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こんにちは、1758です。

小学校の時にミヒャエル・エンデの『はてしない物語』と出会って以来、小説の虜になった私。趣味を問われたら「読書」と答える程度には本が好きです。

私が思う「良い本」の特徴は、第一に読みやすいこと。大学の講義で、とある教授が「難解な本だと感じても、自分の理解力不足を責める必要はない。書いた人間が悪い」と仰っていました。そこまで言い切るのはちょっと極端かもしれませんが、内容が頭に入ってこないような本が「思い出の一冊」になる可能性は低いといえます。

というわけで、今回の記事では読みやすく、そして記憶に残ると感じた本を選んでみました。最後までお読みいただければ幸いです。

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

舞台は3年に1度開かれる芳ヶ江国際ピアノコンクール。それぞれに決意や苦悩を抱える4人のピアニストを中心に、2週間にわたる戦いが描かれます。

特筆すべきは、小説という媒体でありながら音楽が精密に表現されている点。文字から音が溢れてくる、とでもいうべきでしょうか。この感覚は他では味わえない、唯一無二のものです。

読み終えた後、作中に出てくる曲を片っ端から聴いてみました。そして、ピアノが弾けない自分を恨みました。音楽を通じて確かな「生」の実感を得ていく登場人物たちには、フィクションであることも忘れて羨望の念を抱いてしまいます。

恩田陸さんの小説、個人的には長編よりも短編の方が好きなのですが、『蜜蜂と遠雷』は別格。クラシック音楽が好きな方はもちろん、そうでない方にも自信を持っておすすめできる作品です。

『人間臨終図巻』山田風太郎

何だかおどろおどろしいタイトルのこちらの本は、『忍法帖』シリーズで有名な山田風太郎ノンフィクション。歴史上の著名人の「死にざま」に焦点を当てた奇抜な著作です。

人の死を取り上げて面白がるのは少しばかり不謹慎にも思われますが、これが本当に面白い。「グレース・ケリーの死を『普通の事故』と報じたテレビ解説者に非難が殺到し、即刻クビになった」「日本画家・横山大観は『酒を飲むなと忠告してきた医者は、みんな自分より先に死んだ』と豪語し、肝臓に一切の異常をきたさず没した」などなど。

1人あたりの解説は長くても6~7ページと、お手軽に偉人の人生を追体験できます。ふとした時にページをめくってみると、新たな発見がある。そんな本です。

『夜市』恒川光太郎

続いては、恒川光太郎さんの中編小説集。闇に泳ぐ金魚のイラストが目を引きます。

小学生の時、妖怪たちが集う夜市で弟と引き換えに「野球の才能」を買った青年。今夜、弟を買い戻すべく再び夜市を訪れる―というのが表題作のあらすじです。

角川ホラー文庫から出版されていますが、決して「怖さ」が前面に押し出されているわけではありません。ファンタジーであり、冒険小説のようでもあり…… その不思議な味わいは、冒頭の数行を読めばお分かりいただけると思います。

今宵は夜市が開かれる。

夕闇の迫る空にそう告げたのは、学校蝙蝠(こうもり)だった。学校蝙蝠は小学校や中学校の屋根や壁の隙間に住んでいる生き物で、夜になると虫を食べに空を飛び回るのだ。

「一体何なんだこの話は?」と言いたくなるような強烈な幕開け作り抜かれた作品世界、簡素ながら間違いのない言葉選び。全てが始めから予定されていたかのような、調和のとれたストーリーが紡がれていきます。そして、ラストに待ち受けるミステリ的などんでん返し

もう1つの中編「風の古道」も見事な完成度。合わせて200ページ少々の文庫本に、物語の魅力がこれでもかと詰まっています。ぜひお手に取っていただきたい一冊です。

『世界の美しい公園』PIE International編

最後は、最近の愛読書。世界各地の公園・庭園を収めた写真集です。

「こんなものは本じゃない!」と怒られそうですが、私はユネスコの定義に従っていれば立派な「本」だと考える主義です(参考記事)。悪しからず。

ケンジントン・ガーデン(ロンドン)を写した表紙からもお分かりの通り、写真の美しさは際立っています。「劇作家バリーが『ピーター・パン』の着想を得た公園」というような、旅先で披露したい豆知識が載っているのも嬉しいポイントです。

私のお気に入りはスカフタフェットル国立公園(アイスランド)。青色に輝く氷の洞窟、現地へ行って目に焼きつけたいものです。地上300mの高さにガラス橋が架かる張家界国家森林公園(中国・湖南省)も気になります。

Mimoriさんの記事にもありましたが、ガイドブックは部屋にいながら旅行気分になれる優れもの。ページをめくっていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

この写真集のシリーズはラインナップが豊富で、『世界の美しい路地』『世界のかわいい村と街』なども機会があれば読みたいところです。変わり種では『世界の美しいトカゲ』というのもあります。


以上で紹介を終わります。皆さまの読書生活が、ますます充実することを願って。

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この記事を書いた人

1758

ライターネームの由来は日本史の「宝暦事件(1758年)」。大学では主に日本文学を学んでいました。

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