【Web限定トークあり】中2で学会へ!?鶴崎パパが語る「研究の面白さ」
スペシャルQuizKnock編集部2025.02.19
生まれ変わってもザトウムシを研究したい
改めて、クモやザトウムシという……言ってみればマイナーな研究テーマをなぜ選ばれたのか、その思いをお聞かせください。
さきほどもお話ししたとおり、競争の激しい分野で研究するのは大変なので、「少ない努力量で論文を多く書くには、人があまりやっていない材料がよいな」と考えました。中学1年でこの結論に至ったのは、けっこう賢くないですか?(笑)
大学院では指導教員の薦めもあってクマムシの研究を始めましたが、クマムシも当時研究者がいなかったので「これはいい!」と思って嬉々として始めたものです。いちおう新種についての論文を1つだけ書きました。
ザトウムシに並々ならぬ思いを寄せる鶴崎先生ですが、ほかの生き物を専門にしていた研究人生を思い浮かべたことはありますか?
ヤスデという、ザトウムシと同じような湿った林にいる生物がいて、これはいっとき研究しようと思って論文を書いたことがありますね。
ヤスデの画像(苦手な方は閲覧注意! 足が多いです)
ただ、複数の研究を同時並行で進めると論文・資料の確認が煩雑になったりもするので、ザトウムシに集中していたほうがコスパがよいこともあって諦めてしまいました。ザトウムシだけでも、研究すべきことが多すぎるというのも大きいです。
「未発表の研究資料もまだまだある」とおっしゃっていましたね。
はい。論文のネタがね、次々取れるもんだから(笑)。
ザトウムシの魅力は本当に尽きないので、もう1回人生があったとしてもザトウムシを研究したいです。3回目があるなら、ヤスデをやるかもしれませんね。
「虫が苦手」な人こそ!鶴崎先生の本
鶴崎先生は研究者向けの論文だけでなく、一般向けの書籍も執筆されていますよね。
論文の執筆を優先していたのでもともと書く予定はなかったのですが、たまたまある出版社の人から話が来たので書き始めました。
最終的に出版社をまたいで築地書館さんで引き受けていただき、昨年(2024年)世に出たのが『ザトウムシ』です。
▲サブタイトルは「ところ変われば姿が変わる森の隠遁者」
ただのザトウムシの解説本にするのではなく、生物学的にどこが面白くて研究を続けてきたか、ということも多く綴ったつもりです。
ザトウムシにとくに興味がなくても参考になる、クイズが好きな皆さんはきっとクイズネタにも使える内容を盛り込んだつもりなので、ぜひ多くの人に読んでいただきたいです。
同じく昨年出版された『一寸の虫にも魅惑のトリビア』も虫が苦手な人こそ読んでほしい、興味深い雑学が満載の一冊です。
▲ペリーの「黒船」は、実は植物採集の任務を帯びていたんだとか。知ってましたか?
こちらは朝日新聞(鳥取版)で連載していたエッセイをもとにした本ですね。
歴史や文学の話題もからめて、多様性生物学にまつわる60の話をしています。1つ1つの話は数ページなので、すきま時間で読めると思いますよ。
生物の本とは思えないほど、多岐にわたるジャンルが取り上げられていますよね。鶴崎先生は昔から生物学以外の学問にも関心が強かったのでしょうか?
学問ではないですが、若い頃は小説をめちゃくちゃ読みましたね。
中学・高校時代は北杜夫が好きでした。『楡家の人びと』なんか、名作ですよね。海外文学ではトマス・マンやドストエフスキーがお気に入りでした。
もちろん小説が直接研究の役に立つわけではありませんが、「底辺を広げる」のには役立ったかもしれません。
修功少年との思い出
幼少期の(鶴崎)修功さんに、よく教えていたこと・伝えていたことはありますか?
幼稚園に入る前くらいに、お風呂で数学の「ルート」を教えましたね。
氷を入れたペンで字が書けてお湯につけると字が消えるというお風呂で使うボードのおもちゃがあって、それを使って簡単な数学の話をしました。修功は「くもったガラスに書いていた」と言っているみたいですが、修功の記憶違いです(笑)。
最初のとっかかりを与えたら次々といろんなことを覚えていったので、あとは何もしていません。自分にはない数学のセンスを持っていて、だったら伸ばすしかないと思いましたね。
彼が中学・高校の頃には「生物学にも数学を使う分野(数理生物学)があって面白いよ!」とそそのかしたのですが、なびいてくれませんでした(笑)。
鶴崎先生からのメッセージ
いろいろと魅力を聞いても「やっぱり虫は苦手……」という方もいると思います。そんな方にも薦められる、ザトウムシやクモの良さはありますか?
ザトウムシは噛まないし、毒もないということは知っていただきたいですね。これは一部のクモの仲間とは違って、受け入れてもらいやすいポイントではないでしょうか。
それに、意外とかわいいです。目もたくさんあるわけじゃなく、2つだし。
北米には、ザトウムシを描いた絵本もあるんだそうです。
日本の絵本というとイヌやキツネなど可愛らしい動物が多いイメージですが、ザトウムシもいつか、絵本に出てくるくらい親しまれる生き物になってくれたらいいなと思いますね。
改めて:鶴崎展巨先生の著作をご紹介!
『ザトウムシ: ところ変われば姿が変わる森の隠遁者』(築地書館)
『一寸の虫にも魅惑のトリビア』(築地書館)
鶴崎先生とのトークは動画でもご覧いただけます。ぜひお楽しみください!
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