こんにちは。どちらかといえば「声が高い」と評されがちなはぶきです。
早速ですが、まずこちらをお聞きください。
「なーんだ、簡単じゃん!」と思ったそこのあなた! 実は「ド」以外の音も鳴っていることに気づきましたか? 一体どういうことなのか、これから説明していきましょう。
正体は「倍音」という音
「倍音」とは、ある音を鳴らしたときに一緒に鳴る、それよりも高い音群のことです。『広辞苑(第7版)』には、以下のように書かれています。
振動体の発する音のうち、基音の振動数の整数倍の振動数を持つ部分音(上音)。
『広辞苑(第7版)』より引用
音楽的にいうと、ある1つの音(基音)を鳴らしたときに、それより1オクターブ上、1オクターブと4つ上、2オクターブ上……といった音が小さく一緒に鳴っているのです。たとえば、「ド」の倍音を楽譜にするとこうなります。
倍音は1つの音につき何十種類も鳴っていますが、基本的に「基音」よりも音量が小さい上に、高すぎる音はそもそも人間の耳で聞くことができないため、聞こうと思って集中しても聞くことが難しい音です。
それではここで、もう一度先ほどと同じ音を聞いてみましょう。よく耳を澄ますと、小さくて高い音が鳴っているのが聞こえるかも……?
いかがでしたか? 少しでも「ド」とは異なる音が聞こえたら、それが「倍音」です!
「あの人の声よく通るなあ」←倍音が関係しています
倍音はごくごく小さな音ですが、どの程度聞こえるかによって音色が決まる、とても重要な音なのです。
例えば、高い倍音が響きやすい声質の人は、実際には低い声を出していても高い声だと誤認されやすかったり、音量が大きくても他の音に埋もれてしまう音は、倍音が小さいまたは少ない音だったりします。
つまり、逆に「声が通る人」は、倍音までしっかりと響く声を持っていると考えられますね。
ちなみに、全く倍音がなく1つの音(=周波数)だけが鳴る音は「
sin波を聴いてみよう(音量注意)
ホワイトノイズを聴いてみよう(音量注意)
倍音が大活躍する楽器とは?
ここで、倍音をうまく利用している楽器について解説しましょう。その楽器とは、現在私が専門にしている楽器「パイプオルガン」です!
パイプオルガンは、たくさんのパイプに空気が通ることによって音が鳴る楽器です。トランペットからフルートまで様々な楽器に似た音色を出せるパイプが揃っており、曲中や曲ごとにパイプの組み合わせを変え、音色を変えながら演奏するという、なんとも忙しい楽器です。
そんなパイプオルガンのパイプ1本から出る音の高さは、実は倍音のシステムを基準にして作られているのです。
パイプオルガンには様々なパイプが備わっていますが、そのうち標準の高さの音を鳴らすのが「8フィート」と呼ばれるパイプ群です。
この他に、8フィートのパイプよりも
- 1オクターブ上の音が鳴る「4フィート」のパイプ群
- 1オクターブと4つ上の音が鳴る「2と2/3フィート」のパイプ群
などがあります。これらのパイプは単独で鳴らしてもそのパイプが持つ音しか鳴りませんが、これらのパイプをいくつも組み合わせることで倍音の効果により音が分厚くなり、より壮大に聞こえます。
倍音はあなたの声にも!
冒頭の「私は声が高めだと言われる」という話ですが、どうやら私の声に含まれる倍音が原因のようで、正確な音程に直すとそこまで高い声では話していないのですよね。同じように「高い声で話しているつもりはないのに高いと言われる」という経験をしたことがある方は、もしかすると倍音が影響しているかもしれません。
倍音は日常生活におけるほとんどの音に含まれています。今日は、耳にする音をいつもより少しだけ、注意深く聴いてみてはいかがでしょうか?
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使用素材
・「ド」の音:魔王魂様
・ホワイトノイズ:DOVA-SYNDROME様