方に「この剥製は何ですか?」と質問したんですが、その方も詳細はわからないようでした。でも、その後どうしてもその剥製のことが忘れられず、その場を離れてから職員の方に「もう一度見学させてもらえませんか」とお願いしました。
――気になって仕方がなかったんでしょうね。すさまじい行動力……!
小森さん もう、あの剥製を見てとても興奮したんですよね(笑) それから数カ月後に研究者の方から、その標本は「ヤマイヌ」の一種で、過去に上野動物園で飼育されていた個体と返答がありまして。そこからは、ヒントというか情報をいただいたからには自分で調べなきゃと思って研究を始めました。
――なるほど。使命感というか、より探究心が掻き立てられたと。
小森さん この剥製がニホンオオカミであるか検証して、その様子を自由研究にしました。協力していただいた先生が論文として発表するよう勧めてくださって、論文を共著することになったんです。
知らないことはすぐ図書館へ「毎日論文読むのが嬉しいんですよ」
――「ビビッとレーダーが反応」とは言いましたが、偶然発見できたのも日頃の知識の積み重ねの賜物ではないかと思います。普段はどんなふうに調べごとをしていますか?
小森さん 今回の論文執筆でもそうなんですが、父に手伝ってもらいながら国立国会図書館のデジタルコレクションでよく資料を収集してます。
――なるほど。そうやって論文とか資料を調べたり読んだりするのがルーティンになっていると。
小森さん そうですね、毎日読んだりしてます。まだ知らないことや新しい情報を知るのが嬉しいし楽しいので、義務というより自然とルーティンになってます。