こんにちは、1758です。
読者の皆さんは、学校や仕事場で非常口の場所を確認していますか? 大規模地震の発生も近いと言われる世の中ですし、避難経路はしっかりと頭に入れておくのが吉でしょう。
そんな非常口のピクトグラム、なぜ白地に緑色なのか、気になったことはありませんか。他の色合いのものが少しくらいあっても良さそうなのに、全く見かけませんよね。
※ピクトグラム:注意を引くために、絵などで情報を示した図のこと
緑色になった理由は、火災と深い関係があります。
緑は、炎の色(赤)の補色だから
Image / Via GFDL
上の図は、アメリカの画家・マンセルが考案した「マンセル・カラーシステム」に基づく色相環です。
色相環とは、色あいを環状に配置して体系化したもの。正反対の位置にある色どうしを適当な割合で混ぜると、光の場合には白、絵の具なら灰色になるように設定されています。
この時の2色の関係を補色といい、互いに引き立て合う効果を持ちます。緑色なら、燃えさかる火の中でもはっきりと確認できるというわけです。
悲惨な火事が契機に
非常口のマークが現在のものになったのは、意外にもほんの数十年前のこと。それ以前は「非常口」と文字で記しただけの武骨なデザインが多く見られました。
Image / Via Rebirth10
1972年に起きた「千日デパート火災」(大阪市)や、翌年の「大洋デパート火災」(熊本市)では、非常口の視認性の低さが原因で多くの死者が出ました。これらの事件を契機に、文字だけの表示では、いくら大きくしたところで煙に紛れてしまうという重大な問題が浮き彫りになります。
火災の時でもはっきりと見えるような、新しいデザインの考案が急務となったのです。
Made in Japan、そして海外へ
公募の結果、デザイナー・小谷松敏文の案が採用されました。太田幸夫(多摩美術大教授)らの改良を経て、1982年から新しい誘導灯が設置されるようになります。これが、現在私たちがよく知る形のマークです。
1987年には、ほぼ同じデザインのマークが国際標準化機構(ISO)によって国際規格に指定されています。
Image / Via Virtruv
れっきとした国際規格ですから、EU諸国やオーストラリア、カナダなどでも類似の表示が用いられています。海外旅行に行った時でも安心ですね!
参考文献
- 日本火災学会誌 Vol.57 「誘導灯表示面のピクトグラフについて」
- 神忠久『誘導灯の歴史 「黎明期から現在まで」』