3人目:シャカ夫
次の発表者はライターのシャカ夫。本選手権の主催でもあります。なにやら不敵な笑みを浮かべていますが……?
――意気込みを聞かせていただけますか?
名刺で相手を喜ばせるのではなく、相手を喜ばせるものが名刺なんです。
何を言っているのかわかりませんが、どうやら自信はありそうです……!
披露!
実をいうと、私は名刺をもらったことも、渡したこともほとんどありません。
社会経験では皆さんより劣っていると言えるでしょう。
謙虚だね、僕と違って。
ですが、こんな私でも「何をもらったら人は喜ぶか」は大体わかります。
旅行のお土産、引っ越し先への手土産……そういった社会経験なら、私でも理解できます。
でも、語り口も雰囲気もすごく胡散臭いんだよな。
怪しいセールスマンにしか見えない。
私は、ものを「もらう」「渡す」という数々の経験から理論を積み上げ……。
名刺交換における「最適解」を導き出しました。それをお見せします!
今の身振りなんだったんだ……?
にゅっ
じゃ、配っていきますね~。
いや、デカいデカい!
胸ポケット、パンパンだったじゃん!
いや、だって……
衛生面に配慮して、名刺入れじゃなくて真空パックに入れてきたんですもん。
そんなことある?
逆に気持ち悪くない?
名刺入れって金属だから、錆びて汚いじゃないですか。
ステンレスなら錆びないけど?
ステンレス:腐食に強くするためにクロムなどを混ぜた鉄の合金。「さびない」という意味がある。
ステンレスも……ほら……ホコリとかつくし?
苦しいなぁ……。
あと、今ちらっと見えたんだけどさ……
なんか、手書きじゃない!?
ほら、手書きの方が、真心が伝わりますからね。
そこの衛生面の問題は無視できるのかよ。
では、どうぞ!
さっきから怖いんだよなぁ……。
手触りも不自然だし……。
紙じゃないみたいだ。
いやいや、紙であることには間違いないので。
こいつさっきからずっと含みのある言い方してくるな。
……………。
……え、なに?
いえ、皆さんいかがでしょうか?
いかがって言ったって……。
手書きなのと、質感が変なこと以外は特に何も……?
お気に、召しませんでしたか……?
「名刺がお気に召さない」という概念って存在するの?
いえ、どうやら皆さんお気に召さないようなので、お返しください。
名刺はこちらで「処分」させていただきます。
だから、なんか怖いんだって!
いやでも、このまま変にからまれるのも嫌だし、僕は返します……。
チャンイケさん、ありがとうございます。では、その名刺は処分させていただきますね。
あ~ん……。
ゴクン。
な~んだ、皆さんが遠慮していたわりには、別にまずくないじゃないですか。
こいつ、自分の名刺食べてるよ。ヤバいでしょ!?
見てる俺たちは何を思えばいいの?
マジックとかではなく、ちゃんと食べてるよね? 大丈夫なの?
ええ。もちろん。実はこれ、ウエハーペーパーとエディブルペンで作った名刺なんで。
ウエハーペーパー:デンプンをかためて作った「食べられる紙」。ケーキの飾りつけなどに使われる。
エディブルペン:アルコールや着色料で作られた「食べられるインク」を使ったペン。
どうりで真空パックに入れてたわけだ……。
なんで、こんな名刺作ったの?
人は食べ物をもらうと喜ぶからです。
さっきの計算とやらは何だったんだよ。
お土産や贈り物において最もメジャーなのは食べ物ですよね? なら、名刺が食べられたら、それはもう素敵な贈り物じゃないですか。
バカのデータキャラだった。
じゃあ、種明かしもすんだことですし……いかがです?
え、食えってこと?
嫌なら私が処分しますが……。
いいよいいよ、食べるよ! 今後一生、名刺を食べるなんてないだろうし。
無味だよ、無味!
でも、まずくはないでしょう?
おいしくもないんだよ!
あ~……期待は超えてこない。
「口の中で溶けて消える」って、おいしいものだけに使う表現だと思ってたけど、例外があるんだな。
皆さん、どうやら物足りないみたいですね。でも、ご安心を! 私は素晴らしい名刺の「渡し方」も用意しています!
え、おいしくできるってこと?
スッ……!
スッ……!
演出が過剰なんだよ……。
名刺を皿において……
その上にジャムを乗せて……
いや、個人情報を隠すな~!
マシュマロを乗せて……
名刺で巻いて……
どうぞ!
じゃあ、いただきます……。
……どうでしょうか?
いや、そんなにおいしくないよ? マシュマロといちごジャムがそこまで合ってない。
そ、そんな……。
そもそもの話、なんだよ「食べられる名刺」って! 食べちゃったら、連絡先消えちゃうじゃん!
選手権云々の前に、そんな名刺を渡すってビジネスマンとしてどうなの? そこんところ、どうお考えですか?
そんなときに、Sky株式会社さんの名刺管理サービス『SKYPCE』が便利なんですよ!!
おいおいおいおい。
お前、やってんなぁ。
物理的な名刺は消えてしまうことがあるんです!失くしたり、はたまた食べてしまったり……だから、名刺情報を安全に管理できる『SKYPCE』はセキュリティ的にも非常に安心なサービスなんですね!
食べることは普通ないだろ。
なぜか、説得力はすごい。
▲名刺情報を組織で集約して管理することが可能に
『SKYPCE』は、企業向けの営業支援 名刺管理サービス。社員の持つ情報を集約して管理することで、顧客や取引先の大切なデータを漏洩リスクから守り、さらには売上や利益につながるチャンスを可視化します。
というわけで、ありがとうございました!
結果
おいしくなかったし、名刺としても嬉しくはなかった。
スムーズにPRに入るの何……?
エディブルペンのせいで舌が真っ青になってんだけど!!
あの手この手で高評価を勝ち取ろうとしたシャカ夫でしたが、そもそも味が良くなかったのが足を引っ張る結果となりました。
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