こんにちは、セチです。
「ぐるぐるバット」といえば、立てたバットにおでこを当ててぐるぐる回った後、コースを走って、いち早くゴールにたどり着くことを目指すゲームです。回転によって目を回してしまった人が、ふらふらとよろめきながらゴールへ進む姿が観客を楽しませます。
最近もぐるぐるしている人たちがいました
では、なぜぐるぐる回ると目が回ってしまうのでしょうか。
回転感覚を伝える「三半規管」
「目が回る」という感覚の元となるのは、耳の中にある三半規管という器官です。
三半規管は、前半規管・後半規管・外側半規管という3つの半規管がそれぞれ垂直に配置された構造をしていて、頭の回転を感知して脳に伝える器官です。
回転感覚のもとは内リンパ液の流れ
それぞれの半規管は内リンパ液という液体で満たされています。頭が回転すると、回転方向に対応する半規管で内リンパ液の流れが発生し、「回転している」という感覚が生まれます。ぐるぐるバットのような水平方向の回転は、地面にほぼ水平な角度で存在する外側半規管によって感知されます。
頭が回転し始めるときは、慣性のために内リンパ液が逆に流れることで「その方向に回転している」ということが感知されます。たとえば、左に回る場合は両耳の外側半規管で内リンパ液が右回りに流れ、「いま頭が左に回った」という感覚が生まれます。
そのまま回転を続けると、内リンパ液の動きがだんだん頭に追いつき、流れが小さく(=回っている感覚は小さく)なります。
しかし、回転を急にストップさせると、内リンパ液はふたたび慣性のため、今度は回転していたのと同じ方向に流れ続けます。これにより、半規管は「まだ頭が回っている」ような感覚をもたらします(例:左回りをやめると、内リンパ液が左回りに流れ続け、「右に回り続けている」ような感覚になります)。
つまり、ぐるぐる回った後の「目が回る」という感覚は、このように内リンパ液が流れ続けるために発生する、というわけです。
頭が回ると目も回る
ところで、三半規管によって回転を感知すると、その回転方向とは逆向きに眼球をゆっくり動かす、という反応が人間の体にはあります(ある程度まで動くと正面に戻ります)。これは、頭が急に動いても視点が動きすぎないようにするためです。
ぐるぐる回った後、半規管は「まだ頭が回っている」という感覚を脳に伝えてくるので、この眼球が動く反応も起こります。本当に目も回るのです。左にぐるぐる回った後なら「右に回り続ける」感覚になり、眼球はゆっくり左に動いては正面に戻るという動きを繰り返します。
ぐるぐるバットを見る際は、競技者(という言い方をするんでしょうか?)の目にも注目してみてはいかがでしょうか。
参考文献
- 大地陸男『生理学テキスト』第7版(文光堂、2013年)