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こんにちは、はぶきです。

皆さんは、バッハの作品というと、どんな曲を思い浮かべますか? 『G線上のアリア』などは、一度は耳にしたことがあると思います。

でも、バッハって何がそんなにすごいのでしょう

「バッハの曲のメロディーを何か歌ってみて!」と言ったとき、思い浮かぶものはありますか? 思い返せば、『G線上のアリア』もメロディーの最初の音が長すぎて、歌うには難しそうです。もしかして、歌曲を除くとバッハに「歌いたくなるようなメロディーの楽曲」ではないのかもしれません……。

歌いたくなるメロディーではないのに、バッハの曲は400年もの間、歌い継がれ弾き継がれています。なんでバッハばっかり? 私も今後400年間賞賛されたい! ということで、21世紀のバッハになるべく、今回はバッハの曲の魅力を解き明かしていきましょう。

バッハの魅力1:歌と器楽の差別化

バッハが生まれる前、中世と呼ばれる時代の西洋音楽は、器楽作品よりも歌作品の方がメジャーでした。バッハが生まれたのは、器楽作品の占める割合がどんどん増え、新しい様式がたくさん確立していった頃です。

器楽作品は、その発展に連れて、器楽特有の表現を持つ楽曲が主流となっていきます。例えば、歌では不可能でも指でなら可能であるような速くて細かい動きや、音程の大きな跳躍が含まれるメロディーなどが登場します。

そう、バッハの器楽作品に歌うようなメロディーがないのは、器楽にしかできないことを実現した結果だったのです。

バッハの歌曲

バッハが作った歌曲もまた、「声」の良さを最大限に生かした楽曲となっています。バッハが書いた歌作品を例に挙げるなら、やはり『マタイ受難曲』でしょう。

メロディーはロマンチックではありませんが、どの瞬間を取っても人間の声が綺麗に響くように作られています。また、ソプラノやアルトなどのパートひとつひとつも、大きな跳躍が少ないなど歌にふさわしいメロディーとなっています。

バッハの魅力2:高度で自然な技術

続いては、バッハの技法的側面にフォーカスしていきましょう。今回は、バッハの中でも比較的簡単な『インベンション ハ長調』を例にとります。作品の最初の4小節を分析してみました。

下記の赤い部分がメインテーマです。実は、『インベンション ハ長調』は、高さを変えたり部分的に取り出したりすることで、赤いテーマから曲の全てが作曲されているのです。

例えば、下の段の黄色の部分。ここ、なんとなく赤い部分と音の動きが似ているように見えませんか? ここは、赤いテーマを「模倣」している部分です。

また、緑の部分に注目してみてください。ここは、赤いテーマの1〜4番目の音の動きを横に広げたように見えませんか? これは、専門用語で「拡大」という手法です。

では、青色でマーカーを引いた4ヶ所はどうでしょう。それぞれ4番目の音までは1音ずつ下がって、その後は2音上がって1音下がり、再び2音上がって1音下がっています。

お気づきでしょうか、これは赤いテーマの1番目〜8番目の音の動きとちょうど対称になっているのです。一見全く関係ないように思える部分も、赤いテーマが元になっているのですね。

結局何がすごいの?

1つのテーマだけを使って楽曲を紡ぎ出すのは、想像以上に難しく、複雑な作業です。にも関わらず、バッハの作品は耳で聴いたときにはそういった複雑さを感じさせない、自然な楽曲になっています。

高度な技術を用いながら自然な楽曲にするのは、単に1つのテーマから作曲することよりさらに難しいことです。だから、バッハは「素晴らしい作曲家」として後世に長く名を残しているのです。

おわりに

理論的な美しさと感覚的な美しさを両立できたという点こそが、バッハの大きな功績のひとつです。なるほど、私には到底敵いそうにありません。私の400年の賞賛の夢はあっけなく打ち砕かれました……。

私たちはバッハにはなれませんが、彼の功績を語り伝えていくことで、後世に歴史をつなげる手助けをしていきましょう!

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この記事を書いた人

はぶき りさ

東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学別科オルガン専修を経て、同大学音楽学部器楽科オルガン専攻2年。世界で何千年も生き続けている「音楽」という文化に、少しでも興味を持ってもらえるような記事を書けたらと思います。よろしくお願いします。

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