田と畑の違いはどこに?
日本の地図記号が作られるようになったのは明治6年(1873年)です。田を表す地図記号は明治16年から現在に至るまで、多少の変化はありますがずっと存在していました。
それどころか、「冬には水のない田」「冬にも水が張っている田」「泥が深い沼田」の3種類に別々の記号が使われていたこともあったのです。一方、畑の地図記号ができるようになったのは日本の地図記号の誕生から100年近く経過した1965年。この差はいったいなぜ生まれたのでしょう?
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— 全農広報部 田んぼの生きもの調査 (@tanbozennoh) January 27, 2025
田んぼの地図記号は、切り株をイメージする縦2本線です。ところが、1917年の制定時は、乾田、水田、沼田と3つありました。当時は軍事上の観点が基準となっており、通行の難易度(ぬかるむか否か)により分けたそうです(国土地理院広報)。#食と農を未来へつなぐ #全農 #地図 pic.twitter.com/VBoyYRM3Q1
▲3種類の「田」
かつて、日本地図の作成を担う公的機関は陸軍に所属していました。そのため、地図に記載する項目は主に軍事上の観点が基準となっていました。田んぼは軍隊の通行の難しさによって3種類に分けられていたようです。
一方の畑は「記号のないところが畑」という、なんともぞんざいな扱いでした。これは、地図が手書きだった時代、広大な畑をいちいち書き込むのは大変だったからではないかと考えられています。現在でもアメリカやフランス、オランダなどの国々では畑の地図記号が存在しないようです。
生まれる地図記号と消える地図記号
このように、地図記号は作る側の都合によって生まれたり消えたりすることがあります。一方、世の中の状況を反映して生まれたり消えたりする地図記号もあるのです。
近年消えた記号の例としては、桑畑が挙げられます。一方、新しく生まれたものには「自然災害伝承碑」の記号があります。これは過去に発生した自然災害の様子や被害状況などが記載されている石碑の類を表すものです。2018年の西日本豪雨の後、「石碑に刻まれた過去の災害の教訓があったにも関わらず生かすことができなかった」という反省から地図記号に追加されました。
地図記号は、世間の風潮や人々の思いが表れるものでもあるのです。

8月に入りましたが、夏はまだまだこれからといったところです。冷房の効いた家でゆっくりしたいという日も多いと思います。そんな日には、地図を見て世界に思いをはせてみるのも楽しいのではないでしょうか。