QuizKnock

アプリで記事をもっと見やすく

インストールする

カテゴリ

ログイン

こんにちは。Hirotakaです。

僕はこの1年間、学芸員(博物館を支える仕事)の資格を取得するため、大学で「博物館実習」という授業を受けていました。

多くの人にとって馴染みがないであろう「博物館実習」。その内容は、こんな模様を紙に写し取ったり……

▲この模様の正体は記事の後半で

本を作ったり!?

▲そんな授業あるの??

今回は、そんな謎の授業「博物館実習」の様子を紹介したいと思います。

博物館を支える「学芸員」ってどんな職業?

授業の紹介の前に、「学芸員」がどんな職業なのか説明します。

学芸員とは、博物館や美術館、水族館などで専門職員として働くために必要となる、博物館法で規定されている国家資格です。

▲学芸員は、楽しい展示を裏で支えるスペシャリスト

大学では教職や司書の資格と同じように、所定の課目を履修したうえで学士(大卒資格)を得ると取得できます。

博物館法第4条では、以下のように規定されています。

3 博物館に、専門的職員として学芸員を置く。

4 学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

引用元:博物館法

つまり、博物館が持っている物品に対して、収集・保管調査・研究展示・教育と、非常に手広くアプローチする専門職なのです。

▲学芸員の仕事のイメージ。実は3つの役割もそれぞれ繋がっています

そして博物館の展示は、収集した資料や学芸員の研究成果を披露する場です。私たちが目にする展覧会の裏には、学芸員の方々が資料を大切に保管し、研究しているという努力があるんですね。

▲面白い展示の裏には学芸員たちの努力が!

展覧会の展示には、もうひとつ「来館者の方々に学びを届ける」という役割があります。「コンテンツを通じて楽しく学びを提供する」という意味では、QuizKnockも学芸員の仕事に近いところがあるかもしれませんね。

博物館実習ってどんなことするの?

大学で学芸員資格を取るには、今回紹介する「博物館実習」をはじめ、博物館課程の科目を履修する必要があります。

▲実習以外の博物館課程の科目です

博物館実習以外の科目は座学がメインです。「博物館資料保存論」の授業では、「木簡の保存方法は、カップヌードルの具の製造方法と同じ(フリーズドライ)」などの興味深い学びを得られました。

※木簡:古代の日本や中国で文字を書くために使われた、短冊状の木札。

一方の博物館実習は、1年間かけて実際に資料を取り扱いながら学芸員の仕事について学んでいく授業です。僕の大学では、学内に博物館と博物館実習用の教室があったため、主に実習用の教室で受講していました。

僕が授業で扱った資料には、掛け軸や屏風、浮世絵、茶道具などがありました。

▲こんなお宝を実際に扱います(イメージ)

こうした資料を手に取って、展示や保管の方法を実践していきます。

例えば、「拓本」。墨を使って、瓦などの模様を実寸大で紙に写し取る技術を学びます。

▲拓本(湿拓)の仕組み。タンポという道具に墨をつけて、紙に押しつけて写し取ります

記事冒頭で紹介した模様の正体は、この拓本でした。

▲実際に僕が取った拓本。半紙を濡らして凹凸にピッタリつけるのは難しかったです

また、時代劇に出てくるような綴じ方の本を実際に作ってみて、和紙を使った本(和装本)の仕組みについても勉強します。紙がずれないように固定してから千枚通しで穴を開け、穴に糸を通して綴じていきます。

▲こんな感じで糸で本を綴じます。表紙を作るときにのりを使いすぎてふやけてしまいました

実習でも一部で座学があり、自宅にある小物を持ってきてキャプション(展示物に関する簡単な説明が書かれた小さいパネル)を作成したり、展示計画の作成をして授業でプレゼンを行ったりしました。

実習の最後では、学内の博物館の展示室を借りて展示実習をします。展示ケースの中に資料を置いて、あらかじめ作成したキャプションなども配置していきます。僕は『源氏物語絵巻』を扱ったので、資料とは別で、キャプションと、展示している部分の翻刻(くずし字や変体仮名を楷書の活字に直すこと)と現代語訳を載せたパネルを用意して、一緒に展示ケースの中に入れました。

二千円札の裏面にもデザインされている、『源氏物語絵巻』での「鈴虫」の場面(授業で扱ったものとは異なります)

博物館実習で苦労したこと・楽しかったこと

実習で少し大変だった点は、服装の制限があることと、自分の手先が器用な方ではなかったことです。

当たり前ですが、実習ではとにかく資料が最優先でした。例えば「腕時計や指輪の装着禁止」「パーカーはフードの紐があるので避ける」などの決まりがありました。また、墨を扱う日などは「汚れてもいい服で来てください」という指示もあったりして、実習の日はとにかく服装に気を遣う場面が多かったです。

▲実習には様々な服装規定が

また、手先が不器用だと、テグスや紐を結ぶときに苦労したり、絵巻物や掛け軸を片付けるために巻くときに何度もやり直したりと、とにかく時間がかかってしまうことが多かったです。僕の場合は、掛け軸を巻くのが苦手で、初めて扱ったときは他の人の倍近く時間がかかってしまいました

一方で、先生や同じ実習を受けている学生とコミュニケーションを取りながら作業を進めたり、教え合いをしたりできるのはとても楽しかったです。

全員が同じ作業をしているので、誰かがやりやすい方法を見つけると全員で共有できたり、自分が手こずっている部分をどうすればいいのか聞いたりしやすく、1年間実りある授業を受けることができました。


僕自身は学芸員として働くわけではありませんが、とても貴重な経験ができた授業でした。

博物館の展示がどのように作られているのか気になった方は、大学に博物館課程の授業があるかチェックして、ぜひ学芸員資格の取得に挑戦してみてください!

【あわせて読みたい】

Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

関連記事

この記事を書いた人

Hirotaka

早稲田大学文化構想学部OBのHirotakaです。学士(文学)。2023年3月をもってQuizKnockを卒業しました。2023年4月以降新規の執筆は行っておりません。

Hirotakaの記事一覧へ