こんにちは、ライターの胡桃です! 寒さが厳しくなってきましたね……。こんな時期には、温かい飲み物が恋しくなってくるもの。街中で見かける自動販売機には、「あったか~い」飲み物が並んでいます。
ところでこの自動販売機の温冷表記、「あったか~い」や「つめた~い」のように「~」が入っているものをよく見かけますよね。
「あたたかい」「つめたい」でもいいのに、一体なぜ「~」が使われているのでしょうか。自動販売機の「~」の謎に迫るため、街中の自販機を大調査! 飲料メーカーや自販機メーカーにも取材しました。
目次
◎ 街中の自販機を調査してみた!
◎ コカ・コーラに「〜」の理由を聞いた
◎ 実は50年近く前から「つめた〜い」はあった!
まずは街で実態調査!
「あったか〜い/つめた〜い」表記の自販機には、何か規則性があるのでしょうか? 例えば、メーカーによって違ったり、場所によっても違ったりするのでしょうか?
ということで、まずは街中にある自動販売機の温冷表記を調査してみることにしました。1人では大変なので、協力してくれる方がいればなぁと、QuizKnockの社内チャットで呼びかけてみたところ……。
ありがたいことにわんさか写真が集まりました! 東北から関西まで、自動販売機の温冷表記の情報が寄せられました。
▲調べたのは冷温が優勢の時期だった
まとめてみると、「つめた〜い」など「〜」つきの表記の自販機の方が多いようです。ただし、同じメーカーでも「つめた〜い」と「つめたい」が混在しているなど、あまり規則性は感じられません。調査がまだまだ足りないのでしょうか。
▲同じサントリーの自販機でも、2つの表記がある
それでも、コカ・コーラの自動販売機は、「あったか~い/つめた~い」と「~」が使われているものがほとんどであることがわかりました。
▲コカ・コーラの自販機は「〜」ありが多い
また、思わぬ発見もありました。JRの駅などに設置されているacureという自動販売機にはなんと、温かさや冷たさを表す文字がありません! その代わりに雪の結晶のマークがついています。
▲acureの自販機には「つめたい」の文字もなく、雪の結晶のマークが!
想像以上に自動販売機の温冷表記にはバリエーションがあることがわかり、自販機の謎が深まるばかり。
そんななかでも、まずは一体なぜ「〜」がついているのか、メーカーに取材してみることにしました。
コカ・コーラは「あったか~い/つめた~い」に統一
最初に取材したのは「あったか~い/つめた~い」と「~」を用いた表記が多かった日本コカ・コーラです。
コカ・コーラの担当者によると、現在市場にある同社の自販機は、「よっぽど古いものを除いて、すべて『あったか〜い/つめた〜い』の表記になっております」とのこと。では、なぜ「〜」つきの表記にしたのでしょうか?
日本コカ・コーラ担当者:使用する表記は(1)一番使われていて、かつ、(2)他よりも情緒的な感じがする「あったか~い/つめた~い」を採用しました。
コカ・コーラの自動販売機で「あったか〜い/つめた〜い」が使用されているのは、(1)普及している、(2)情緒的な印象がある、という2つの理由からでした。
▲今回唯一発見した「つめたい」表記のコカ・コーラの自販機。超レアなのかもしれない
コカ・コーラによると、同社が「〜」つきの表記に統一したのは2000年のことだったそうです。1990年代までは自動販売機の温冷表記は業界で統一されていなかったため、複数の表記が混在していた状況でした。
つまり、2000年頃に自動販売機業界で温冷表記を統一する動きがあったということです。一体何があったのか、またどんな表記が選ばれたのか、自販機本体を製造するメーカーの業界団体・日本自動販売システム機械工業会(以下、JVMA)に聞いてみました。
自販機業界のガイドラインにも「〜」が!
JVMAによると、1990年代までは飲料メーカーごとに表記が異なっていたため、消費者がわかりにくいという意見があったそうです。このため、業界の自主基準として2001年に「自動販売機ユニバーサルデザインガイドライン」が制定されました。
JVMA担当者:当ガイドラインに基づき、自販機の冷温表記はひらがな表示と定めております(例:つめたい/あたたかい、つめた~い/あたたか~い)。
さまざまな表記が存在していたため、このガイドラインで一定の表現になるように定めたということですね。なぜ「〜」が採用されたのでしょうか。
JVMA担当者:子供から大人まで幅広い年齢層が理解でき、柔らかく温かみのある表現であること、また策定当時すでに広く一般的に普及していたという理由から現在の表記に定められております。
やはりコカ・コーラと同じく、「あったか〜い/つめた〜い」の表記が一般的に普及していることや、「〜」つきの表記から受ける印象が理由として挙げられました。
ちなみにJVMAによると、ガイドラインには罰則などはなく、実際にどのような表記にするかは、「飲料メーカーの意向によるところが大きい」とのことでした。
ならば、他の飲料メーカーは温冷表記をどのように採用しているのでしょうか。さらには「〜」が使われ始めたのはいつ頃だったのかも知りたくなってきました。
そこで、実態調査で「~」ありと「〜」なしが混在していたサントリーと、今回は「〜」ありが見つけられなかったヤクルトにも話を聞いてみることにしました。
サントリー・ヤクルト「表記は自販機メーカーによります」
「温冷表記は飲料メーカーが決めている」と聞いたものの、サントリーとヤクルトからの回答はいずれも「温冷表記は自社で決めておらず、自動販売機のメーカーによる」とのことでした。どうやら、飲料メーカーによっても事情が異なるようです。
2社とも複数のメーカーの自販機を採用していた経緯から、複数の温冷表記の自販機が存在しているそうです。自販機によって表記が異なっていた飲料メーカーには、こうした理由があったのです。
▲2パターンの表記があったサントリー
そんななかでも、ヤクルトの担当者が興味深い情報を教えてくれました。
ヤクルトでは、以前「〜」ありの富士電機製と「〜」なしのクボタ製の自販機を採用していました。しかし、クボタが自販機事業から撤退し、富士電機の自販機がメインとなったため、「〜」つきの自販機が多くなっているそうです。
ヤクルト担当者:「~」の有無について、決められた経緯等については不明ですが、自販機メーカーに聞けばわかるかもしれません。
ということであれば、次は自動販売機メーカーに取材をするしかありません!