河村です。どうも。
「河村が考えたことをつらつらつらと書く日記」こと「あしたはげつようび」のコーナーです。
近況:するめを食べすぎて顎が筋肉痛になりましたが、するめを食べています。
今日は「雪」について考えていました。
というのも、雪が降ったからです。
僕の住んでいる東京では24日(木)に初雪を観測。積雪も見られました。
近所に止まっていた車のボンネットに雪が残っていました。
僕はといえば、雪が降っている最中は余りにも寒かったので、カーテンを閉め切り、家に引きこもっていました。
雪が止んでから外に出て、唯一見つけた雪が先程の写真。
雪が降っているところは見ませんでした。
「雪は天から送られた手紙である」
科学者・中谷宇吉郎(なかや・うきちろう)の残した有名な言葉です。
中谷は世界で初めて「人工雪」を作ることに成功した雪氷学者。
先程の名言は著書『雪』の最後に出て来ます。
ざっくり説明すると、
雪の結晶の形はそれが出来た空の状態を示す。雪は空の状態を結晶という形で書いたものなんだよ。
という文意です。この「手紙」を解読するためには人工雪の研究が必須である旨も書かれています。
(青空文庫で全文読めます。気になった方はどうぞ)
そういうわけで、雪を見れば空の状態が分かるのです。
関東甲信の皆様にお願いです.雪が降ったら雪結晶の写真を撮って下さい.スマホでも撮れます(添付はiPhone5).雪結晶の種類等の情報は雪研究に非常に重要です.綺麗な結晶だけでなく汚い結晶も含め,雪の写真を送りつけて下さい.1円玉とかスケールがあると最高です.ご協力お願いします. pic.twitter.com/fvEWLhd0e6
— 荒木健太郎 (@arakencloud) 2016年11月23日
もちろん研究は現在でも続いています。こちらは荒木健太郎研究官(気象庁)のツイート。
関東甲信の住民から雪の結晶の写真を集めて研究をなさっています。将来的に防災や減災に役立てることを目指しているそうです。
雪結晶の形状について.雪結晶の形状は結晶が成長する大気場の気温や水蒸気量によって変化します.「雪は天から送られた手紙である」と言われるのは,地上で観測された雪結晶から大気場を推定できる可能性があるからです.皆さんのもとに天から届いた手紙,ぜひ一緒に解読させてください.#関東雪結晶 pic.twitter.com/P8V7u6KKM8
— 荒木健太郎 (@arakencloud) 2016年11月23日
この図が「中谷ダイヤグラム」。中谷宇吉郎が世界で初めて発表しました。雪の結晶を見れば空の状態が分かる、ということです(繰り返しですが)。
ボンネットにぽつりと残された雪を見つめながら、そんなことを思い起こしていました。
それから、先の思索と関係なく、僕は思いました。
……降雪と積雪ってフローとストックだなぁ。
フローとは一定時間に流れて(flow)出入りする量のこと。ストックとは貯蔵(stock)されている量のこと。
ここでは、フローは「積もっていく降雪と溶けて流れていく水」、ストックは「積雪」です。
次の写真は降雪。フロー的ですね。
下の写真は積雪で、ストックしか考慮していません。
ここからは僕の完全な主観になってしまうのですが……日本人は、フローに目を向けるのが上手いように思います。
次の絵を見てください。
ウィリアム・ターナー「雨、蒸気、スピード」。雪でなくて雨ですが許してください。
歌川広重「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」。こちらも雨。
お気づきでしょうか。共に雨の情景を描いた絵ですが、歌川の絵の方には、雨が線として書き込まれています。
つまり、「降雨というフロー」が描かれているのです。これはターナーの絵には見られません。
(この浮世絵の技法、その後西洋に渡り、西洋美術に大きな影響を及ぼすことになります)
この例からも分かる通り、日本文化はフローを重視します。
科学者・中谷宇吉郎を思い出しましょう。
「雪は天から送られた手紙である」――積もった雪ことストックを材料にしながらも、考えているのは降雪の過程、つまりフローのこと。
もしかしたら、フローに着目するという視点が、中谷を大科学者たらしめたのかもしれない。
雪を見た僕は、ふと、そう思ったのです。
ボンネットを見ながらそこまでの思索を終えて、僕は空を見上げました。降ってくる雪を見ようと思ったのです。
果たして曇天が広がっているだけでした。僕はひどく落胆しました。
寒いからという理由で部屋に引きこもっていたことを後悔しました。
そして、次に雪が降るときには、空を見上げ、地に落ちる前の雪を見ることを決めました。
あしたはげつようび。あしたは雪が降るでしょうか?
【きょうのふくしゅう】